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2015年10月15日

辺野古埋立て承認の取り消しを受けての新聞各紙社説

10月13日、沖縄県の翁長知事が辺野古の埋立て承認を取り消した。
この「承認」は仲井真前沖縄県知事が「公約違反」で出したものであり、辺野古での全ての工事はこの「承認」を錦の御旗として行われてきた。辺野古の新基地建設問題はひとつの大きな節目を迎えたと言える。

この大きな節目に新聞各紙がどのような見解をもっているのか、ネット上で閲覧できるもののみを下記に列挙した。

結論を先にいうと、政府寄りの見解は読売、産経、日経、北國のみで、あとは全て沖縄寄りに立っているといえる。
ただ、日経、北國も手放しでの政府賞賛ではない(特に日経の社説は興味深いと思う)。


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沖縄タイムス

[知事 承認取り消し] 国民的議論を喚起せよ

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=136993

 「本日、普天間飛行場代替施設建設事業にかかる公有水面埋め立て承認を取り消しました」。県庁6階で行われた記者会見。翁長雄志知事は前を見据えきっぱり言い切った。

 国の埋め立てを承認した前知事の判断を後任の知事が取り消すのは前例がない。取り消しを発表した翁長知事にとっても、沖縄県にとっても歴史的な重い判断である。

 翁長知事は会見で「日本国民全体で日本の安全保障を考えてもらいたい」「日本全体で安全保障を考える気概がなければ他の国からも尊敬されない」と繰り返した。

 翁長知事が就任以来強調してきたのは、沖縄の過重負担の上に成り立っている日米安保体制のいびつさである。翁長知事が退路を断ち、背水の陣で訴えたことを、本土の人たちはよそ事でなくわが事として受け止めてほしい。

 これを機会に米軍駐留と負担について国民的議論を巻き起こす必要がある。

    ■    ■

 2013年12月、仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認した。政府はこれを錦の御旗としてボーリング調査など本体工事に向けた作業を続けている。仲井真氏の選挙公約は「県外移設」だった。にもかかわらず承認直前、東京の病院に閉じこもり、政府と「裏交渉」を重ねた。県議会や県民に対する説明責任を一切果たさないまま埋め立てを承認し多くの県民の誇りを傷つけ、怒りを買った。その結果が14年11月の選挙である。

 今回の翁長知事の承認取り消しは選挙公約に基づく民意に即した決断といえる。

 翁長知事には忘れられない光景がある。那覇市長時代の13年4月、衆院予算委員会と南部市町村会の懇談会における自民党委員の発言である。「本土で嫌だって言っているんだから、沖縄で受け入れるしかないだろう。不毛な議論はやめよう」と言い放った。

 自民党議員のあからさまな発言は、中谷元・防衛相の言葉にも通じる。中谷防衛相は「(本土は)今はまだ整ってないから、沖縄が受けるしかないんですよ」と言った。

 基地を沖縄に押し込める思考停止ぶりは何も変わらない。海兵隊駐留が沖縄でなければならない軍事的理由はない。政治的に不都合だから沖縄に配備し続けているのであり、元防衛相の森本敏氏も現職時代に明言している。理不尽としかいいようがない。

    ■    ■

 翁長知事の取り消しは、新基地建設阻止に向けたスタートであり、むしろこれからが本番である。

 政府は新基地建設をやめる気がない。知事の取り消しを受け、中谷防衛相は行政不服審査法に基づき14日以降、石井啓一国土交通相に取り消し無効を求める審査請求と裁決が出るまでの執行停止を求める考えを明らかにした。

 行審法の本来の趣旨は、行政庁の違法な処分によって侵害された「国民の権利利益」の救済を図ることである。

 国民のための制度を国の機関の沖縄防衛局が使うのは法の趣旨を曲げており、国の機関が審査請求などの不服申し立てをすることはできないというべきだ。

 3月にも沖縄防衛局が投入したコンクリート製ブロックがサンゴ礁を傷つけた可能性が高いとして翁長知事が防衛局に海底作業の停止を指示。防衛局は、審査請求と指示の効力停止を当時の林芳正農相に申し立て、6日後に効力停止を決定している。

 国の機関である沖縄防衛局が国の国土交通相に不服審査を申し立てるのは政権内の「出来レース」である。三権分立の趣旨からしても行政府の中ですべてを決めるやり方は乱暴だ。第三者機関である国地方係争処理委員会や高等裁判所の判断に委ねるのが筋である。

 翁長知事は安倍政権について「沖縄県民に寄り添ってこの問題を解決していきたいという考えが大変薄いのではないか」と強く批判した。

 何度民意を示しても一顧だにせず辺野古の陸でも海でも公権力を強引に行使し、けが人が出ても問答無用とばかりに作業を強行する。そのようにして新基地を建設し、他国の軍隊に差し出そうとする主権国家がどこにあるだろうか。このような事例が他府県のどこにあるだろうか。

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琉球新報

承認取り消し 民意実現の出発点に 政府は新基地断念すべきだ

http://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-153618.html

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古沿岸部への新基地建設をめぐり、翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した。

 沖縄の将来を見据え、新基地建設阻止への決意を示す意義ある一歩として高く評価したい。
 裁判などで問題解決までには長い道のりが予想される。だが、新基地建設反対の民意は圧倒的であり、土地を同意なく奪って建設した普天間飛行場の形成過程からしても、理は知事にある。
 阻止運動を県外、国外に広げ、新基地建設断念と普天間飛行場の閉鎖を勝ち取る新たな出発点に、承認取り消しを位置付けたい。

犯罪的な行為

 知事は埋め立て承認取り消し後の会見で、普天間飛行場は戦後、県民が収容所に入れられている間に、強制接収されて建設されたことをあらためて強調した。その上で「辺野古に移すということは、土地を奪っておきながら代わりのものも沖縄に差し出せという理不尽な話」と批判した。普天間飛行場が国際法に反して建設されたことは明らかである。知事の批判は当然だ。
 ところが、菅義偉官房長官は知事の承認取り消しを「沖縄や政府が重ねてきた普天間飛行場の危険性除去の努力を無にするものだ」と批判した。「政治の堕落」を指摘されたことから何ら学んでいないと言わざるを得ない。車の窃盗犯が持ち主である被害者に「古くなった車を返すから新車をよこせ」と開き直るような姿勢は改めるべきである。
 政府はそんな犯罪的な行為を国民の面前で恥ずかしげもなく行っているのである。これで法治国家と言えるだろうか。官房長官が知事を批判するなど、筋違いも甚だしい。
 官房長官が言うように、政府はこれまで普天間飛行場の危険性の除去に努力してきただろうか。
 新基地は完成までに10年かかるとされる。危険性を除去し、固定化させないための辺野古移設としながら、10年間は固定化し、危険性もその間放置されるのである。政府が真剣に危険性除去を考えるならば、直ちに普天間飛行場を閉鎖すべきだ。そうしないのは県民軽視以外の何物でもない。
 普天間飛行場の危険性除去や固定化回避を持ち出せば、新基地建設に対する県民の理解が得やすいといった程度の認識しかないのではないか。
 前知事の埋め立て承認の条件ともいえる普天間飛行場の5年以内の運用停止の約束も、ほごにしている。政府の言う「努力」はこの程度のものでしかない。

普遍的な問題

 本来ならば、知事の承認取り消しを政府は重く受け止め、新基地建設の作業を直ちに停止すべきである。しかしそのような常識が通用する政府ではないようだ。
 中谷元・防衛相は「知事による埋め立て承認の取り消しは違法」と述べ、国交相に知事の承認取り消しの効力取り消しを求める不服審査請求と執行停止申し立てを速やかに行うとしている。
 同じ政府機関が裁決して公正を保つことはできない。政府側に有利になる可能性は極めて高い。これが官房長官の言う「わが国は法治国家」の実態である。
 新基地建設は沖縄だけの問題ではない。普遍的な問題を包含している。新基地建設に反対する圧倒的な民意を、政府は踏みにじろうとしている。日本の民主主義が問われているのである。日米同盟を重視し、民意は一顧だにしない政府を認めていいのかが突き付けられているのである。優れて国民的問題だ。
 知事は「これから節目節目でいろんなことが起きると思う」と述べている。新基地建設問題の本質をしっかり見極めてほしいということだ。そのことを深く自覚し、声を上げ続けることが今を生きる私たちの将来世代に対する責任である。

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朝日新聞

辺野古移設 沖縄の苦悩に向き合え

http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事がきのう、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。

 これに対し、政府は直ちに行政不服審査請求などを行う方針だ。政府と県が行政手続き上、司法上の対抗策を打ち合うなかで、民意に反した基地建設が進む。そんな異常事態は、何としても避けなければならない。

 政府は埋め立ての法的根拠を失った以上、計画は白紙に戻し改めて県と話し合うべきだ。

 前知事による承認から1年10カ月。翁長知事は取り消しに向けて周到に準備を重ねてきた。

 「承認手続きに瑕疵(かし)がある」との結論は、第三者委員会が半年かけて導き出した。

 第三者委は移設の必要性について「実質的な根拠が乏しい」と指摘。「米軍の沖縄配備の優位性」などの政府の主張にも具体的な説明がないとした。

 翁長知事は政府との集中協議でもこれらの点を問いただしたが、政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すばかり。説得力ある説明はなかった。

 翁長知事は先月、ジュネーブでの国連人権理事会の演説で、「沖縄の人々は自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えた。基地問題を人権問題ととらえての主張である。

 戦後、米軍に土地を強制接収され、次々と米軍基地が造られた歴史。戦後70年、米軍による犯罪や事故に巻き込まれる危険、航空機の騒音などの「基地被害」と隣り合わせの生活を余儀なくされてきた歴史。

 そして、いまなお全国の米軍専用施設面積の73・8%が、国土の0・6%にすぎない沖縄県に集中している現実。

 これはまさに、沖縄に対する「差別」ではないのか。

 日米安保条約を支持する政府も国民も、そうした沖縄の現実に無関心でいることによって、結果として「差別」に加担してこなかったか――。

 翁長知事による埋め立て承認取り消しは、政府に、国民に、そこを問いかけるメッセージだと受けとめるべきだ。

 残念なのは、ジュネーブでの知事の演説に対し、菅官房長官が「強い違和感を受ける。国際社会では理解されない」と冷淡な対応に終始したことだ。

 行政手続きや司法判断の結果がどうあれ、政府と沖縄の亀裂がこれ以上深まれば米軍基地の安定運用も危うくなるだろう。

 政府に求められるのは、沖縄の苦悩を理解し、人権や自己決定権に十分配慮する姿勢だ。まず計画を白紙に戻すことが、そのための第一歩になる。

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読売新聞

辺野古取り消し 翁長氏は政府との対立煽るな

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20151013-OYT1T50124.html

 政府との対決姿勢を強めるばかりで、問題解決への展望はあるのか。

 米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡り、沖縄県の翁長雄志知事が、仲井真弘多前知事の埋め立て承認について「法的瑕疵かしがある」と強弁し、取り消しを決めた。

 米軍の抑止力は県外移設でも低下せず、辺野古移設の「実質的な根拠が乏しい」と主張する。埋め立て後、貴重な自然環境の回復がほぼ不可能になるとし、騒音被害の増大の可能性にも言及した。

 だが、ヘリコプター部隊を県外に移せば、米軍の即応力は確実に低下する。自然環境などへの影響について、仲井真氏は防衛省に約260もの質問をし、その回答を踏まえて、環境保全は概おおむね可能と判断し、埋め立てを承認した。

 辺野古移設は、日米両政府と地元自治体が長年の検討の末、唯一の現実的な選択肢と結論づけられたものだ。翁長氏は、代案を一切示さない頑かたくなな姿勢でいる。

 菅官房長官が「関係者が重ねてきた、普天間飛行場の危険性除去に向けた努力を無視するもの」と翁長氏を批判したのは当然だ。

 防衛省は14日にも、国土交通相に対し、行政不服審査とともに、県の取り消しの執行停止を申し立てる。執行停止が決まり次第、作業を再開し、11月にも埋め立て本体工事に入る考えだ。

 翁長氏は承認取り消しが認められなかった場合、工事差し止めなどを求めて提訴する構えで、法廷闘争になる公算が大きい。その場合、政府は、関係法に則のっとって粛々と移設を進めるしかあるまい。

 疑問なのは、翁長氏が先月下旬、国連人権理事会で「沖縄の自己決定権や人権がないがしろにされている」などと訴えたことだ。

 違和感を禁じ得ない。沖縄の「先住民性」や、独裁国家の人権抑圧を連想させ、国際社会に誤ったメッセージを送る恐れがある。

 辺野古移設に賛成する名護市の女性は同じ場で、「教育、生活などで最も高い水準の人権を享受している。(翁長氏の)プロパガンダを信じないで」と反論した。

 沖縄は「辺野古反対」で一色ではない。翁長氏が政府との対立を煽あおるだけでは、普天間飛行場の移設が遠のくうえ、米海兵隊グアム移転なども頓挫しかねない。

 翁長氏は、沖縄選出の島尻沖縄相の就任について「基地と振興策が混同すれば、ややこしいことにならないか」と発言した。辺野古移設には反対しつつ、沖縄振興予算も確保しようという発想は、虫がいいのではないか。

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毎日新聞

辺野古取り消し やむを得ない知事判断

http://mainichi.jp/opinion/news/20151014k0000m070179000c.html

 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設計画をめぐり、翁長雄志(おなが・たけし)知事が移設先の名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した。国と県の対立は決定的となり、最終的に法廷闘争に持ち込まれる可能性が高まった。異常な事態であり、残念だ。

 県は、前知事による埋め立て承認に「瑕疵(かし)があった」と主張し、国は「瑕疵はない」という。言い分は真っ向から食い違い、法的にどちらに理があるかは、まだ判断し難い。

 だが、今回のことは、安倍政権が県の主張に耳を傾けず、移設を強行しようとした結果ではないか。県の取り消し判断はやむを得ないものと考える。

 翁長氏は、記者会見で、今夏の1カ月間の政府と県の集中協議などを振り返って「内閣の姿勢として、沖縄県民に寄り添って問題を解決していきたいというものが薄い」と政府への不満を語った。

 菅義偉官房長官は、県の取り消し決定について「日米合意以来、沖縄や政府の関係者が重ねてきた普天間の危険性除去に向けた努力を無視するものだ」と批判した。溝の深さを改めて見せつけられるようだった。

 今回の取り消しにより、政府は埋め立て工事と前段のボーリング調査について、法律上の根拠を失う。

 政府は対抗措置として、行政不服審査法に基づき国土交通相に対し不服審査請求をする予定だ。あわせて取り消し処分の一時執行停止も申し立てる。執行停止が認められれば、政府はボーリング調査を再開し、来月にも本格工事に着手する構えだ。

 だが行政不服審査法は、行政に対して国民の権利を守るのが本来の趣旨だ。国が国に訴え、それを同じ国が判断することには違和感がある。

 不服審査の結果が出るまでには数カ月かかるとされ、最終的には国か県のいずれかが結果を不服として提訴すると見られる。そこまでして辺野古に代替基地を造ったとしても、安定的に運用できないだろう。

 翁長氏が知事に就任して10カ月。この間、安倍政権は辺野古移設計画を進めるにあたり、県の意向をくみ取ろうとする姿勢に乏しかった。一時期は、翁長氏と会おうともしなかった。

 今回、県は、取り消しの通知書とともに、15ページにわたって理由を記した文書を政府側に提出した。そこには「普天間が他の都道府県に移転しても、沖縄には依然として米軍や自衛隊の基地があり、抑止力が許容できない程度にまで低下することはない」など、辺野古移設への疑問が列挙されている。

 政府が今すべきは、強引に辺野古移設を進めることではなく、移設作業を中止し、これらの疑問にきちんと答えることではないだろうか。

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日本経済新聞

沖縄の基地のあり方にもっと目を向けよ

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO92787080U5A011C1EA1000/

 米軍普天間基地の移設を巡る政府と沖縄県の対立がいよいよ抜き差しならないところまで来た。残念な事態と言わざるを得ない。どうすれば折り合えるのかを国民全体でよく考えたい。

 普天間基地は沖縄県宜野湾市の市街地にある。11年前、米軍のヘリコプターが大学キャンパスに墜落する事故があった。住民は常に危険と隣り合わせで暮らす。

 同基地を人口が比較的少ない同県名護市辺野古に移すという政府の方針は妥当である。

 他方、沖縄県の翁長雄志知事は県外移設を求め、前知事が下した移設先の埋め立て許可を取り消した。「沖縄に集中する基地負担が固定化する」との判断だ。

 埋め立て許可やその取り消しが妥当かどうかは、公有水面埋立法を所管する国土交通相が判断する権限を持つ。防衛相は近く審査請求する。国交相は移設工事の続行を認めるとみられる。

 その後は知事が国交相の決定への不服を裁判所に申し立てるなどの形で、法廷闘争に入ることになろう。最終決着は最高裁に委ねるしかないが、そもそも司法で争うのになじまない問題である。

 一連の法手続きは公権力が個人の私権を侵害した場合の救済措置として設けられた。その仕組みのもとで政府と地方自治体が争うのは、政治の調整力のなさを露呈するものである。

 米軍基地を全廃すべきだと考える沖縄県民はさほど多くない。県民の怒りの矛先は、基地が沖縄に偏りすぎているといくら言っても、全く振り向かない本土の無関心に向いている。

 沖縄にある米軍基地の中には本土にあって差し支えのない施設が少なくない。だが、本土に移すとなると相当な反対運動を覚悟せざるを得ないため、米統治時代のままの体制がおおむね維持されてきた。政府は沖縄の基地負担の軽減にもっと努める必要がある。

 沖縄にはどれぐらいの防衛力があればよいのか。日米両政府や与野党が基地のあり方にもっと目を向け、真剣な議論を展開すれば、沖縄県民も自分たちが置かれた立場を理解するようになるはずだ。

 本土のわがままで沖縄がひどい目にあっている。県民がそう思っている限り、たとえ最高裁が名護市への移設にお墨付きを与えても摩擦はなくならない。移設を円滑に進めるのに必要なのは、本土側の真摯な取り組みである。

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産経新聞

承認取り消し 知事の職責放棄するのか

http://www.sankei.com/column/news/151014/clm1510140003-n1.html

 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事は、前知事による名護市辺野古沖の埋め立て承認に「瑕疵(かし)がある」として、正式に承認を取り消した。

 翁長氏は会見で「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に取り組む」と述べた。これが目的だとすれば、瑕疵の有無についての判断は二の次だったのではないか。

 辺野古移設が頓挫すれば、尖閣諸島周辺などで野心的な海洋進出を繰り返す中国の脅威に対し、抑止力を維持することができない。市街地の中心部にある普天間飛行場の危険性も除去できない。

 いずれも危険に直面するのは沖縄県民である。地方行政のトップとして、こうした判断が本当に許されるのか。

 菅義偉官房長官は「工事を進めることに変わりはない」と述べ、今秋の本体工事着手を目指す方針だ。政府は、取り消しの効力停止などを石井啓一国土交通相に申し立て、国交相がこれを認めれば移設作業は続けられる。

 政府は従来、行政判断はすでに示されているとして移設推進に変更はないとの立場をとってきた。手続き上も問題はなく、日本の安全保障環境を考慮すれば当然の対応といえよう。

 沖縄県側はこれに対し、効力停止の取り消しや差し止めを求める訴訟を起こすとみられる。

 だが翁長氏には知事の職責として国益を十分に認識し、県民の平和と安全を守る義務がある。現実的な判断を求めたい。

 翁長氏は9月、国連人権理事会で演説し、沖縄の「人権」や「自己決定権」を訴え、辺野古移設反対を唱えた。日本の防衛にかかわるテーマだけに、国内の混乱を対外的に印象づけるような手法は国益を損なう行為といえた。

 翁長氏は13日の会見でも、「広く米国や国際社会に訴える中で解決できればよい」とし、「地方自治や民主主義のあり方を議論する機会を提示できればと思う」とも述べた。首長として、手段や目的をはき違えてはいないか。

 政府も混乱の収拾に向けて全力を尽くしたとはいえまい。例えば新任の島尻安伊子沖縄北方担当相は就任後、この問題をめぐって翁長氏の説得に努めたか。移設作業をいたずらに遅滞させることがないよう、沖縄県民の理解を得る責任を果たしてもらいたい。

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東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015101402000140.html
中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2015101402000114.html

辺野古取り消し 県内移設は白紙に戻せ

 沖縄県の翁長雄志知事が辺野古沿岸部の埋め立て許可を取り消した。これ以上の米軍基地押し付けは認めない決意の表れである。政府は重く受け止め、普天間飛行場の県内移設は白紙に戻すべきだ。
 政府側に提出された通知書では「地理的に優位」とされている県内移設について、時間、距離などの根拠が示されておらず、県外移設でも抑止力は大きく低下しないと指摘。環境保全措置が適切、十分に講じられていないことも、仲井真弘多前知事による埋め立て承認に法的瑕疵(かし)(誤り)があった理由に挙げている。
 翁長知事の判断は妥当である。
 住宅地などが迫り、危険な米軍普天間飛行場(宜野湾市)返還は急務ではあるが、沖縄には在日米軍専用施設の約74%が集中する。
 米海兵隊の基地を置き続ける必要があるのなら、政府はその理由を説明しなければならないが、これまで県民が納得できるだけの明確な説明は聞いたことがない。
 そもそも沖縄の米軍基地は、戦後の米軍政下で住民の土地を「銃剣とブルドーザー」で強制的に収用したものであり、駐留する海兵隊は、反対運動の激化に伴って日本本土から移駐してきたものだ。
 こうした歴史的経緯を顧みず、駐留継続の合理的な理由も説明せず、米軍基地を引き続き押し付けるのであれば、沖縄県民に過重な米軍基地負担と犠牲を強いる「沖縄差別」でしかない。
 沖縄県民は、国政や地方自治体の選挙を通じて県内移設に反対する民意を示し続けてきたが、安倍政権は無視してきた。
 選挙で支持されたからと強弁して安全保障法制の成立を強行する一方で、沖縄の民意を無視するのは二重基準ではないのか。
 政府は八月から一カ月間、米軍基地問題について県側と集中的に協議し、その間、海底掘削調査を一時中断していたが、これも安保法制成立のために国民の反発を避ける手段にすぎなかったのか。
 埋め立て承認に法的瑕疵はないとする政府は、行政不服審査法に基づく不服審査請求を行うなど着工に向けた作業を継続する構えだが、そもそも政府が不服を申し立てられる立場にあるのか。法の趣旨を逸脱してはいないか。
 安倍政権が今なすべきは、選挙で示された沖縄県民の民意を謙虚に受け止め、普天間飛行場の県内移設を白紙に戻し、県外・国外移設を米側に提起することである。県側に法的に対抗することでは、決してないはずだ。

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北海道新聞

辺野古承認撤回 移設作業の全面停止を

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0029635.html

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事はきのう、米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。

 防衛省は作業を一時中断するが、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に求める。要求が認められるのは確実で、政府は移設を続行する方針だ。

 しかしその根拠となる行政不服審査法は本来、行政の不当な処分に対して国民が不服を申し立てる道を開き、「国民の権利利益の救済を図る」ことを目的とする。

 行政権を行使する立場の防衛省が、県民を代表する知事の決定に不服を申し立て、民意を踏みにじるのでは法の精神に反する。

 このままでは国と県の対立はさらに深刻化する。政府は移設作業を全面的に停止し、県側との対話と計画の見直しを進めるべきだ。

 翁長氏は、埋め立ての必要性に疑いがあるとした第三者委報告を根拠に、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事の承認には「瑕疵(かし)がある」と指摘した。

 これに対し菅義偉官房長官は記者会見で、手続きに法的瑕疵はないと主張。「工事を進めていく考えに変わりはない」と強調した。

 翁長氏は先の政府側との協議で、沖縄に米軍基地が集中する現状や海兵隊が駐留する必然性など根本的な疑問への回答を求めた。

 しかし政府側は普天間返還の日米合意を振りかざすばかりで、辺野古への移設を唯一の解決策とする明確な根拠を示せなかった。

 辺野古移設をめぐっては、米カリフォルニア州バークレー市議会が今年9月、計画に反対し、米政府に再考を促す決議を行った。

 日米合意を主導したナイ元米国防次官補も「沖縄の人々の支持が得られないなら、計画を再検討しなければならない」と述べた。

 過去の合意を盾に県民の声を抑え込むのなら、いったい誰のための政府か。計画見直しに向け、米国との再協議を探るべきだ。

 注目されるのは、先に入閣した島尻安伊子沖縄北方担当相の対応だ。参院沖縄県選挙区の選出で、2010年の参院選では県外移設を公約に掲げて当選した。

 その後は辺野古移設容認に転じたが、民意は熟知しているはずだ。政策に反映させる責務がある。

 安倍晋三首相は島尻氏の起用について「沖縄の心に寄り添った振興策を進めてほしい」と述べた。

 振興策はもちろん必要だが、問題の本質ではない。沖縄の心に寄り添うというならば、首相は自らの言葉を守り、県民の多くが反対する計画を撤回するのが筋だ。

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東奥日報

泥沼化避け対話の道探れ/辺野古承認取り消し

http://www.toonippo.co.jp/shasetsu/20151014006351.asp

茨城新聞

辺野古承認取り消し ほかに道はないのか

http://ibarakinews.jp/hp/hpdetail.php?elem=ronsetu  (東奥と茨城なぜか同じ内容・・?)

 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。これに対し今秋の本体工事着手を目指す政府側は、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき国土交通相に審査請求と取り消し処分の効力停止を申し立てる。申し立ては認められ、本体工事が始まることになるだろう。

 県は国を相手に効力停止の取り消しや作業停止などを求め提訴することを検討。法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。さらに海底ボーリング調査に伴い海中に投入されたコンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷の有無を調べた潜水調査の結果によっては、防衛局への岩礁破砕許可を取り消す意向だ。

 埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例も県議会で成立しており、この先も対抗措置の応酬が繰り返されるとみられる。国と県の対立は「全面対決」の局面を迎えた。ほかに道はないのだろうか。

 8月から9月にかけ移設関連工事を中断して行われた集中協議で政府は、市街地にある飛行場の危険性除去は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返し主張。県側に寄り添う姿勢を見せなかった。これ以上の泥沼化は避け、対話の道筋を真剣に模索すべきだ。

 これまで国と県の間に対話と呼べるものはなかったといっていい。1カ月に及んだ集中協議では県庁や首相官邸で計5回の話し合いが持たれたが、協議終了に際し翁長氏が「全力を挙げ(辺野古移設を)阻止するということで最後を締めくくった」と述べたことからも分かるように、双方の主張は平行線のまま最後までかみ合わなかった。

 承認取り消しに関する記者会見で、翁長氏は「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に全力で取り組む」と強調した。防衛局に提出した取り消しの通知書で県は、政府による沖縄の地理的優位性の説明について「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」などと指摘した。

 移設作業の現場に近い陸地と海上では反対派の市民らが気勢を上げ、興奮と緊迫感が高まっているという。対立の出口が見えないままでは、不測の事態が起きることも懸念される。普天間移設をめぐり辺野古以外の選択肢も含めて米政府とあらためて協議するなど、政府は打開に動くべきではないか。

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秋田魁新報

社説:「辺野古」対立激化 政府は対抗より対話を

http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20151014az

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、名護市辺野古(へのこ)沿岸部の埋め立て承認を取り消した。埋め立ては米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移転先とするため政府が申請し、前知事の承認を得ていたが、翁長氏は承認手続きに法的な瑕疵(かし)があるとして、取り消す方針を表明していた。

 取り消しによって政府は移設工事の法的根拠を失った。このため対抗措置として近く、工事を所管する国土交通相に対し、行政不服審査法に基づき、取り消し無効を求める不服審査請求と、取り消し処分の効力停止を申し立てる。

 不服審査は長期にわたるが、処分の効力停止については早期に国交相が認めるとみられる。その場合、政府は速やかに本体工事に着手する見通しだ。

 翁長氏は辺野古移設阻止のために「あらゆる手段を講じる」と述べており、今回の埋め立て承認取り消しをその第一歩と位置付けている。政府が本体着工に踏み切れば、沖縄県は承認取り消しが有効であることの確認や、工事自体の差し止めなどを求めて提訴する構えだ。

 政府と沖縄県は9月9日まで1カ月間、妥協点を見いだすための集中協議を行ったが、歩み寄るどころか溝が深まった。だが両者は新たな協議会を設け、集中協議後も話し合いを続けることで合意したはずだ。理解を求める側である政府は国交相への申し立てを見送り、対話再開の道を探るべきではないか。

 政府は、前知事による承認手続きに瑕疵はなく、行政の継続性の観点から、工事を進める必要があると主張。仮に沖縄県から訴訟が起こされても勝算があると見込んでいる。

 だが法廷闘争で政府が勝っても、沖縄県の政府への不信は強まるばかりではないか。在沖米軍への沖縄県民の視線は一層厳しくなり、日米安保体制を維持する上で不安材料となる恐れもある。

 基地問題の研究者は、政府が辺野古移設に固執するほど、基地が集中する現状に不満を募らせている沖縄県民と、本土国民の分断が進むと懸念する。そうした事態は、政府と沖縄県という行政機関同士の対立以上に不幸なことだと指摘している。

 菅義偉(よしひで)官房長官は今月下旬、米領グアムを訪ね、普天間などの米海兵隊員の一部が移る予定の施設を視察する。沖縄県の基地負担軽減につながることをアピールし、辺野古移設への理解を促す狙いがあるという。

 だが沖縄県が望むのは、辺野古移設の方針を堅持したままでの基地負担軽減策ではない。県外移設と普天間返還の両立を要求しているのだ。

 政府は、移設先を辺野古に限定する明確な理由を示していない。日米安保の将来像について沖縄県が求める説明もしていない。こうした地元の疑問を置き去りにして本体着工を強行するようでは、暴挙とのそしりを免れない。

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新潟日報

承認取り消し 辺野古移設の前提崩れた

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/

 埋め立て工事の前提は崩れた。政府は作業を中止して、米国とともに辺野古移設以外の選択肢を探るべきだ。

 沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が、宜野湾市の米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事による承認には瑕疵(かし)があると判断した。

 政府側は、「法的瑕疵はない」(菅義偉官房長官)との立場を変えていない。防衛省沖縄防衛局が審査請求と取り消し処分の効力停止を国交相に申し立て、国交相は効力停止を認める見通しだ。

 県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて裁判所に訴えを起こすとみられる。政府と県が全面対決する異常な事態だ。

 法廷闘争では、政府側に有利な判断が下される可能性が高い。しかし、政府には今日の事態に至る経緯をよく考えてもらいたい。

 沖縄県の承認取り消し通知書は、政府が普天間飛行場の県内移設を「地理的に優位」などとした点について、「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と問題視した。

 政府は沖縄県と1カ月の集中協議を行ったが、「なぜ辺野古が唯一の移転先なのか」との疑問に答えず、「1996年の日米合意が原点」と述べるにとどまった。不誠実な態度が不信感を高めたと言わざるを得ない。

 また、政府は辺野古移設で危険な普天間飛行場の固定化を避けると主張した。だが、沖縄県内における固定化の実態は変わらない。

 辺野古なら普天間と違い、住宅街の上空を飛行しないと説明しても、墜落事故で住民が巻き添えになる危険性はつきまとうのだ。

 承認取り消しは、米国も重く受け止めるべきだ。

 安倍晋三首相は4月のオバマ米大統領との会談で辺野古移設について翁長氏の理解を求めると確約した。しかし、理解を得るどころか、対立が決定的になった。

 対立がさらに先鋭化すれば、在沖縄米軍全体の運用にも支障が生じかねない。

 翁長氏は9月、国連人権理事会で演説し、「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国が、どうして世界の国々と価値観を共有できるか」と日本政府の対応を非難した。

 人権理事会は、加盟国の人権状況を監視し、改善を促す国連の重要機関だ。北朝鮮による拉致問題に国際的な関心を高める上でも大きな役割を果たしてきた。

 戦後70年が経過しても、沖縄に米軍基地が集中し、基地に起因する事件、事故が絶えない。沖縄の訴えが、日米両政府への厳しい視線を呼ぶ可能性がある。

 既成事実を積み重ねて工事着手に突き進む姿勢は、民主国家とは思えない。対米追従ばかりが際立つ政府の対応は、根強い国民の異論を押し切った安保関連法と同じ方向性に見える。

 日米両政府は、抵抗の意味に今度こそ正面から向き合わねばならない。沖縄の思いをくみ取り、沖縄とともに考えることが、私たちにも問われる。

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信濃毎日新聞

承認取り消し 沖縄の判断を尊重せよ

http://www.shinmai.co.jp/news/20151014/KT151013ETI090005000.php

 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、沖縄県の翁長雄志知事が前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認を正式に取り消した。

 知事の判断は、辺野古に新しい基地を造らせないとの選挙公約に沿うものだ。法廷闘争も視野に入れる。

 安倍晋三政権は辺野古移設が沖縄の基地負担軽減や普天間飛行場による危険性の早期除去につながるとしている。沖縄側は逆の受け止め方である。普天間閉鎖の明確な見通しも示さず、新基地の建設で環境破壊や米軍の事故などが増えるとみているのだ。

 政府は沖縄の人々の基本的人権を軽視している、との批判は免れないのではないか。民主主義の精神やルールにも反する。地元の理解が得られないまま、移設を強行してはならない。

 翁長知事は記者会見で、仲井真弘多前知事による埋め立て承認は「瑕疵(かし)があると認められた」と述べ、承認取り消しの通知書を沖縄防衛局に提出した。

 通知書は、政府が普天間の県内移設の理由を「地理的に優位」とした点に関し「根拠が何ら示されていない」と指摘。さらに移設先で「環境保全措置が適切に講じられているとも、その程度が十分とも言えない」などとした。

 実際、政府は辺野古移設が唯一の解決策と繰り返すばかりだ。なぜ新基地が必要なのか、詳しい説明をしない。沖縄防衛局が移設作業のためにコンクリート製のブロックを海中に投下し、サンゴ礁を傷つけたとされる。

 政府は8~9月に、移設作業を中断し、沖縄県と集中協議を行った。安全保障関連法の衆院採決強行によって内閣の支持率が急落したことが主な理由とみられ、沖縄の訴えに本気で耳を傾ける様子は感じられなかった。

 翁長知事は会見で「閣僚との意見交換や約1カ月の集中協議などで県の主張は理解してもらえなかった。内閣の姿勢として沖縄県民に寄り添って解決しようという思いが薄い」と批判した。

 沖縄防衛局は埋め立て承認取り消しに対し、国土交通相に効力の停止を申し立てる。3月に知事が作業停止を指示したときも同様の対抗措置を取り、関係法を所管する農相が効力を止めた。

 しかし、これらの手法は行政の処分に不満がある国民の救済が本来の目的である。政府内での“自作自演”に説得力はない。

 安倍政権のなりふり構わぬ姿勢がどう映るか。内外に強権的な体質をさらすだけだ。

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北國新聞

辺野古取り消し 沖縄の思いもくみ取って

http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm

 沖縄県の翁長雄志知事が、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消し、米軍普天間飛行場移設をめぐる政府と沖縄県の対立は法廷闘争に発展する可能性が強まった。前知事が正規の手続きを経て行った埋め立て承認が、政治的な立場や見解の相違によって覆され、国の安全保障政策の実行に支障をきたす事態は国家統治の在り方として尋常ではなく、残念極まりない。
 政府は、前知事による埋め立て承認に法的瑕疵(かし)はないという見解であり、行政上の対抗措置を取りながら、普天間飛行場の辺野古移設工事を推進する方針を示しているのは、外交・安保に責任を持つ立場としてやむを得まい。
 それでも、沖縄県の思いを最大限くみ取る姿勢を失ってはならない。地元の辺野古では普天間飛行場の移設受け入れを支持する住民が少なくなく、宜野湾市などでは普天間飛行場の固定化を懸念する声も聞かれる。辺野古移設反対は必ずしも沖縄県民の「総意」とは言えないが、辺野古移設反対運動がより多くの沖縄県民を巻き込んだ島ぐるみの反米基地闘争に発展し、安全保障の根幹である日米安保体制そのものまで揺らぐ事態に至らぬよう、政府は誠意を持って対応する必要があろう。
 政府は、沖縄の米軍基地負担の軽減や地域振興策の拡充をアピールし、辺野古移設の理解を得る努力を続ける方針であるが、基地負担の軽減については、より中長期的展望に立った議論を米政府と行えないか。例えば、普天間飛行場を使う米海兵隊は抑止力として当面欠かせないとしても、将来的に自衛隊の抑止力を高めることで、米海兵隊とその基地の必要性をなくすといった提言が、辺野古移設支持者からも出されている。
 また、沖縄県の委員会は先に、アジアの中心に位置する地理的優位性を生かし、アジアのダイナミズムを取り込むという「沖縄県アジア経済戦略構想」を公表した。この構想の理念については政府も異論はないはずで、安保戦略と不可分の地理的優位性を生かした沖縄の将来展望をもっと積極的に切り開く姿勢を求めたい。

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福井新聞

辺野古承認取り消し 「沖縄の痛み」に向き合え

http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/81584.html

 これでは、強権力で県民から土地を収奪した「銃剣とブルドーザー」と同じではないか。戦後70年を経て今なお大戦の傷跡が生々しい沖縄は、米国に従属する政府の圧力にさらされている。「沖縄の土地は誰のもの」。県民はそう激怒しているのではないか。

 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。だが政府は今秋の本体工事着手を目指し、法的措置で効力を停止する方針だ。あくまで政府に反対姿勢を貫く県との全面対決になる。

 知事は会見で、仲井真弘多前知事による埋め立て承認に関し「瑕疵(かし)があり、取り消しが相当と判断した」と述べた。「辺野古には絶対新基地を造らせない」という公約を本土の国民や国際社会に訴え続け、死守する構えだ。法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。

 しかし、沖縄防衛局が予定する国土交通相への行政不服審査法に基づく審査請求と効力停止は、そもそも行政処分に不満のある国民の救済を目的とした制度。県側は、政府が同制度を行使し政府側で判断することの問題点を批判する。

 県では、海底ボーリング調査の際に投入されたコンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷の有無を調査しており、調査結果によっては防衛局への岩礁破砕許可を取り消す意向を示している。埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例も県議会で成立しており、徹底して対抗措置を取っていく構えだ。

 確かに菅義偉官房長官が「前知事からの行政の判断は示されており、法的瑕疵はない」と言うように、埋め立ては知事が承認した。

 だが米軍基地の県外移設を主張してきた前仲井真知事が政府の説得工作で翻意したことに県民が反発。昨年11月の知事選で県内移設反対の翁長氏が仲井真氏を破り当選。県知事選や名護市長選、衆院選の沖縄4小選挙区全てで反対派が当選したように、沖縄の民意は移設反対だ。政府はこの現実を一顧だにしない。

 8月から1カ月間、移設関連工事を中断して行われた集中協議でも「辺野古が唯一の解決策」と繰り返すのみで、安倍政権は日米同盟を強化し、沖縄の基地整備に追従姿勢を強める。

 県民の願いは「世界一危険な基地」とされる普天間の「危険性除去」に向けた県内移転ではない。基地自体の撤去である。知事は「沖縄が抱える米軍基地の負担を全国で分かち合うべきだ」と強調。政府が根拠とする在沖海兵隊の「抑止力」や「地理的優位性」についても何ら根拠が示されていないと反発する。

 政府に辺野古以外の選択肢を含め打開策を探る動きはない。そればかりか3次改造内閣で新沖縄北方担当相に地元沖縄選出の女性参院議員を充てた。「県外移設」から「容認」に変節した議員である。来年の選挙を控え、政府は県民の「分断」を図るのだろう。「沖縄に寄り添う」としてきた安倍政権の本性が透ける。

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京都新聞

辺野古埋め立て  取り消し決断は民意だ

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20151014_4.html

 安倍晋三政権は沖縄県民の苦悩に向き合う気がないのか。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を翁長雄志知事が取り消したのに対し、さっそく政府は取り消しの効力を停止させる法的措置を取る方針を示した。
 翁長知事の決断は、沖縄の苦難の歴史と多くの県民の声を受けたものだ。一方、政府は移設推進の姿勢を変えていない。このままでは法廷闘争を含めた「全面対決」になるのは必至だ。
 政府は法的措置を経て、秋のうちに本体工事着手を目指すとしているが、あまりにかたくなではないか。日本の安全保障の足元が揺らぎかねない、との認識が希薄に思える。沖縄の声に耳をふさいで、工事を進めるべきではない。
 仲井真弘多前知事が下した埋め立て承認には環境保全措置などに不備がある-とする県の有識者委員会の検証結果にもとづいた承認取り消しである。さらに言えば、辺野古移設に主張を変えた前知事に、県民は選挙でノーを突きつけ、翁長知事を大差で選んだことも忘れてはなるまい。
 工事主体の防衛省沖縄防衛局は、翁長知事の取り消しの効力停止と審査請求を、すみやかに国交相に申し立てるという。同じ政権内であり、申し立てが認められるのは火を見るより明らかだ。
 そもそも、申し立ての根拠である行政不服審査法は、行政の処分に不満がある国民の救済を目的にしており、政府側が使うのはおかしなことだ。
 3月に前例がある。移設関連作業でサンゴ礁が傷ついていないか、翁長知事が調査のため作業停止を指示したところ、防衛局は農相に停止取り消しを申し立て、認められている。この時の審査請求の結論は今も出されていないのに、作業は再開されている。
 法的手続きを踏まえているというだろうが、県民には上から従わせる強権的な姿勢にしか見えまい。安倍政権は県側と協議の場を設けたといっても、「沖縄県民に寄り添って解決しようという思いが薄い」と翁長知事は受け止めている。
 国交相が効力停止を認めれば、審査請求の審査期間中でも本体工事に着手できる。そうなれば、県側は効力停止の取り消しを求め裁判を起こすことになろう。
 法廷では政府側に有利な判断が下されるとの見方が強い。しかし法律や権力で県側を屈服させて、問題は解決するだろうか。沖縄の苦難の歴史に学ぶべきだ。

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神戸新聞

辺野古取り消し/計画の妥当性を検証せよ

http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201510/0008480749.shtml

 沖縄県の翁長(おなが)雄志知事がきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しに踏み切った。

 仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による2年前の埋め立て承認に「瑕疵(かし)があった」という理由だ。

 政府は「地理的優位性」「一体的運用の必要性」などを、辺野古を唯一の移転先とする理由に挙げる。しかし、県側は「根拠が何ら示されていない」と批判し、環境保全措置についても「適切に講じられているとも十分とも言えない」と断じた。

 8~9月に行われた政府との集中協議は平行線のまま終わった。沖縄の主張を通すには、このカードを切る以外に道が残されていないと、知事は判断したのだろう。

 懸念されるのは、政府との対立が決定的となることだ。県にとって今後の展望が見通せる状況でない。

 それでも知事は「今後も辺野古に新基地を造らせない公約の実現に全力で取り組む」と会見で強調した。支えているのは昨年の知事選などで示された民意であり、重い決意と言わねばならない。

 政府があらためて沖縄の民意と向き合い、「全面対決」を回避すべきではないか。

 承認取り消しによって埋め立ての法的根拠が失われる。政府は、工事主体の防衛省沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき、きょうにも審査請求と取り消し処分の効力停止を国土交通相に申し立てる方針だ。

 効力停止が認められれば、請求の審査中でも移設作業を続けられ、今秋の本体工事着手が可能となる。その場合、県側も効力停止の取り消しや差し止めを求めて訴訟を起こすなどの対抗措置に出る構えだ。

 裁判になれば長期化は避けられないだろう。対立は泥沼化し、解決は遠のく。法廷での争いの一方で、移設作業が進み、埋め立てが既成事実化する恐れもある。

 翁長知事は先月、国連人権理事会で演説し、沖縄県民の自己決定権や人権が「ないがしろにされている」と訴えた。国際社会の理解を求める異例の行動だ。基地負担に苦しむ沖縄の深刻な状況を解決するのは、政府の責任である。

 移設作業を強引に進めても対立は解消しない。政府はこの機会に立ち止まり、計画の進め方を含め、その妥当性を検証すべきではないか。

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中国新聞

辺野古承認取り消し 問われる「基地と自治」

http://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=192261&comment_sub_id=0&category_id=142

 政府との全面対決に踏み出したといえよう。翁長雄志(おなが・たけし)沖縄県知事が、米軍普天間飛行場の移設に向けた名護市辺野古沿岸の埋め立て承認を取り消した。
 沖縄防衛局は行政不服審査法に基づき、取り消し処分の効力停止を国土交通相に速やかに申し立てる構えだ。認められれば移設関連の作業をすぐ再開するという。それに対し、県側は取り消しを求めて提訴する手はずである。
 対立が続くとすれば、法廷闘争は避けられそうにない。こうした異常事態に至ったことは残念でならない。
 行政手続きだけを考えると、前知事の承認を取り消す判断を継続性に照らして疑問視する声もあろう。しかし翁長知事の言い分は一定に理解できる。
 今後の焦点となるのは、取り消しの理由とした「瑕疵(かし)」の中身であろう。知事は辺野古での環境保全措置が十分ではないことを挙げた。さらに政府側が県内移設の理由とする安全保障上の地理的な優位性についても、その根拠が示されていないことを批判した。
 知事の説明は結論ありきの政府が、地元と正面から議論してこなかった問題点と重なる。なぜ辺野古移設が「唯一」の解決策なのか。沖縄側の最大の疑問に答えられていないことが問題の根底にある。普天間の危険除去が移設の目的だと言いながら「5年以内の運用停止」への努力も見えない。
 国の方は聞く耳を持たない。きのうも菅義偉官房長官は「前知事から行政の判断は示されており、法的瑕疵はない」とにべもなかった。県が設定した意見聴取の場に沖縄防衛局が姿を見せなかったのも大人げない。
 強気の国に対し、翁長知事も厳しい闘いになるとみている。裁判が長引き、その間に本体工事が進めば、移設が既成事実になりかねない。それでも取り消しに踏み切ったのは、ここで諦めれば基地問題全体の解決が遠のくと考えるからだろう。
 記者会見で知事が「地方自治や民主主義の在り方を議論する機会にしたい」と述べた意味は重い。沖縄だけではない。日米安保条約の下で政府と基地を抱える自治体の多くは時に対立関係にあった。航空機の騒音や事故の危険性、米兵犯罪などが住民の安全を脅かすからだ。しかし歴代政権は安全保障を「専権事項」として自治体の声より米軍を重んじてきた。少なくとも今は国と地方が対等の関係であるにもかかわらず。
 基地をめぐる埋め立ての認可権限は、その中でも自治の現場が異議を申し立てることができる数少ないカードだ。今回、翁長知事はそれを最大限使って国に物申したことになる。県民の財産権や人権、暮らしを犠牲にしてまで安全保障を成り立たせる論理はおかしい、日本全体で考える問題ではないか、と。
 だからこそ国に慎重な対応を求めたい。そもそも県の処分の効力停止の申し立てにしても、行政の処分に不満がある国民の救済を目的とした制度だ。国の申し立てを国が判断することには違和感が拭えない。せめて国交相は知事の主張を十分に聞き取り、徹底して審査すべきだ。
 国の側も司法判断に委ねる覚悟なら、少なくとも決着を待たねばなるまい。本体工事を強引に目指すのは論外である。


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山陰中央新報

辺野古承認取り消し/泥沼化避け対話の道筋を

http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=555362033

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。

 これに対し今秋の本体工事着手を目指す政府側は、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき国土交通相に審査請求と取り消し処分の効力停止を申し立てる、とする。国と県の対立は「全面対決」の局面を迎えた。泥沼化を避けて、対話の道筋を真剣に模索すべきだ。

 国の申し立ては認められ、本体工事が始まることになるだろう。これに対し県は、国を相手に効力停止の取り消しや作業停止などを求め提訴することを検討。法廷闘争にもつれ込む可能性が高い。

 県はさらに海底ボーリング調査に伴い海中に投入されたコンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷の有無を調べた潜水調査の結果によっては、防衛局への岩礁破砕許可を取り消す意向を示している。埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例も県議会で成立しており、この先も対抗措置の応酬が繰り返されるとみられる。

 県側は翁長氏が当選した県知事選や名護市長選、衆院選の沖縄4小選挙区全てで、移設反対の民意が示されたという立場を取る。一方の国側は8月から9月にかけ移設関連工事を中断して行われた集中協議でも、市街地にある飛行場の危険性除去は「辺野古が唯一の解決策」と繰り返し主張した。

 これまで国と県の間で歩み寄りの空気はなかった。1カ月に及んだ集中協議では県庁や首相官邸で計5回の話し合いが持たれたが、協議終了に際し翁長氏が「全力を挙げ(辺野古移設を)阻止するということで最後を締めくくった」と述べ、双方の主張は平行線のまま最後までかみ合わなかった。

 前知事の埋め立て承認について「法的な瑕疵(かし)」があると結論づけた県の有識者委員会の報告を踏まえ、翁長氏は普天間移設計画の背景にある在沖海兵隊の「抑止力」や沖縄の「地理的優位性」に疑問を呈してきた。

 また、米軍に強制的に土地を収用された沖縄の戦後も振り返り「県民の魂の飢餓をどう思うか」とも問い掛けたが、これに対して明確な答えは返ってこなかった。

 国は行政の継続性を主張しつつ、「辺野古移設が唯一の解決策」との立場を崩していない。埋め立て承認の取り消しに向け、県は手続きの一環として意見聴取を行うと防衛局に通知したが、防衛局は「応じられない」と回答している。聴取の場には足を運ばず「承認に瑕疵はなく取り消しは違法」とする陳述書を提出した。

 翁長氏は記者会見の場で「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に全力で取り組む」と強調した。防衛局に提出した取り消しの通知書で県は、政府による沖縄の地理的優位性の説明についても「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」などと指摘している。

 このまま対立の出口が見えないままでは、反対運動の激化は避けられない。住民を巻き込んだ衝突など、不測の事態が起きることも懸念される。米政府とも協議するなど、政府は打開に動くことが求められよう。

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愛媛新聞

辺野古承認取り消し 泥沼の闘争に政府は終止符打て

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201510148682.html

 ついに国と沖縄県の全面対決に至ってしまった。
 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。対して政府側は、工事主体の防衛局が行政不服審査法に基づき、審査請求と取り消し処分の効力停止を石井啓一国土交通相に申し立てると表明した。
 国交相が効力停止を認めれば防衛局は審査請求の審査期間中も移設作業を続け、本体工事に着手することができる、と政府は読む。そうなれば、県側は効力停止の取り消しや差し止めを求めて提訴する方針だ。泥沼の法廷闘争は避けねばならない。
 ここまで対立を先鋭化させたのは、基地問題に関して「辺野古移設が唯一の解決策」との一点張りで、民意を一顧だにしない政府の強権的な態度にほかならない。抗議する市民への警察官や海上保安官らによる取り締まりが厳しさを増す現在、さらに力ずくで本体工事に突入すれば、流血の事態さえ現実のものとなりかねない。
 暴挙は断じて許されない。政府には、事態を重く受け止め工事を中止するよう強く求める。県民の声を聞き、苦難の歴史と向き合い、基地負担軽減策を練り直して米国との協議のやり直しへかじを切るべきだ。
 普天間返還の合意を主導したジョセフ・ナイ元国防次官補は辺野古移設について「沖縄の人々の支持が得られないなら、米政府はおそらく再検討しなければならないだろう」と沖縄の地元紙に述べている。住民の反発下では米国側も基地の安定的持続が見通せないに違いない。
 ナイ氏は以前、沖縄が中国の弾道ミサイルの射程内にあることを踏まえ、沖縄への基地集中を変えるべきだとも指摘している。実際、米国はリスク軽減のためハワイやグアムなどへの兵力分散を加速させている。
 沖縄での最大の兵力である海兵隊については、機動力や抑止力、訓練の環境などの観点から沖縄での存在意義や戦略的価値を疑問視する声が米国内や日本の専門家らから上がっている。
 これらの状況を鑑みれば、辺野古移設が基地問題の唯一の解決策であると主張する根拠は揺らぐ。国民の強い懸念と反発を米国に伝え、別の解決策を探ることこそ政府が取るべき道だ。
 米国への協力をアピールするために、政府が主導して辺野古への新基地建設を強行することは決して認められない。国民より米国との約束を優先する姿勢は安全保障関連法の強行成立と共通しており、深く憂慮する。
 翁長知事は先月、国連人権理事会で「自国民の自由、平等、人権、民主主義を守れない国がどうして世界の国々と価値観を共有できるか」と訴えた。県民の怒りはもっともだ。本土からの賛同や支援も拡大している。民意を力で抑え続ければ国際的信頼を失うことを政府は肝に銘じ、計画見直しと対立解消へ力を尽くさなければならない。

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徳島新聞

辺野古取り消し やむにやまれぬ決断だ

http://www.topics.or.jp/editorial.html

 沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を正式に取り消した。承認に瑕疵(かし)があるというのが理由だ。

 これに対して政府は、行政不服審査法に基づき、審査請求と取消処分の効力停止を、国土交通相に申し立てる構えである。

 県が一度行った埋め立て承認を取り消すのも異例なら、政府が法的な対抗措置を講じるのも極めて異例のことだ。

 両者の攻防は法廷に持ち込まれる可能性が高く、全面対決の様相を呈してきた。

 対立が泥沼化すれば、世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化が現実味を帯びてくる。そんな最悪の事態は、何としても避けなければならない。

 取り消された埋め立て承認は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が2年前に判断したものだ。翁長氏はこれについて、沖縄防衛局に提出した通知書で、主に2点の瑕疵を挙げた。

 一つは、政府が普天間飛行場を沖縄県内に移設する理由を「地理的に優位」などとした点で、「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と指摘した。

 もう一つが環境面への影響である。通知書は、埋め立て計画について「環境保全措置が適切に講じられているとも、その程度が十分とも言えない」とした。

 政府は「承認に法的瑕疵はなく、取り消しは違法」としているが、なぜ辺野古が地理的に優位といえるのか、明確に説明する必要がある。

 環境面では、前知事の判断を検証した沖縄県の有識者委員会も7月、国や県の「生物多様性戦略」に反している可能性が高いとの報告書を出している。政府は、こうした疑問にも真摯に答えなければならない。

 政府と県は8~9月に集中協議を行い、融和を図る機運も出ていた。それがここまでこじれたのは、沖縄の民意をくみ取ろうとしない政府側に責任があるといえよう。

 集中協議で政府は、「辺野古が唯一の解決策」という主張を変えなかった。これでは、歩み寄りの糸口など見つかるまい。

 翁長氏は記者会見で、一連の協議を振り返り「内閣の姿勢として、県民に寄り添って解決したいという思いは非常に薄い」と厳しく批判した。

 承認取り消しという非常手段に出た背景には、戦後70年もの間、基地の存在に苦しむ県民の悲痛な思いがある。やむにやまれぬ決断である。

 国土面積の0・6%しかない沖縄県に、在日米軍専用施設の約74%が集中している現状は、あまりに酷と言わざるを得ない。

 政府は対抗措置を講じた後、今秋にも本体工事に着手する方針だが、強引に推し進めるのではなく、沖縄の声に耳を傾けるべきだ。

 辺野古以外の選択肢も視野に、計画を再考することが解決の近道ではないか

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高知新聞

【辺野古取り消し】 国の姿勢に募る違和感

http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=345642&nwIW=1&nwVt=knd

 沖縄県の翁長知事が米軍普天間飛行場の移設先とされる、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消した。
 政府は速やかに法的措置を取り、取り消しの効力を停止する方針だ。両者の対立が法廷闘争に発展する可能性がさらに高まった。
 知事の決断には圧倒的な民意の後押しがある。にもかかわらず、菅官房長官は「沖縄や政府関係者が重ねてきた努力を無にするもの」と批判した。沖縄の思いを切って捨てるような国の姿勢は残念と言うほかない。
 菅氏は2013年12月の仲井真前知事による埋め立て承認を踏まえ、「行政の継続性」も訴えてきた。だが広く国民への理解が広まるだろうか。
 県外移設を求めていた仲井真氏が辺野古容認に転じたのは、巨額の沖縄振興予算が大きい。札束でほおをたたく国のやり方への反発が根強いのは、14年11月の知事選で翁長氏が仲井真氏を約10万票の大差で破ったことで明らかだ。継続しているのは辺野古反対の民意の方である。
 県が承認を取り消した理由の一つには、埋め立てに伴う環境保全措置への疑念がある。翁長氏は今年3月、移設関連作業で投入されたコンクリートブロックでサンゴ礁が傷ついていないか調査の必要があるとして、沖縄防衛局に作業停止を指示した。
 防衛局は行政不服審査法に基づき審査請求と指示の効力停止を申し立て、農相が効力停止を決めた経緯がある。ところが農相は今も、審査請求への結論を出していない。中途半端な状態のまま、国は移設作業を進めていることになる。
 埋め立て承認取り消しに対しても、防衛局は同様の申し立てを行い、所管する国土交通相が効力停止を認める公算が大きい。しかし行政不服審査はそもそも、行政処分に不満がある国民の救済を目的とした制度とされる。国の機関(防衛局)がこれを使い、国(国交相)が判断することへの疑問も指摘されている。
 1996年、日米が普天間返還で合意してから20年近い歳月が流れた。曲折を経た国策の懸案を、直近の民意を無視して解決するのは難しい。県民や国民の多くが懸念や疑念を抱くやり方を政府が押し通せば、大きな禍根を残すことにもなろう。
 沖縄をこれ以上追い詰めることのないよう、国に慎重な対応を求める。

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大分合同新聞

辺野古承認取り消し ほかに道はないのか

http://www.oita-press.co.jp/1042000000/2042002000/2015/10/20151014
(会員のみ閲覧可でしたのでタイトルだけ)

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熊本日日新聞

辺野古「全面対決」 対話の道を模索すべきだ

http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20151014001.xhtml

 沖縄県の翁長雄志[おながたけし]知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を正式に取り消した。一方、政府は速やかに法的対抗措置を取り、今秋の本体工事着手を目指す方針だ。沖縄と政府の対立は法廷闘争を見据えた「全面対決」の局面に入った。

 法廷闘争に入れば、政府と県との間には埋めようもないほど深い溝が残ることになろう。反基地感情はより高まり、日米安全保障体制としても、その基盤である基地が激しい反対の波にさらされ続けることになりかねない。

 決定的な対立は、何としても避ける必要がある。政府は工事を中止し、普天間移設について辺野古以外の選択肢も含めて米政府とあらためて協議するなど、沖縄の声にもっと真剣に向き合いながら、対話の道を模索すべきだ。

 翁長知事は記者会見で、仲井真弘多[なかいまひろかず]前知事による辺野古埋め立て承認に関し、「瑕疵[かし]があると認められた。取り消しが相当と判断した」と述べた。県の有識者委員会が知事に提出した報告書では「普天間移設の必要性から、直ちに辺野古沿岸部の埋め立ての必要性があるとした点に審査の欠落がある」などとしている。

 安倍晋三首相は「米軍普天間飛行場の一日も早い危険性の除去はわれわれも沖縄も思いは同じだ。辺野古への移設が唯一の解決策だ」とする。しかし、普天間の移設先はそもそも、日米両政府による1996年の返還合意後に打ち出されたものだ。「沖縄本島東海岸の撤去可能な海上施設」で、当初のイメージは「海上ヘリポート」だったが、その後に軍事施設に変貌。専門家からは普天間の機能を上回るとの指摘もある。

 2013年12月、「基地の県外移設」を公約に掲げていた仲井真前知事が一転、埋め立てを承認した。この際、安倍首相に対し「普天間飛行場の5年以内の運用停止」を要求し、安倍首相も努力を約束した。

 しかしその後、安倍首相は米国との交渉を盾に約束を後退させ、菅義偉官房長官は辺野古移設が条件だとの考えを示した。結局、「5年以内」は仲井真前知事から承認を得るための「方便」だったのではないかとの疑念も残る。

 沖縄には在日米軍専用施設の約74%が集中する。仮に普天間飛行場の返還が実現しても、その割合は「0・7%しか減らない」と翁長知事は訴え、根本的解決に程遠いとの認識を示している。なぜ、地理的に限られた沖縄に基地を集中させる必要があるのか、在沖米軍は本当に「抑止力」として必要なのか。こうした沖縄の疑問に、政府は丁寧に答えていない。

 「全力を挙げて辺野古移設を阻止する」という翁長知事と政府の対立は決定的だが、無用の混乱、衝突は避けなければならない。政府は強権的な姿勢を慎むと同時に説明に意を尽くすべきだ。何より政府に求められているのは、沖縄の基地を減らしていくという本気度を見せることではないか。

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Posted by おちゃをのむ会 at 11:26Comments(0)辺野古

2015年04月21日

全国の新聞も盛り上がってきたね

辺野古の問題は難しくて何が正しいのかわからない・・という人は、とりあえず以下に列挙した社説を流し読みして、全国の新聞社が現在この件にどういう見解をもっているのか(何に肯定的で何に否定的なのか)、参考にしてみたらいいかもね。

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17日に翁長沖縄県知事と安倍首相の会談が初めて行われた。注目度は高く、全国で多くの新聞が社説にとりあげている。というか首相が会談を拒絶し続けてきたために逆に注目度が上がってしまったような。
政府寄りの論調は読売、産経、日経の全国紙のみで、温度差はあるもののそれ以外の新聞はすべて沖縄の主張に共感する論調。しかも単なる基地移設問題に留まらない視野を広げた記述が多く見られる。翁長知事が真っ当な主張を堂々と展開したことが、明らかに大きく影響を与えている。知事の首相に向けた発言は、同時に全国に向けた発言でもある。


翁長知事の発言骨子を18日の琉球新報から引用。概ね重要なポイントはここにまとめられている。



(いちおう発言全文は沖縄タイムスのこちら http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=112136


政府寄りの読売、産経、日経は、見事なまでに知事発言から目を逸らした。これは知事発言にまともな回答ができなかった(しなかった)首相の姿勢と重なる。
それ以外の新聞は知事発言を受け止めながら見解を示している。辺野古の件は単なる基地移設の問題ではなく様々な背景があるということが、ようやく県外の新聞からも意識されるようになってきた。よい兆候。


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【全国紙】

朝日新聞
安倍・翁長会談―まだ「対話」とは言えぬ


 「私は絶対に辺野古新基地は造らせない」
 安倍首相との会談をようやく実現させた沖縄県の翁長知事は、一段と強い言葉で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する意思を示した。
 「沖縄の方々の理解を得る努力」を何度も口にしながら、翁長氏の要請を4カ月も拒んできた安倍首相は、先に会談した菅官房長官と同様、「辺野古への移転が唯一の解決策と考えている」と繰り返した。対話はまた平行線をたどった。
 安倍首相は26日から訪米を予定している。戦後70年の節目に日米同盟の深化を世界に示す狙いがある。沖縄県知事と会談することで、政権が普天間問題に積極的に取り組んでいる姿勢を米側に伝えられる、という目算も働いたのだろう。
 だが今回の会談を、政権の「対話姿勢」を米国に印象づけるための演出に終わらせてはいけない。
 安倍政権と沖縄県との対立は険しさを増すばかりだ。首相は打開の糸口を見いだせない現状を直視し、翁長知事が求めた通り、オバマ米大統領に「沖縄県知事と県民は、辺野古移設計画に明確に反対している」と伝えるべきだ。
 「粛々」と移設作業を続けている政権が「対話」姿勢をみせる背景には、国内で沖縄問題への関心が広がっている面もあるだろう。米国でも「移設は順調に進むのか」という懸念が一部でささやかれているという。
 沖縄県は4月からワシントン駐在員を置いた。5月にも翁長知事自身が訪米して直接、移設反対を訴える。
 翁長知事は今回も「沖縄は自ら基地を提供したことはない」と、米軍による土地の強制接収や戦争の歴史に言及した。この言葉が含む史実の重さを、首相はどう感じただろうか。
 菅官房長官との会談で出た翁長知事の言葉は、小手先の経済振興策による解決を拒絶した歴史的メッセージだと、県民の評価は高い。
 そのメッセージはまた、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙で移設反対の民意が繰り返し示されながら、無視し続けてきた政権への怒りを、米軍統治下の自治権獲得闘争と重ねてみせた。それは地域のことは自ら決めよう、という自己決定権の主張でもある。
 政権が本気で「粛々」路線から「対話」路線へとかじを切るというのなら、ボーリング調査をまず中断すべきだ。そうでなければ対話にならない。


毎日新聞
首相と沖縄知事 形だけに終わらせるな


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が初めて会談した。今回の会談を形だけのものに終わらせず、政権と沖縄の政治対話を継続すべきだ。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を掲げる翁長氏が知事に就任して4カ月余り。この間、安倍首相は翁長氏との会談に応じず、沖縄の態度の変化を促そうとするように冷遇し続けた。長い空白期間だった。
 今月に入り、菅義偉官房長官が5日に那覇市で翁長氏と初会談したのに続き、首相官邸で安倍首相と翁長氏の会談が実現した。ここへ来て政府が急に動き出したのは、安倍首相が訪米し28日にオバマ大統領と会談するのを前に、沖縄に理解を求める政府の努力を米国の政府や議会向けに示す狙いがあるのだろう。
 たとえ政治的な演出であったとしても、会わないよりはずっといい。対話なしに物事は進まない。
 会談の内容そのものは平行線だった。安倍首相は、普天間の危険性除去のため「辺野古移設が唯一の解決策」だと改めて強調した。翁長氏は「県外移設公約をかなぐり捨てた前知事が埋め立てを承認したことを『錦の御旗(みはた)』として、政府が辺野古移設を進めている」と批判した。
 首相は「これからも丁寧に説明しながら理解を得る努力を続けていきたい」とも語った。政府が辺野古移設をどうしても進めるというなら、口で言うだけでなく、最低限、沖縄への丁寧な説明を実行すべきだ。
 沖縄からは安全保障上の必要性に対する疑問も出ている。「安全保障環境が変化する中で、辺野古に新基地を作って、将来も長期にわたって米海兵隊が駐留する必要があるのか」という問題提起だ。
 政府は、沖縄県の尖閣諸島をめぐる対立など中国の海洋進出をにらみ、抑止力を維持するために辺野古移設が必要というが、沖縄の人たちは必ずしも納得していない。議論を深める必要がある。
 防衛省沖縄防衛局が辺野古沖に沈めたコンクリート製ブロックがサンゴ礁を破壊しているとみられる問題についても、県が求める現地調査や資料提供に応じ疑問に答えるべきだ。
 仲井真弘多(ひろかず)前知事が埋め立て承認の際に安倍首相と約束したとしている「普天間の5年以内の運用停止」などの負担軽減策が実現可能かどうかも、明確にしなければならない。
 政府と沖縄の間には、全閣僚と知事が米軍基地問題や振興策について話し合う沖縄政策協議会があるが、翁長知事になって開かれていない。協議会の再開を含め、政権と沖縄が定期的に話し合う仕組みを早急に動かすべきだ。


読売新聞
首相VS沖縄知事 建設的対話重ねて接点を探れ


 政府と沖縄県の立場の隔たりは大きいが、建設的な対話を重ねる中で、接点を探るべきだ。
 安倍首相が沖縄県の翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設について「唯一の解決策だ」と述べ、理解を求めた。
 首相は、「一日も早い危険性の除去では、我々も沖縄も思いは同じだと思う」とも強調した。
 翁長知事は、「唯一の解決策という頑かたくなな固定観念」に縛られるべきではないと反論し、移設作業の中止を求めた。今月下旬の首相の訪米にも言及し、「知事と県民が明確に反対している」ことを米側に伝えるよう要請した。
 対立点を確認しただけだが、2人が初めて率直に意見交換した意味は小さくない。政府と県は、対話を継続し、まずは一定の信頼関係を築くことが大切である。
 翁長知事は今月5日の菅官房長官との会談で、辺野古移設を巡る政府の対応を「上から目線」「政治の堕落」などと非難した。
 だが、相手を批判するだけでは、沖縄の米軍基地負担の軽減という共通の目標は進展しない。
 翁長知事が3月下旬、県漁業調整規則に基づき、移設作業の停止を防衛省に指示したのに対し、関連法を所管する林農相が指示の執行停止を決定した。
 防衛省は、移設作業に伴い辺野古沖に投入したコンクリート製ブロックについて「サンゴ礁などの生態系に大きな影響は与えていない」との見解を公表している。
 翁長知事は法廷闘争も辞さない構えだが、移設作業を停止させる見通しは立っていない。政府との対立を一方的に深めるだけでは、県民全体の利益になるまい。
 沖縄周辺では、中国が軍事活動を活発化させている。2014年度の自衛隊の中国機に対する緊急発進(スクランブル)は、過去最多の464回に上った。中国公船の領海侵入も常態化している。
 在沖縄米軍の重要性は一段と増した。抑止力の維持と住民の負担軽減を両立する辺野古移設は、現実的かつ最良の選択肢だ。
 安倍首相は会談で、米軍基地の返還に加え、那覇空港第2滑走路建設などの地域振興策を着実に推進する考えを改めて示した。
 沖縄では28年度までに、計1048ヘクタールにも上る県南部の米軍施設が順次返還される予定だ。仮に辺野古移設が停滞すれば、この計画も大幅に遅れかねない。
 政府は、辺野古移設の意義と重要性を地元関係者に粘り強く説明し、理解を広げねばならない。


産経新聞
安倍・翁長会談 危険性除去へ責任果たせ


 米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と移設に反対する翁長(おなが)雄志(たけし)沖縄県知事との初会談が行われた。
 主張は平行線をたどったものの、国と沖縄県のトップ2人が直接、意見を交わした意義は小さくない。話し合いを継続する意向を双方が示したのもよかった。
 日本と沖縄の安全保障がかかる移設実現への道のりは、なお険しいが、双方の意思疎通を保ちながら、粘り強く協議を重ねていく必要がある。
 首相は会談で、辺野古移設を「唯一の解決策だ」と伝え、「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と語った。これに対し、翁長氏は「絶対に辺野古に新基地は造らせない」とし、「固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と要求した。
 世界一危険とされる普天間の危険性を除去し、沖縄の基地負担軽減を進める。さらに日米同盟の抑止力を保ちながら安全保障を確かなものにする。この3点が課題であることは変わりようもない。
 首相と翁長氏の間でも、この問題意識が共有されなければ、協議の進展は難しい。3点を実現できる案として、政府が苦慮した末に見いだしたのが、辺野古移設なのである。
 翁長氏は辺野古移設反対をオバマ米大統領にも伝えてほしいと主張し、代替案を示すべきではないかとの疑問が生じることについては「こんな理不尽なことはない」と語った。
 それでは普天間の住民の安全を確保できない。抑止力を維持する観点からも大いに疑問である。
 沖縄の基地負担は、日本やアジア太平洋地域をはじめとする世界の平和に役立っている。政府や国民が、そのことを十分認識し、負担軽減に努めるのは当然だ。
 同時に、移設後に辺野古に残る米海兵隊は、台頭する中国の軍事的横暴は許さないという日米両国の意志を示す存在であることも考えておく必要がある。
 会談は30分強で、安全保障を論じるには時間が足りなかった。首相をはじめ政府与党は、今後もさまざまな機会を通じ、翁長氏や沖縄関係者に、辺野古移設がなぜ唯一の解決策かを説くべきだ。
 中国が奪取をねらう尖閣諸島のある県の首長として、翁長氏には基地負担を通じ、平和に貢献している意識も持ってほしい。


日本経済新聞
首相と沖縄知事は粘り強く対話を重ねよ


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事が昨年の知事選後、初めて会談した。双方が主張をぶつけ合うだけの平行線に終わったが、顔を合わせないよりはるかによい。粘り強く対話を重ねて信頼関係を築けば、必ず道は開けるはずだ。
 約35分間の会談のほとんどは、沖縄県宜野湾市にある米軍普天間基地の同県名護市辺野古への移設の是非に費やされた。
 普天間基地は住宅密集地の真ん中にあり、不測の事態がいつ起きても不思議ではない。2004年には米軍のヘリコプターが基地に隣接する沖縄国際大のキャンパスに墜落する事故があった。
 会談で首相は名護市への移設を「唯一の解決策」と説明した。現実を踏まえれば、人口が比較的少ない辺野古への移設によって危険性を低減させる日米合意は妥当といえるだろう。
 知事は「沖縄がみずから基地を提供したことはない」と反論し、普天間基地の無条件での返還を求めた。さらに月末の日米首脳会談で沖縄が移設に反対していることをオバマ大統領に伝えるよう要求した。知事自らも近く訪米して米政府にじかに働きかける意向だ。
 双方の溝を埋めるのは容易ではないが、協議を続ける姿勢が互いにみられたことは評価できる。首相は会談で「理解を得るべく努力を続けていきたい」と述べた。菅義偉官房長官は記者会見で「この会談を機会に対話を重ねたい」と力説した。
 そもそも会談は4月上旬に沖縄を訪れた菅官房長官に、知事が首相と直接対話したいと語ったことで実現した。
 1996年に普天間返還で米政府と合意した橋本龍太郎首相は、当時の沖縄県知事だった大田昌秀氏と短期間に20回近くも会った。大田氏は結局、普天間代替施設を県内につくることに同意しなかったが、橋本氏の真摯な姿勢は県民にも評価する声があった。
 安倍政権もこうした共感を沖縄県民の間に生み出すことができるか。知事を説得するにはこうした地道な努力が欠かせない。
 政府と沖縄が話し合うべきは基地問題だけではない。自衛隊と民間が共用する那覇空港は分刻みで飛行機などが離着陸している。滑走路の増設は南西諸島の防衛にも、沖縄の経済振興にも役立つ。
 普天間移設問題でこうした協議にまで支障が生じたら、政府にも沖縄県にもマイナスだ。



【ブロック紙】

北海道新聞 
安倍・翁長会談 沖縄の声は聞こえたか


 安倍晋三首相がきのう沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事と初めて会談した。
 沖縄県の米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画をめぐり意見交換した。翁長氏が計画への反対を表明したのに対し、首相は現行計画を「唯一の解決策」とし、主張は平行線のままだった。
 首相はあまりに一方的ではないか。過剰な基地負担に苦しむ沖縄の声を率直に受け止め、柔軟な姿勢で解決を図るべきだ。
 翁長氏は「選挙で辺野古新基地反対という圧倒的な民意が示された」と述べた。前知事の承認を理由に工事を進める政府への抗議を、首相は重く受け止めるべきだ。
 首相の「一日も早く普天間の危険除去が必要」「普天間の固定化はあってはならない」という主張は沖縄県民の心に響かない。
 沖縄に寄り添うふりをしながら、実際は政府の方針を押しつける口実にしているからである。理解を得たいなら、納得できる負担軽減の道を明示することだ。
 首相が注意を払うべきは「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか、嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」という翁長氏の訴えである。
 太平洋戦争で沖縄は犠牲者20万人を超す地上戦の場となった。日本の主権回復と同時に沖縄は米軍施政下に残された。復帰から40年以上を経た現在も在日米軍基地の74%が集中する。
 沖縄が日本のために払った犠牲をどう考えるのか。この問いに対する答えなくして、和解は考えられない。「国家の意思に従え」という単純な論理ばかりを振りかざす首相は認識を改めるべきだ。
 今月下旬には日米首脳会談が予定されている。翁長氏は辺野古移設反対の沖縄の民意を米国に伝えるよう要請した。
 米国の意向を沖縄に押しつけるが、沖縄の意を受けて米国を説得しようとはしない。これが日本政府の一貫した態度だった。
 米国内でも沖縄への過度な米軍基地の集中に懸念が出ている。辺野古移設とは別の方策を米国とともに模索するのが首相の責務である。県外、国外への移設を目指すのがあるべき道だ。
 首相と知事の対話は頻繁に続けるべきだ。だが、首相がかたくなな態度で臨むのでは、理解を得る努力をしているという「アリバイづくり」と見られても仕方ない。
 「上から目線」で基地建設を一方的に進めるのではなく、謙虚な態度で話し合うことが肝心だ。


河北新報
首相・沖縄知事会談/長い対話の始まりと心得よ


 会おうと思えば会える首相と知事の会談が大々的に報じられること自体、異常なことと言わざるを得ない。いかに政府と地元の間に解決の難しい懸案を抱えていようとも、いやそうであればこそ、積極的に対話を重ねる必要があるわけだから。
 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう、官邸で会談した。昨年12月に翁長氏が知事に就任して以来、初めてだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画をめぐり、安倍政権と沖縄県が鋭く対立、翁長氏が上京の折、再三会談を求めながらすれ違いに終わっていた。
 そういう経緯を踏まえれば、会談にこぎ着けたことを前向きに捉えるべきだろう。難題解決への糸口を見いだす確かな一歩としたい。
 そうした期待の一方で、冷静に受け止める必要もある。会談が形式の域を出ない恐れがあるし、むしろ解決をより難しくしてしまう要素をもはらんでいるからだ。
 初会談でその表情が物語るごとく、双方の姿勢はかたくなで、政府側にはややもすると会談実現を推進のてこにしたい思惑が見え隠れする。
 一方的に会談を拒否しているイメージを払拭(ふっしょく)、とりあえず一度会談の機会を持ち、対話の姿勢を世論にアピールする狙い、そして、26日からの訪米を前に会談実現の実績を示し、気をもんでいるはずのオバマ米大統領にも移設に向けた環境整備に積極的に取り組んでいる努力の跡を示す狙いである。
 そうした指摘は的外れとばかりは言えまい。菅義偉官房長官は16日の記者会見で「先方(沖縄県側)の要望を踏まえ、会談を行うことにした」と発表。打開に向け舞台を回す熱意を感じ取れなかった。
 翁長氏は会談で「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された」と、計画の撤回を求めた。
 安倍首相は普天間の危険性除去、沖縄振興策や負担軽減策に触れながら、「辺野古移設が唯一の解決策」と強調、移設の方針が揺るがないことをあらためて示した。
 初のトップ会談は平行線に終わった。計画に固執し、会談をステップにする形で作業を進め既成事実を積み上げるようでは、沖縄県民の感情を逆なでし、調整を遠ざけて根本的な解決をより難しくすることになるだろう。日米の同盟関係にも傷がつこう。
 政府と沖縄県の溝は深く、一度や二度の会談で、双方が歩み寄り、妥協が図られる課題ではない。ましてや調整を経ない30分ほどの話し合いで大きく進展するはずもない。
 一筋縄にはいかないことを覚悟し、政府は当面、建設に向けた海底ボーリング調査の作業を中断し、精力的に話し合いを重ねるべきである。
 会談を都合よく解釈し、地元に「礼は尽くした」と言わんばかりに事を急ぐような対応は避けねばならない。関係修復を閉ざし、解決不能の決定打になりかねないからだ。
 まずは会談を「終えた」と捉えるのではなく、米政府の理解も得つつ、落としどころを探る長い協議が「始まった」と受け止めたい。


中日新聞 東京新聞
翁長・首相会談 沖縄の声、米に伝えよ


 沖縄県名護市辺野古での米軍基地新設を阻止する翁長雄志知事の決意を、安倍晋三首相は誠実に受け止めたのか。単に聞き置くのではなく、訪米の際、オバマ大統領に直接伝えるべきではないか。
 翁長氏が昨年十一月の県知事選で初当選を果たして以来、初の首相との会談である。首相は、これまで会談実現に至らなかった非礼を、まずは猛省すべきだろう。
 翁長氏は首相に「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的民意が示された」「私は絶対に辺野古に新基地は造らせない」と、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古への県内「移設」を阻止する決意を伝えた。
 昨年の知事選や、辺野古容認に転じた自民党元職候補が県内四小選挙区のすべてで敗北した十二月の衆院選の結果を見れば、県内ではこれ以上の米軍基地新設を認めない県民の民意は明らかだ。
 県民を代表する翁長氏が、県民の意思を伝えるのは当然である。
 首相は翁長氏に辺野古への県内「移設」が「唯一の解決策だ」と述べた。方針を変えるつもりはないのだろう。翁長氏の訴えに耳を傾ける姿勢を示しただけで、本格着工に向けた作業をこのまま強行するのなら、あまりに不誠実だ。
 沖縄県民が米軍基地新設に反対する背景には、米軍統治時代に米軍用地を「銃剣とブルドーザー」で住民から強制的に収用した歴史や、在日米軍基地の約74%が今も沖縄に集中し、県民が重い基地負担を強いられている現実がある。
 首相に必要なことは、県民の理解を得て辺野古「移設」を強行することではなく、辺野古「移設」の困難さを認め、政府の責任で代替策を検討することだ。
 世界一危険とされる普天間飛行場を一日も早く閉鎖して、日本側に返還することは当然である。
 しかし、政府側が、辺野古「移設」を認めなければ普天間の危険性は残ると脅したり、辺野古を拒むのなら沖縄県側が代替案を出すべきだと迫るのは、翁長氏の指摘通り、あまりにも「理不尽」だ。
 首相は二十六日から訪米し、オバマ大統領と会談する予定だ。その際、翁長氏が言及した県民の率直な思いや苦難の歴史、沖縄の政治状況を伝えることも、首相の重要な職責ではないのか。
 首相が寄り添うべきは日本国民たる沖縄県民である。県民や知事の声に耳を傾け、まずは辺野古での作業を中止すべきだ。それが沖縄県民の信頼を回復するための第一歩である。


中国新聞
首相・沖縄知事会談 「対米ポーズ」では困る


 平行線は変わらなかった。安倍晋三首相と、沖縄県の翁長雄志知事との初会談である。知事が就任して4カ月、遅まきながらも顔合わせが実現した。
 首相からすれば月末のオバマ米大統領との首脳会談を前に、対話姿勢をアピールしておきたい思惑もあろう。話し合いができた点はよしとしたいが、単なる対米ポーズに終わらせるなら許されない。政府として沖縄の声をきちんと聞いていく新たな出発点にすべきであろう。
 会談の内容を見る限り、双方の立ち位置や考え方に相当の隔たりがあることを、あらためて感じざるを得ない。

 首相は米軍普天間飛行場を名護市辺野古沖に移設する計画について、あらためて理解を求めた。市街地にある普天間の危険を除くためには辺野古移設が唯一の解決策だと、従来の見解を繰り返した。つまり沖縄にとっては「ゼロ回答」だろう。 これに対し、翁長氏は「私は絶対に辺野古に基地を造らせない」と撤回を求めた。「自ら土地を奪っておきながら、嫌なら代替案を出せというのは理不尽だ」と強調した。
 対話の継続こそ合意したものの、依然として事態打開には程遠い状況である。
 その原因は、やはり政府側にある。首相は「これからも丁寧に説明し、理解を得るべく努力する」と述べたが、まっとうな話し合いをするつもりなら、まず相手が嫌がることをやめてからが筋ではないか。
 海上作業によってサンゴ礁が損傷した問題をめぐり、国と県の対立が深まっている。まず必要なのは辺野古沖の埋め立てに向けた作業を当面、見合わせて交渉の土台をつくることだ。
 それに限らず安倍政権はこれまで沖縄の神経を逆なでするような姿勢を取ってきた。前知事による埋め立て承認の是非を争点にした知事選で翁長氏が圧勝してもどこ吹く風だった。沖縄から見れば「上から目線」にほかならない高圧的なスタンスをはっきりと改めるべきだ。
 一方、きのうの会談で米国を巻き込む問題が再びクローズアップされたのは確かだろう。前知事が承認の前提として国と約束した普天間飛行場の2019年2月までの運用停止である。日米協議の場で米国から「空想のような見通し」と批判が出たという。少なくとも日本側が強く働きかけた節はない。なのに首相は「引き続き全力で取り組む」と述べた。この問題においても従来のような不誠実な姿勢を続けるなら、沖縄の不信感がさらに強まることを政府側は十分に認識すべきだ。
 沖縄戦終結から70年。原点から向き合うべきは日本の安全保障政策が沖縄の犠牲の上に成り立ってきた現実ではないか。戦後は日本の国土の0・6%という狭い島に米軍専用施設の74%が集中するほどの過剰な基地を押し付けたままだ。こうまで住民に負担を強いながら、安全保障政策は国の専管事項だからと基地の地元自治体が口を挟めないどころか、民意が封殺されることがこれ以上許されるのか。
 政府側は首相と知事が頻繁に会うのは困難というが、厳しい状況だからこそ直接対話が意味を持つ。例年首相が出席する6月23日の沖縄慰霊の日も近い。こうした機会もとらえ、膝詰めの議論を重ねてほしい。


西日本新聞
首相と沖縄知事 痛みへの共感が第一歩だ


 次につながる有意義な会談だったのか。それとも、単なるセレモニーに終わったのだろうか。
 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう、首相官邸で会談した。2人が会談するのは、昨年12月に翁長氏が知事に就任して以来、初めてのことである。
 懸案の米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設問題で、安倍首相が「(名護市)辺野古への移転が唯一の解決策と考えている」と辺野古移設に理解を求めたのに対し、翁長知事は「私は絶対に辺野古に基地は造らせない」と応じ、あらためて拒否の姿勢を鮮明にした。
 会談が平行線に終わるのは予想されていたことだ。最も気になるのは、この会談が安倍首相と翁長知事との信頼関係構築の第一歩となったか、という点である。
 安倍首相がここへ来て翁長知事との会談に応じたのは、26日からの訪米日程が迫っていることが理由の一つとされる。オバマ大統領との首脳会談を前に、普天間移設に積極的に取り組んでいる姿勢をアピールしたい-。政権側にはそんな思惑があったのではないか。
 もし首相の知事説得が米国向けのポーズで、本音は沖縄の反対を意に介さず、強引に移設を進めるつもりなら、その底意は沖縄側に簡単に見透かされるだろう。
 翁長知事は、普天間飛行場が米軍占領下で強制的に用地を接収され、日本政府が追認した経緯を念頭に「土地を奪っておきながら、世界一危険だからとか言って(移設先を)沖縄が負担せよ、嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と訴えた。
 安倍首相が最初にすべきなのは、極端な基地の集中と日米地位協定がもたらす数々の理不尽によって、沖縄の人々が日々感じている痛みと怒りに、心からの共感を示すことではないだろうか。
 安倍首相には日頃、自分と違う意見を切り捨てるような言動が目立つ。それでは相手との間に信頼が生まれず、困難な課題をともに解決していく道筋もつかない。
 首相の沖縄への共感こそが、普天間問題解決の大前提だ。



【地方紙】

秋田魁新報
安倍・翁長会談 解決へ何度でも対話を


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が初めて会談した。安倍政権と沖縄県の対話は、5日の菅義偉(よしひで)官房長官と翁長氏の会談に続き2度目だ。
 辺野古移設を進めたい政権と、断固拒否する沖縄県の主張は再び平行線をたどった。可能な限り何度でも対話を重ね、解決への糸口を見いだすべきだ。
 首相は会談で、菅氏と同じく辺野古移設を「唯一の解決策」とし「丁寧に説明し、理解を得るべく努力したい」と述べた。翁長氏は「絶対に辺野古に基地は造らせない」と反論。「(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは理不尽」と応じた。
 翁長氏は昨年11月の知事選で辺野古移設反対を訴え、移設を容認した前知事を退けて初当選した。政権は翁長氏との対話を避け続け、移設に向け沖縄防衛局が進める辺野古沿岸部の海底作業をめぐって沖縄県との対立を深めた。そうした中で行われたのが、5日の菅氏と翁長氏の会談だった。
 この会談でも主張は全くかみ合わなかった。対話継続では一致し、翁長氏が首相との会談を求め、菅氏が検討するとしたのが数少ない成果だった。
 菅氏に続き首相も翁長氏との会談に応じたことで、沖縄県側に一定の配慮を示したように映る。
 ただ首相が翁長氏との会談を決めた背景には、政権が沖縄県の理解を得るため意を尽くしていると米国にアピールする狙いがある。
 首相は26日に訪米する。首脳会談などを通じ、日米同盟関係の強化を発信したい意向だ。沖縄県民の政権不信が反米感情の高まりに発展するのではないかという米国の懸念を、訪米前に少しでも払拭(ふっしょく)したい考えだ。
 翁長氏もそうした意図は見抜いている。首相との会談で「県民は移設に明確に反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」と要望した。政権の言い分のみを伝えることがないよう、くぎを刺した。
 首相には日米合意に基づく辺野古移設という崩せない枠組みがある。翁長氏は知事選に加え、沖縄県の4小選挙区全てを移設反対派が制した昨年の衆院選の民意を背負っている。
 普天間の「危険性除去」について首相は「われわれも沖縄も思いは同じ」と述べた。しかし問われているのは、普天間の代替施設を沖縄県内に新たに造ることの是非である。日米合意の再考にまで踏み込まなければ、政権と沖縄県の歩み寄りはあり得ない状況だ。
 翁長氏は「辺野古移設が唯一の解決策という固定観念に縛られず、作業を中止してほしい」と訴えた。政権にとって辺野古移設以外の選択肢は、本当に考えられないのか。沖縄県の願う「基地負担軽減」が何を指すのか、政権はいま一度、見詰め直す必要がある。


岩手日報
安倍・翁長会談 「なぜ」に明解な説明を


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止を目指す翁長雄志知事が昨年12月の就任以来、再三にわたり要望してきた安倍晋三首相との会談が実現した。
 結果は予想通りというべきか、双方の主張は平行線。菅義偉官房長官が語る通り、会談そのものに意義は認められるにせよ、首相訪米を目前に米側への顔向けを意図したセレモニー的な意味合い以上の成果は見いだせない。
 今月初めの翁長氏と菅氏の初会談では、菅氏の方が沖縄を訪れた。「(移設計画を)粛々と進める」との菅氏の物言いに、翁長氏が「上から目線」と反発するなど、政府側には分が悪かった。
 今回、知事が官邸に国権の最高権者を訪ねたのは、国策に物言う立場の礼儀には違いない。しかし事態をこじれさせた原因は民主党政権下、鳩山由紀夫首相の「最低でも県外」発言の撤回を典型として国政の側にもある。
 知事選はもとより、同県内の各種選挙で示された直近の民意は「反・辺野古」一色。「県外移設」の従来の主張を辺野古容認に変えた前知事の判断に反発が強いのに、それをよりどころに「既定路線」で押し切っては一層こじれるのも道理だ。
 政府が本気で「辺野古移設しかない」と確信するなら、かつて辺野古移設を初めて打ち出した橋本龍太郎政権がそうだったように、今後は首相自身も足しげく沖縄を訪れ、地元住民に直接的に真意を語る努力を強く求めたい。
 鳩山発言の変節で、現地では「県民の被差別意識は、かつてないほど高まっている」と聞いたものだ。県民の意思とは無関係に方針転換した前知事への反発も、それを根拠に移設作業を強行する国への反発も、底流には沖縄の民意が軽んじられることへのやり切れなさがあるだろう。
 翁長氏が「嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」と言う時、対面する首相の向こうに本土住民の意思を見ているのは想像に難くない。政府との亀裂は本土との亀裂に等しい。
 民主党政権の2012年6月から12月まで防衛相を務めた森本敏氏は、退任前の会見で普天間移設について、辺野古案は軍事的、地政学的な理由ではなく政治的都合-との見解を述べた。「他に移設先があれば、沖縄でなくてもよい」との考え方だ。
 「なぜ沖縄なのか」という疑問は一人政府のみならず、戦後70年の節目に立つ本土住民に等しく跳ね返る。ここを説明できないままに計画を推し進めるのは、国と国民の信頼関係に関わって重大な禍根を残すだろう。政府は移設作業より説明責任を優先させるべきではないか。


新潟日報
首相・翁長会談 沖縄の痛み踏まえてこそ


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が17日、首相官邸で初めて会談した。
 宜野湾市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設と、沖縄県内に集中する米軍基地の負担軽減を話し合った。
 互いの主張の隔たりは大きく、議論はかみあわなかった。
 それは半ば予想されていた。大事なのはここを入り口として政府が沖縄の声に真剣に耳を傾け、問題の打開に向けて汗を流す気持ちを固めることだ。
 翁長氏は移設阻止を掲げて知事選に勝利し、昨年12月に知事に就任していた。
 県内の衆院選小選挙区や名護市長選の結果と合わせて考えれば、沖縄県の移設反対の民意は明確になったといえる。
 政府は、辺野古現地での反対運動を突いて移設に向けた海底作業を続けてきた。翁長氏と面会しようとせず、その硬直した姿勢が問題視された。
 4月5日にようやく菅義偉官房長官が那覇市で翁長氏に会った。
 話は平行線に終わったが、対話の継続は確認した。その場で翁長氏が要請した安倍首相との面会が今回実現したのだ。
 ただ会談の中身そのものは、政府と沖縄県の信頼関係を構築する道がはるかに遠い現実を実感させるものだった。
 首相は辺野古移設を「唯一の解決策」と言って譲らず、「普天間飛行場の一日も早い危険性の除去は、われわれも沖縄も思いは同じだ」と強調した。
 県外への移設を訴えている翁長氏は「選挙で圧倒的な民意が示された」と明確な反対姿勢をあらためて伝えた。
 沖縄の民意に向き合おうとしてこなかった政府への不信感をあらわにした。
 加えて、土地を奪われて基地にされ、移設が嫌なら代替案を出せなどと言われることの理不尽さを強く訴えた。
 問われているのは、一つの基地の移転の是非ではない。
 戦後の沖縄が有無を言わさず背負わせられてきたこの「理不尽」に目を向けて初めて、話し合いの糸口が得られよう。
 政府に求められるのは誠実に沖縄の痛みに思いを致す態度だ。選挙の敗北や辺野古移転の日米合意に固執し、大局を見失うようなことがあってはならない。
 安倍首相は訪米で日米同盟の強化を発信するのだという。辺野古移設問題の前進が、そのためには欠かせないはずだ。
 民主的な手続きと努力を米側に強調したい狙いもあろう。そうした政治的計算だけが際立てば、さらに反感を買う。
 翁長氏は首相訪米に向けて「県民は辺野古移設に明確に反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」と要請した。
 政府の思惑を承知の上で、この時期の官房長官、首相との面談に乗った知事と沖縄県民の思いをくむべきだろう。
 辺野古移設、スケジュールありきの議論から脱し、一度立ち止まって考える時だ。


信濃毎日新聞
首相と沖縄 痛みを理解しているか


 日米両政府が進める米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事が初めて会談した。
 首相は辺野古移設が「唯一の解決策」とし、知事は「知事選、衆院選で移設反対の圧倒的な民意が示された」と訴えた。菅義偉官房長官との会談同様、平行線となった。
 市街地にある普天間の危険除去を急ぐのは当然としても、辺野古移設が唯一の解決策なのか。日米両政府から納得いく説明は聞かれない。双方の政府に欠けるのは、戦後長きにわたって過重な基地負担を強いられてきた沖縄の歴史に対する理解である。
 移設ありきでなく、他の選択肢がないかも含め、柔軟な姿勢で議論をし直すべきだ。
 翁長氏が求めた直談判を首相側が突然受け入れたのは、丁寧に移設に取り組んでいることをアピールする狙いがありそうだ。今月下旬に首相の訪米が控えていることとも関係する。
 首相は会談で移設に関し、「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と述べた。
 対話姿勢を演出したものの、実態は違う。政府は反対する住民を力で排除し、環境への配慮は二の次で移設に向けた作業を進めている。国家権力をかざす政権の体質が表れている。
 沖縄の日米両政府への不信感は根深い。菅官房長官と会談した際、翁長氏は政府の姿勢を、米占領下の強権的な統治責任者になぞらえ「問答無用という姿勢が感じられる」と批判した。
 先の戦争では本土防衛の「捨て石」とされた。戦後は、「銃剣とブルドーザー」と例えられる米軍の強制的な土地収用によって基地が建設されていった。こうした歴史や体験は、平和教育などで今に引き継がれている。
 沖縄の人々にとって辺野古移設は、つらい過去と重なる部分があるのではないか。
 翁長氏は首相に、「自ら土地を奪っておきながら、(普天間が)老朽化したとか、世界一危険だからとか、(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは理不尽」と語った。日米両政府の無神経な姿勢を痛烈に批判している。
 安倍政権の対話姿勢がポーズだとしたら、不信感はさらに募るだろう。翁長氏は訪米して民意を伝える準備も進めている。
 基地問題に関しては、沖縄の痛みにどれだけ寄り添えるかが問われている。日米の首脳は肝に銘じてもらいたい。


福井新聞
首相、沖縄知事会談 「負担軽減」は基地撤去だ


 安倍晋三首相がようやく沖縄県の翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、国と地元対立が深刻化。閣僚らからは信頼関係の構築に期待する声もあるが、会談で溝が深まった。今後、基地撤去を願う「オール沖縄」の叫びは一段と強まるだろう。
 会談で首相は辺野古移設が「唯一の解決策だ」と、政府の基本方針を強調。翁長氏は「受け入れたという認識は間違いだ。知事選、衆院選で移設反対の圧倒的な民意が示された」と反論し、沖縄防衛局が進める移設に向けた海底作業の中止を求めた。
 翁長氏が昨年12月に知事就任して以来、首相との会談を希望してきたが官邸は無視。この5日にようやく会談した菅義偉官房長官は移設を「粛々と進める」と従来通りの言葉を繰り返し、「上から目線だ」と知事の怒りを買った。
 そもそも、この時期に急きょ会談が決まったのは、26日からの訪米を前にした首相の「実績づくり」なのは明らかだ。「沖縄軽視」の批判をかわし、問題解決に努力している姿勢を米側にアピール。その上で移設遂行に変更はなく、日米同盟強化に揺るぎがないことを示すのが狙いだろう。
 翁長氏は官邸戦略に利用されたように見えるが、むしろ確固たる反対の意思を示す好機ととらえたのではないか。「県民の反対をオバマ大統領に伝えてほしい」と不退転の決意で強調したのは印象的だ。
 各種選挙結果が示すように、沖縄の民意は「基地反対」である。首相がいくら基地負担軽減と沖縄振興を強調しても理解されないのは当然だ。辺野古移設は「軽減」にならず、基地そのものが「ノー」である。
 先の大戦で日米決戦の場となり、一般住民だけでも10万人近く犠牲になった悲劇の島だ。戦後70年たった今でも国益の「捨て石」と住民は言う。翁長氏が菅会談で述べたように「沖縄県が自ら基地を提供したことはない。強制接収された」のが歴史の事実だ。
 国全体の0・6%にすぎない県土に米軍専用施設の約74%が集中。米兵による女性暴行や傷害事件が相次ぎ、普天間隣接地でヘリ墜落事故も起きた。土地は無条件で返還すべき―これが沖縄の「清算」であろう。
 翁長氏は「自ら土地を奪っておきながら老朽化したとか、世界一危険だからとか、(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」「私は絶対に辺野古に基地は造らせない」と言い切った。
 辺野古へ移設すれば基地が要塞化する懸念も強い。日米軍事専門家の間でも沖縄の地理的優位性に疑問を投げかけ、ミサイル攻撃の標的になる危険性を指摘する声さえある。果たして「この道しかない」という安倍政権のワンフレーズ・ポリティクスがどれだけ説得力を持つのか疑問だ。


京都新聞
安倍・翁長会談  「唯一の解決策」超えて


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう官邸で会談した。昨年12月に翁長氏が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設計画阻止を掲げて就任してから初めてだ。
 翁長氏は、これまで再三に渡って面会を求めてきたが実現しなかった。首相が一転して応じたのは、26日からの訪米を前に、沖縄と対話する姿勢をアピールし、摩擦の激化を緩和したい思惑からだ。
 結果は、今月5日の菅義偉官房長官と翁長氏の会談に続き平行線に終わったが、対話の継続では一致した。直接対話を事態打開につなげられるかどうかは、政府側が沖縄の声をどうくみとるかにかかっている。首相には、形だけの対話に終わらせない真摯(しんし)な努力を求めたい。
 会談では、辺野古移設について首相が「唯一の解決策だ」と述べたのに対し、翁長氏は「(過去の沖縄が辺野古移設を)受け入れたという認識は間違いだ。知事選、衆院選で反対の圧倒的な民意が示された」とあくまで反対する考えを主張した。
 首相はまた「普天間飛行場の一日も早い除去は、われわれも、沖縄も思いは同じだ」と強調。その上で理解を得るべく努力を続けたいとしたが、翁長氏は「普天間飛行場も、それ以外の基地も、銃剣とブルドーザーで強制接収された。土地を奪っておきながら、(移設が)嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と強く反発した。さらに米国に直接、移設断念を働きかける意向も示した。
 戦争末期、地上戦で県民の4人の1人が犠牲になった沖縄は、終戦から1972年の本土復帰まで27年間、米軍に占領された。この間、多くの土地が強制収用され、今も国内の米軍専用施設の約74%を背負い続ける。その苦難の歴史と県民感情に正面から向き合わない限り、答えを出すのは難しい。
 首相がなすべきことは、辺野古移設の日米合意を優先するばかりではなく、沖縄の思いを米側にきちんと伝えた上で解決の道を探ることだ。その意味で今度の訪米はいい機会だ。
 政府は沖縄との溝を埋める努力がいる。そのためには、沖縄防衛局が進める移設への作業をいったん止め、冷静に対話ができる環境をつくる必要がある。地元の理解と信頼関係なくして、安定した安全保障は望めない。民意に耳を傾け、「唯一の解決策」を超える道を探らねばならない。


神戸新聞
沖縄と基地問題/米国との関係が最優先か


 安倍晋三首相はきのう、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事と会談した。
 昨年12月に翁長氏が知事に就任して以来、国と県のトップによる初の直接対話となったが、約35分の話し合いはすれ違いに終わった。
 無理もない。翁長氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に真っ向から反対する。それが衆院選や知事選などで何度も示された沖縄の民意だからだ。
 これに対して首相は、辺野古移設を普天間飛行場の危険性を除去する「唯一の解決策」とする。会談でもそうした政府の考えを伝え、計画通り進める方針を強調した。
 首相は「危険性除去への思いは同じ」とも述べたが、翁長氏は「絶対に基地は造らせない」と譲らない。これでは完全な平行線である。
 沖縄には米軍専用施設の74%が集中する。県内での「たらい回し」は理不尽だと沖縄の人たちは憤る。その思いを政府が受け止めない限り、打開の道は開けない。
 翁長氏の言うように、まず工事を止めて対話を重ねるべきだ。
 翁長氏は先日、菅義偉官房長官と会談し、「移設反対」を明言した。その際に首相との会談の早期実現を併せて申し入れていた。
 首相は26日から米国を訪問する。その前に会談に応じたのは、問題解決に努力する姿勢を米国に示す狙いがあったとされる。
 一方で、首相は辺野古移設について、先日来日したカーター米国防長官に「確固たる決意の下で進める」と語っている。沖縄との対話が形だけのものなら、「アリバイづくり」と批判されても仕方がない。
 国民の声にじっくり耳を傾ける。何より地元の民意を大切にする。それが政府の取るべき対応だ。米国との関係を最優先するような姿勢には誰もが首をかしげるだろう。
 安全保障法制の与党協議についても同じことが言える。集団的自衛権の行使を可能とする「存立危機事態」など、耳慣れない言葉ばかりが次々に飛び交い、とても議論が熟しているようには思えない。
 27日に日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定で米国と合意するため検討を急いでいるというが、国民への説明や国会審議は後回しだ。
 国民を守るための議論で、肝心の国民が置き去りにされる。一体、誰のための「安保」なのか。


山陰中央新報
首相・沖縄知事会談/事態打開のきっかけに


 安倍晋三首相が沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事と官邸で会談、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設について意見を交わした。両氏の会談は、昨年12月に翁長氏が移設阻止を掲げて就任して以来、初めて。翁長氏の求めに首相が応じていなかったためだ。話し合いは平行線だったようだが、会談が実現したのは一定の評価ができる。
 翁長氏と政府側は、辺野古移設に向けた海底作業をめぐり対立が激化していた。会談を26日からの首相の米国訪問に合わせた「沖縄県と話し合いをしている」というアリバイづくりに終わらせず、事態打開のきっかけにすべきだ。
 会談の中核的な部分は、首相が普天間飛行場の辺野古移設を「唯一の解決策だ」という認識をあらためて示したのに対して、翁長氏が「辺野古移設が唯一の解決策という固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と要請したやりとりだろう。
 宜野湾市の市街地にある普天間飛行場の危険性を除去するには「辺野古移設が唯一の解決策」というのは、日米両政府の原則的な考えだ。首相に先立って沖縄県を訪問して翁長氏と会談した菅義偉官房長官も、同じ表現で翁長氏に伝えている。
 この考えを日米両政府の「固定観念」と位置付け、「県外移設」など他の方策の検討と移設作業の中止を求める翁長氏に対して首相が伝えた結論は「ゼロ回答」だったようだ。
 「普天間飛行場の一日も早い危険性の除去はわれわれも、沖縄も思いは同じだ」「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」などと述べているが、要は「辺野古移設を容認してほしい」ということだからだ。
 日米両政府が普天間飛行場返還で合意したのは今から約20年も前の1996年4月だった。前年起きた米兵による少女暴行事件をきっかけに高まった県民の反発が、日米両政府の背中を後押しした。
 その後、日本政府は99年12月に名護市辺野古への移設を閣議決定、曲折を経て、安倍政権による名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を2013年末に仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が承認。昨年8月に海底ボーリング調査を開始したが、11月、県知事選で翁長氏が当選。直後の衆院選では、県内4小選挙区で辺野古反対派候補が全勝した。
 また昨年1月には、移転先の名護市の市長選で辺野古移設反対の稲嶺進氏が再選してもいる。会談で翁長氏が、「過去の沖縄が辺野古移設を受け入れた」とする政府側の一部主張を「間違いだ。知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された」と指摘したのは、こうした経緯を踏まえたものだ。
 しかし、首相がこの時期に翁長氏との会談に応じたのは「辺野古移設反対の圧倒的な民意」を受け止めたからではなさそうだ。訪米を控え、翁長氏側との対立激化を避けたい意向があったとみられる。
 「県民は明確に反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」という翁長氏の要請は、首相に単なるメッセンジャー役を期待してのものではないはずだ。まず首相が沖縄側に立って「固定観念」を捨て、米国と向き合ってほしいという願いが込められている。


愛媛新聞
首相と翁長知事会談 民意くみ真摯な対話を続けよ


 安倍晋三首相と、沖縄県の翁長雄志知事との初の会談が急きょ実現した。
 平行線に終わったが、ようやくの初めの一歩である。形式的に「会って終わり」では意味がない。今後も民意を丁寧にくみ、一方的でない真摯(しんし)な対話を続けていくことを、政府に強く望む。
 米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐっては、何が何でも進めたい国と、昨年の全ての選挙で反対派が当選し、移設に明確な「ノー」を突きつけた沖縄県の民意との隔たりがあまりに大きい。溝は簡単には埋まるはずもないが、それでもまずは直接膝を交えて「沖縄の声」に耳を傾け、基地負担軽減の道を探る努力を重ねることが国の責務であり民主主義の要諦であろう。
 にもかかわらず首相は、昨年12月の知事就任以降、真っ先に対話すべき翁長氏との面会をかたくなに拒否。今月の菅義偉官房長官との会談を受け、やっと対面した。異様な態度というほかはなく、隠そうともしない強硬姿勢に強い失望と憤りを覚える。
 その会談も、単に「首相の都合」であろうことは想像に難くない。急な実現は、今月26日からの米国訪問を控え、地元説得に努力する姿勢をアピールしたい思惑によることは明らか。しかし米側も、辺野古移設については「沖縄に日本政府が説明を尽くすなど民主的な手順を望んでいる」(日米外交筋)とされる。まず自国民に誠実に向き合おうとせず、対米追従を強めるだけでは、日本だけでなく米国の信頼さえも失いかねない。
 首相は会談で「丁寧に説明し、理解を得る努力を続けたい」としながらも、辺野古移設が「唯一の解決策だ」との従来の主張を繰り返した。菅氏が早くも「頻繁な会談は困難」との認識を示しており、会談の継続自体も危うい上、「辺野古ありき」で民意を一顧だにしないのでは、到底対話の名には値しない。
 普天間飛行場の危険性除去はむろん、急がねばならないが、辺野古では沖縄の負担は全く減らない。県内移設が唯一の代替策で、拒否すれば普天間は「固定される」と脅すような政治手法に「ノー」が叫ばれている現実を、もっと重く受け止めるべきだろう。
 「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」―。翁長氏の訴えは、痛切にして正鵠(せいこく)を射る。
 終戦後27年も米軍に占領され、強制的な土地収用で国内の米軍専用施設の約74%が集中する沖縄の苦難の歴史を、いま一度省みたい。将来も、過大な基地負担を沖縄だけに背負わせ続けることのないよう、熟慮の政治を求めたい。


高知新聞
【安倍・翁長会談】 硬直思考では平行線だ


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題をめぐって初めて会談した。
 昨年12月に翁長知事が就任して以来、5日に菅官房長官と初会談したのに続き、やっとのことで首相との対話が実現した。この間、政府の翁長氏に対する態度は冷淡だった。
 辺野古移設を進める政府と、それを阻止しようとする沖縄県のトップの対話は大切なことだ。ただ会談は予想通り平行線に終わった。
 会談で翁長氏は「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか(移設が)嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と語った。
 「銃剣とブルドーザー」と例えられる沖縄の過酷な歴史を踏まえた、重い発言である。翁長氏はさらに今月下旬の首相の訪米をにらみ、「県民は明確に(移設に)反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」と迫った。
 しかし首相は、辺野古移設が普天間飛行場の危険を除去する「唯一の解決策」だと、判で押したようないつもの言葉を返した。これでは「丁寧に説明し、理解を得たい」と言っても、結論ありきで二の句が継げまい。
 昨年の沖縄県知事選、名護市長選、衆院選小選挙区では、いずれも反対派が勝利した。翁長氏は圧倒的な沖縄の民意に支えられている。「唯一の解決策」という硬直した思考で、切り捨てられるものではあるまい。
 最近の本紙に、かつて米国防次官補代理として沖縄返還交渉に携わったモートン・ハルペリン氏の評論が掲載された。氏は辺野古移設に関し「日本政府が民意を黙殺している」とし、民意を無視して造った基地に「安定的な将来はない」と警告する。
 氏はまた「唯一の解決策」にも疑問を投げ掛ける。海兵隊基地を置く場所として沖縄以外の東アジア地域や米国内の基地など、他の選択肢も考慮し、日米が真剣に検証すべきだという。
 ハルペリン氏ばかりでない。有力な現役上院議員らから辺野古移設は「非現実的」と異論が出たり、沖縄への基地集中を危機管理の面から問題視したりする意見もある。
 米国は民主主義のプロセスを誇りとする国だ。首相は日米首脳会談でありのままの沖縄の現実を、オバマ大統領に伝えることが必要だろう。


熊本日日新聞
首相・翁長氏会談 旧来の発想抜け出す時だ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、安倍晋三首相は17日、沖縄県の翁長雄志知事と官邸で初めて会談した。
 首相は翁長氏に、普天間の危険性除去の観点などから辺野古移設が「唯一の解決策」と強調。普天間の5年以内の運用停止という仲井真弘多[なかいまひろかず]前知事との合意も「生きている」とした。これに対して翁長氏は「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された。絶対に辺野古に基地は造らせない」と述べ、移設作業の中止を求めた。26日からの首相訪米の際、オバマ大統領に沖縄の民意を伝えてほしい、とも要請した。
 首相は会談で「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と述べた。菅義偉官房長官も「沖縄県との話し合いを進めていく」としている。話し合いを継続することは重要だ。ただ、そのためには政府が再開した海底ボーリング調査の中止が前提となろう。
 沖縄防衛局は立ち入り禁止区域を示すブイなどの重りとして最大45トンの大型コンクリート製ブロックを設置。翁長氏は、ブロック投入で岩礁破砕の許可区域外のサンゴ礁を損傷した可能性が高いとして、作業停止を指示した。一方、防衛局の不服申し立てを受けた林芳正農相は、知事が出した指示の効力の一時停止を決定。防衛局は6月末まで調査を続け、夏にも埋め立てに着手する方針だ。
 だが、有識者でつくる防衛局の「環境監視等委員会」では、ブロック設置に対して「社会的影響が大きかった」などの批判や疑問が続出した。ブロックによる損傷が確認されたサンゴ94群体のうち9割超が、県の許可区域外にあったことも分かった。県が米側に潜水調査の許可要請を強める可能性もある。県が設置した有識者委員会による前知事の埋め立て承認の検証も続いている。あくまで政府が調査を続行するというなら、冷静な話し合いは期待できまい。
 なにより、辺野古移設に反対する民意の根底に、沖縄の苦難の歴史があることを忘れてはならない。日米安全保障条約の下、日本が平和を享受し、高度経済成長を遂げた陰で、沖縄は過重な基地負担に苦しみ続けてきた。
 安倍首相は、日米の同盟関係強化を名目に集団的自衛権の行使を容認した。米国の日本防衛義務のみを規定した安保条約は片務的であるとして、「対等なパートナーシップ」を目指す。だが、それを言うなら、沖縄との関係こそ「片務的」ではないか。沖縄に基地を押し付けることで、日本の安全を図ろうという考えがあるとするなら、そんな旧来の発想から抜け出す時ではないか。
 第2次大戦の戦勝国が占領時と同じように大規模な駐留を続けているのは日本だけだ。抑止力の必要性を否定はしない。だが、そのためにはどの程度の規模の駐留が適当なのか、他の道はないのかを米側とあらためて協議してこそ、首相が言う「戦後以来の大改革」にふさわしいのではないか。


南日本新聞
[辺野古会談] 国は誠実に対話続けよ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と翁長雄志知事がきのう、初めて会談した。
 建設阻止をあらためて訴えた知事と、移設に理解を求めた首相の意見交換は平行線のままで終わった。予想された通りの展開といえる。
 移設建設を強引に進める政府に対して、沖縄県民は反発を強めている。政府は沖縄との対立の溝を埋める努力を惜しんではならない。今後も誠実に対話を重ねるべきだ。
 翁長氏は会談で、「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された」と強調し、県外移設を求めた。首相は普天間飛行場の危険性を取り除く「唯一の解決策」というこれまでの政府方針を伝えた。在日米軍基地の負担軽減にも言及した。
 今回の会談は5日に行われた菅義偉官房長官と翁長氏の対話を受け、翁長氏の要請に応える形で実現した。首相と知事の主張に隔たりがあったとはいえ、直接対話した意味は大きい。
 ただ、首相らが沖縄県民の民意に真摯(しんし)に向き合おうしたかといえば、疑問符が付く。移設に向けた対話の実績づくりの意図が透けるからだ。
 翁長氏が知事就任以来4カ月間にわたり求めてきた協議を、政府は拒んできた。会談には「沖縄軽視」という批判をかわす思惑があったのは間違いなかろう。
 さらに問題なのは、地元より対米関係を優先させる姿勢がうかがえることだ。
 首相は今月来日したカーター米国防長官に「(辺野古移設を)確固たる決意の下に進めていく」と表明した。官房長官が沖縄との対話を継続すると表明してからわずか3日後である。
 沖縄県民に対して著しく配慮を欠いた発言である。沖縄の民意を軽んじているとしか思えない。
 首相は26日から訪米する。オバマ大統領と会談し、日米同盟の強化を世界に発信する方針である。今回の会談を辺野古問題解決へ努力する姿勢のアピールに利用しようとしているのなら、沖縄の怒りはますます増幅するに違いない。
 「上から目線」と翁長氏が政府を批判して以降、長年基地負担に苦しんできた県民にさらに共感が広がっているという。安倍首相が今向き合うべき相手は米政府ではない。
 辺野古埋め立てに向けた作業を続けたままで、沖縄側と冷静な対話はできない。政府は直ちに工事を止め、信頼醸成に努めるべきだ。


琉球新報
知事首相会談 「圧倒的な民意」は明白 辺野古断念こそ現実的だ


 知事の言葉一つ一つに県民の思いが込もっていた。歴史的な会談と評価していい。
 翁長雄志知事が安倍晋三首相と会談した。何より最後の一言が大きい。知事は、米軍普天間飛行場の辺野古移設について「知事をはじめ沖縄県民が明確に反対していることをオバマ大統領に伝えてほしい」とくぎを刺したのだ。
 この会談を首相は「移設へ向けた進展」と米国へ説明する材料に使うと目されていた。知事はそれを警戒したのだろう。この発言でそんな偽装は不可能になった。
 首相は会談を新基地建設の免罪符に使ってはならない。知事の言う通り移設作業を中止すべきだ。
「固定観念」
 首相はこの日も「辺野古(移設)が唯一の解決策」と繰り返した。知事選、市長選、衆院選で反対派が全勝した昨年の選挙は、まさに知事が述べた通り「圧倒的な民意」である。その県民の度重なる意思表示を経てもなお、「辺野古が唯一」と繰り返すのは、知事の評した通り「かたくな」だ。民主国家にあるまじき姿勢である。
 知事は「(辺野古が唯一という)固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と求めた。民意に照らし当然の要求だろう。
 現防衛相の中谷元氏は昨年、「沖縄の基地を分散しようと思えば九州へも分散できるが、反対が大きくてできない」と述べていた。他県は反対があるから移設しないが、沖縄はいくら反対しても移設を強行するというわけである。これがダブルスタンダードでなくて何であろうか。
 元防衛相の森本敏氏も同じ趣旨のことを在任中に述べている。最近も「海兵隊が沖縄にいなければ抑止にならないというのは軍事的には間違いだ」と明言した。県外移設でも何ら支障がないことを担当大臣の発言は証明している。首相らの言う「辺野古が唯一」論はとうに破綻しているのである。
 菅義偉官房長官が繰り返す「16年前に沖縄も同意した」という主張のウソを知事が指摘したのも痛快だった。
 1999年に閣議決定した計画は、政府が2006年に破棄し現計画に変更した。政府自ら破棄しておいて「16年前に同意」とは詐称に等しい。
 しかも16年前は、軍民共用でかつ15年後には基地として使用してはならないというのが絶対条件だった。使用期限が受け入れられなければ容認は撤回すると当時の市長も明言していた。
 だが現計画になり、軍民共用も使用期限も雲散霧消した。これで「地元も受け入れていた」と称するのは虚言以外の何物でもない。
倒錯の論理
 16年前の計画も、使用期限は米側が同意する見込みがなかったから、いずれ計画が破綻するのは明らかだった。政府が閣議決定を破棄したのはそんな行き詰まりも背景にある。沖縄側が容認を撤回するのは時間の問題だったのだ。
 会談で首相は現計画が普天間の危険性除去になると強調した。
 だが辺野古移設では、県民の頭上を危険な物体が飛び、爆音をまき散らし、軍による犯罪が日常的に発生する事態は何ら変わらない。これが「危険性の除去」にならないのは、子どもでも分かる。
 普天間移設は沖縄の基地負担軽減がそもそもの出発点だったはずだ。基地を沖縄から沖縄へ移すのが解決策と主張するのは、どう見ても倒錯した論理である。
 政府は沖縄の反対が極論であるかのように言うが、普天間飛行場をなくしたところで、国内の米軍専用基地の沖縄への集中度は73・8%から73・4%へ、わずか0・4ポイント下がるにすぎない。これが過大な要求だろうか。
 世論調査では県民の6割から8割は常に県外・国外移転を求める。辺野古でいいとするのはせいぜい十数%だ。20年間もそうなのだから、今後も賛成が上回るなどあり得ない。辺野古新基地を断念することこそ現実的である。政府はその現実を直視すべきだ。


沖縄タイムス
[翁長・安倍会談]「辺野古」新たな段階へ


 翁長雄志知事と安倍晋三首相は17日、首相官邸で会談した。日米首脳会談を今月末に控え初めて実現した両者の会談である。翁長氏は、名護市辺野古の新基地建設に反対する沖縄の声をオバマ大統領に伝えるよう首相に要請した。首相はこれに応え、沖縄の民意をオバマ氏に正確に伝えなければならない。
 知事就任以来4カ月余り。ようやく訪れた安倍首相との直接対話の機会だった。翁長氏は、「絶対に辺野古に新基地は造らせない」と明言。1国の首相に対し、これほど毅然(きぜん)と「基地ノー」の意思を主張した知事はいただろうか。沖縄にとってきわめて意義深い、画期的な会談となった。
 翁長氏は、政府が前知事の埋め立て承認を唯一のよりどころとして移設作業を強行していることに「県外移設の公約をかなぐり捨てた承認」だと正当性に疑問を呈した。
 また「辺野古基地ができない場合本当に普天間は固定化されるのか」。5年以内の運用停止は「埋め立て承認というハードルを越えるための空手形ではないか」と政府を追及した。
 沖縄の米軍基地について「戦後、銃剣とブルドーザーで強制接収された」と、歴史的経緯や不平等性を訴え、「土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか、嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と強く反発した。戦後一貫して日米安保の過重な負担を押し付けられたウチナーンチュの思いを、明快な言葉で表現した。
 安倍首相が「辺野古への移転が唯一の解決策である」と従来の考えを繰り返したことについても翁長氏は異論を展開。「安倍首相は、固定観念に縛られず、まずは辺野古への移設作業を中止することを決断してほしい」と求めた。
 強力な政治のリーダーシップがあれば政策の変更は可能である。選択肢のない政策などあり得ない。これこそ翁長氏が5日の菅義偉官房長官との会談でも指摘した「政治の堕落」である。
 政府が、1999年に当時の稲嶺恵一知事と岸本建男名護市長の受け入れ表明を受け、閣議決定がなされたと移設の正当性を主張していることについても翁長氏は反論した。
 稲嶺知事は代替施設の軍民共用や15年使用期限、岸本市長も基地使用協定締結などを前提条件としていたが、その後、政府は県との協議もないまま閣議決定をほごにした。翁長氏は「前提条件がないことになり、受け入れたというのは間違いだ」と、政府の都合のいい解釈を断じた。
 政府は、日米首脳会談で確実に沖縄の声を米側に伝えるべきだ。もし伝えずに両政府が首脳会談で辺野古推進を確認するようなことがあれば、「沖縄切り捨て」と見ざるを得ない。沖縄の声を無視して移設を強行することがあれば逆に日米関係にさまざまなマイナスが生じるだろう。
 翁長氏は菅氏や首相との会談で沖縄の声を代弁し、求心力をこれまで以上に高めている。辺野古移設問題は新たな段階に入ったといえる。




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蛇足ながら個人的に印象に残った記述を。

河北新報
『会おうと思えば会える首相と知事の会談が大々的に報じられること自体、異常なことと言わざるを得ない。』


ああー、そうだよね。。ついうっかりしてしまう。知事と首相が会って話すのなんて何も特別なことではないのに、というか大きな問題を抱えているのだからすぐにでも会うべきなのに、4ヶ月も拒絶した末に、民意を気にして渋々会ったら「第一歩」だとか賞賛されたりすんのはおかしいでしょう。ジャイアンが今日はのび太をいじめなかったんだよスゲーみたいな。


岩手日報
『翁長氏が「嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」と言う時、対面する首相の向こうに本土住民の意思を見ているのは想像に難くない。政府との亀裂は本土との亀裂に等しい。』


「沖縄」と「政府」の2者間の問題のように捉える向きはまだまだ多い中で、「本土住民」である「我々」もこの問題の主人公ですよと、当事者として向き合う姿勢を示していて、真っ当だと思う。多くの社説は知ってか知らずかここら辺をぼかしててやや残念。でも少しずつ意識は変わってきてるしまだまだこれから。
逆に読売の『首相VS沖縄知事』のような扇情的な見出しからは、なんとか「沖縄の問題」として矮小化したい意図を感じて脱力。器が小さいね。


福井新聞
『国全体の0・6%にすぎない県土に米軍専用施設の約74%が集中。米兵による女性暴行や傷害事件が相次ぎ、普天間隣接地でヘリ墜落事故も起きた。土地は無条件で返還すべき―これが沖縄の「清算」であろう。』


おお、なんか回りくどい言い回しだけど、普天間は無条件撤去ときたもんだ。すごいぞ。
「いったん作業停止すべき」くらいまではどの新聞も言ってることで、「移設計画自体の見直し」も少し踏み込んだ新聞は言ってるものの、じゃあ普天間飛行場どうするのという具体策まではなかなか提示しないもの。
あと最近見たのでは、翁長、菅会談のときに愛媛新聞が「グアム」を主張してたくらいかな。この辺ももっとオープンにあーだこーだ言い合ったらいいね。
追記:よく読んだら北海道新聞も『辺野古移設とは別の方策を米国とともに模索するのが首相の責務である。県外、国外への移設を目指すのがあるべき道だ。』と県外、国外移設という見解。きたきた。


産経新聞
『首相をはじめ政府与党は、今後もさまざまな機会を通じ、翁長氏や沖縄関係者に、辺野古移設がなぜ唯一の解決策かを説くべきだ。』


これはちょっと意外。
辺野古への移設計画自体に合理的な理由がないことは既にあらゆる方面から看破されていて、政府がいう「丁寧な説明」など実際は不可能。「唯一の解決策」「前知事が埋め立て承認した」をオウムのごとく繰り返し工事作業をゴリ押し、沖縄なんか踏み潰せというのが政府の方針なわけで。
政府寄りの産経が政府方針から逸れて「丁寧な説明」をプッシュするのは相当業を煮やしているんだろうけど、こちらとしては大歓迎。どんどん言ってやってください。
それと、逃げずに堂々と自らの正当性を主張しようという姿勢はすばらしい。産経にも逃げ腰の政府は情けなく映るんだろう。


  



Posted by おちゃをのむ会 at 13:21Comments(0)辺野古

2015年03月28日

辺野古における政府の強行に関する全国の新聞社説比較

3月23日に沖縄県の翁長知事が、国に対して辺野古新基地建設の海上作業の停止命令を出した。重大な決断であり、「辺野古」問題は新たな展開を迎えたことになる。

それを受けて出された全国紙、ブロック紙、地方紙(県紙)の社説を並べてみる。一部、23日以前のものも含む。

参考: http://www.47news.jp/localnews/shasetsu/
     http://members.jcom.home.ne.jp/gangas/


ほとんどの新聞で基本的な論調は一致している。

・沖縄では昨年の「辺野古」が争点となった全ての選挙で「辺野古移設反対」の候補が勝ち、民意を明確に示している。
・国が工事を進めている根拠としている前知事の「埋立て承認」は公約違反であり、県民には支持されていない。
・国が一方的で強引な工事をしている。→いったん停止するべき。
・国は翁長知事との面会すら拒絶している。→まずきちんと話し合うべき。
・このままでは国と沖縄の「対立」が深まり、よくない。法律闘争にすべきでない。


移設計画自体に否定的な論調の新聞はもちろん、移設に肯定的な論調の新聞でも、現在の政府のやり方には疑義を表明している。
そして全国の多くの新聞社が取り上げている点からも、いま辺野古で起きている問題の重要性がうかがえる。
また、あからさまに政府寄りの読売、産経のおかしさも浮き彫りとなっている。


米軍普天間飛行場の「移設」問題、というか辺野古新基地建設問題は、沖縄で起きている米軍基地建設の問題ではあるが、現在の日本政府の異常な強行姿勢を考えると、もはや「沖縄」の「基地」問題とのみ捉えることには「矮小化」という言葉すら当てたくなる。

多くの社説が指摘するとおり、工事をいったんストップして、国と県がきちんとした話し合いの場を持つことが最低限優先される。そのために全国の自治体、議会、報道、また個人が主体的に国に求めていくべきだと思う。

以下の各社社説を読めばわかるとおり、沖縄だけがただ駄々をこねているということでは、全くない。

問題の本質を広く共有するためにも、このエントリーは自由にご活用ください。



(随時加筆。それから見逃しなどあってもご容赦。)



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【全国紙】

・読売新聞 3月25日
辺野古移設作業 冷静さを欠く知事の停止指示

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150324-OYT1T50157.html

 必要な法的手続きに問題がない以上、政府は、米軍普天間飛行場の移設作業を計画通りに進めることが重要である。
 沖縄県の翁長雄志知事が、移設先の名護市辺野古沿岸部での移設作業を停止するよう防衛省に文書で指示した。応じない場合は、昨年8月の県の岩礁破砕許可を取り消すという。
 防衛省が地質調査のため無許可で設置したコンクリート製アンカーがサンゴ礁を破壊した可能性が高い、とするのが県の主張だ。
 工事に必要な許可を取り消し、移設を阻むのが狙いだろう。だが、この対応は、あまりに一方的であり、疑問である。
 防衛省は、県に事前確認し、昨年6月、アンカー設置に県の許可は不要との回答を受けている。
 さらに県は、那覇空港第2滑走路建設工事でも、今回と同様なアンカー設置について、許可は要らないとの立場を示している。
 行政には継続性と公平性が求められる。「県と十分に調整したうえで作業を実施している」という政府の主張は、理解できる。
 菅官房長官が、知事の指示について「違法性が重大かつ明白で、無効だ。作業を中断する理由にはならない」と述べ、作業を続ける方針を示したのは妥当である。
 防衛省は、県への対抗措置として、関連法を所管する林農相に、県の指示に対する行政不服審査請求と執行停止を申し立てた。
 県が停止指示の根拠とする県漁業調整規則は水産資源保護法に基づいており、農相は、県に指示の是正を促す権限があるためだ。
 林農相は、一連の経過を客観的に検証したうえで、適切な判断を下してもらいたい。
 住宅密集地にある米軍普天間飛行場の辺野古移設は、住民の基地負担軽減と米軍の抑止力維持を両立する最も現実的な方策だ。
 移設が遅れれば、飛行場の危険な現状の長期化に加え、在沖縄海兵隊のグアム移転など他の基地負担軽減策の実現も危うくなる。
 1996年の普天間飛行場返還の日米合意が、様々な曲折を経て、ようやく実現のメドが立った今、再び移設問題を迷走させる事態はあってはなるまい。
 政府は、地元関係者の理解を広げる努力を根気よく続けながら、決してぶれることなく、移設を進めていく必要がある。
 翁長知事は、辺野古移設を阻止するため、法廷闘争も辞さない構えを見せている。政治的パフォーマンスに走らず、冷静に政府との接点を探るべきではないか。


・朝日新聞 3月24日
辺野古移設 沖縄の問いに答えよ

http://www.asahi.com/articles/DA3S11666073.html

  政府はどこまで問答無用の姿勢を続けるつもりなのか。
 沖縄県の翁長雄志知事はきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設に伴う埋め立て工事に向けたボーリング調査など一連の作業を1週間以内に停止するよう、沖縄防衛局に指示した。
 指示に従わなければ、昨年8月に仲井真弘多・前知事が出した「岩礁破砕許可」を取り消すとしている。
 翁長知事は会見で「腹を決めている」と述べた。沖縄側の最後通告ともいえる意思表示と考えるべきだろう。
 これまでの経緯を振り返ると、「沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら」と言ってきたはずの政府が実際には、沖縄の訴えに耳を閉ざして「粛々と」作業に突き進んできた状況がある。
 岩礁破砕は海底の地形を変化させる行為。水産資源への影響を避けるため、県漁業調整規則で知事の許可が必要だ。
 ことの発端は1月、沖縄防衛局が海底に大型のコンクリートブロックをいくつも沈めたことだった。
 ブロックの投下は、許可区域を広く取り囲むように設定された立ち入り禁止区域に沿って行われ、許可区域外の海底のサンゴ礁などが傷ついているおそれがある。県は独自調査に取り組み始めていた。
 しかし立ち入り禁止区域での調査は米軍に拒まれ、県は再度調査を申請している。翁長知事は今回、防衛局に調査への協力も求めた。
 翁長知事は仲井真前知事が出した埋め立て承認を検証する第三者委員会の結論が出るまで、作業の中止を要求した。それを無視して政権側はボーリング作業に突き進んだ。
 政府はブロック投下について「(前知事時代に)県から岩礁破砕手続きの対象とならないと示されていた」と主張し続け、「対象となる」とする県の言い分に聞く耳を持たない。
 知事選で辺野古移設阻止を公約して当選した翁長知事にしてみれば、知事の行政権限を駆使して沖縄の立場を訴える行動に出るのは当然の流れだろう。
 知事の姿勢を、中谷防衛相は「もう少し沖縄県のことや日本の安全保障を踏まえて考えていただきたい」と批判する。
 だが、米軍基地が集中する沖縄の県民にとっては、国の安全保障政策は「なぜ辺野古か」「なぜ沖縄に海兵隊か」といった疑問だらけである。沖縄からの深刻な問いかけに、政府はまず向き合うべきだ。


・毎日新聞 3月25日
沖縄の対抗措置 政府は追い詰めるな

http://mainichi.jp/opinion/news/20150324k0000m070151000c.html

 沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に向けた海底作業を1週間以内に停止するよう防衛省の沖縄防衛局に指示した。指示に従わなければ、岩礁破砕許可を取り消すことがあると警告している。政府は直ちに作業を停止し、県との話し合いに応じるべきだ。
 昨秋の知事選で、移設に反対する翁長知事が誕生して以来、政府と沖縄の亀裂は深まるばかりだ。今回も両者の主張は完全にすれ違う。
 県は前知事時代の昨年8月、辺野古の埋め立て区域内で、海底の岩石を砕いて土砂を採取する岩礁破砕許可を防衛局に出した。しかし今年に入り、海底ボーリング調査再開の準備作業として、防衛局が立ち入り制限区域を示すブイ(浮標)などの重り用にコンクリート製ブロックを海に沈めたところ、県の岩礁破砕許可の区域外でブロックがサンゴ礁を押しつぶしているのが見つかった。
 一方、政府は昨年、破砕許可を得る過程で、ブイや重りの設置について県に問い合わせたが、手続きは不要だという回答を受けた。菅義偉官房長官は「この期に及んではなはだ遺憾だ。法律に基づいて粛々と工事を進める」と県の対応を批判した。
 だが、政府の一連の行政手続きの前提となっている前知事の辺野古埋め立て承認は、昨秋の知事選で県民から信任を得られなかった。
 県から見れば、重りの設置手続きが不要という昨年の回答は、サンゴ礁を傷つけるほど大型のブロックを想定していなかったためだ。許可区域外でサンゴ礁の破壊が明らかになった以上、防衛局は許可を取り直すべきだということになる。
 県の岩礁破砕許可は、県漁業調整規則に基づき「公益上の理由により別途指示する場合は従うこと」「条件に違反した場合は許可を取り消すことがある」と規定している。県はこれに従って、許可の取り消しを検討すると説明している。
 政府が手続き上の問題はないというのは、一つ一つの行為だけを取り上げればそういう理屈も成り立つのかもしれない。だが、問題がここに至ったのは、政府が沖縄との対話の扉を閉ざしたまま、一方的に移設作業を進めてきたことが背景にある。
 政府が今のやり方を進めていっても、その先には何の展望も見いだせない。沖縄の理解と納得がないまま、将来、仮に辺野古に代替施設が完成したとしても、それは日米安保体制の強化につながるだろうか。
 むしろ、いつ暴発するともわからない県民感情を抱えて、同盟は不安定化しかねない。これ以上、沖縄を追い詰め、感情的な対立を深めれば、問題解決は遠のくばかりだ。


・産経新聞 3月24日
辺野古移設 知事は停止指示の撤回を

http://www.sankei.com/column/news/150324/clm1503240003-n1.html

 米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が、防衛省沖縄防衛局に対して辺野古沿岸部での海底作業の停止を指示した。
 従わなければ、1週間後には移設工事に伴う岩礁破砕許可を取り消すともいう。
 この対応には問題があると指摘せざるを得ない。政府側は、知事の指示を受け入れないことを表明した。作業は粛々と進めるべきだ。
 辺野古移設が頓挫すれば、住宅密集地にある普天間飛行場の危険性を取り除くという県民の願いはかなわない。今回の指示はそうした結果を招きかねないものだ。知事は撤回してほしい。
 いったん認可した事業のどこが問題なのか。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事時代、県は政府との交渉で、埋め立て予定区域に隣接する臨時制限区域に、コンクリートブロックを投下することに問題はないとの立場を示していたという。
 菅義偉官房長官は「知事が定める規則を踏まえ、十分な調整をした上で(作業を)実施している」と述べた。
 知事交代で県が許認可の判断を百八十度変えるには、それ相当の理由が必要である。知事の主張に十分な根拠があるとはいえず、停止の指示は、行政の継続性からみても疑問である。
 また、普天間飛行場の危険性除去について、知事には周辺住民の安全な暮らしを守る大きな責務がある。辺野古移設をめぐる混乱をいたずらに拡大するような手法は避けるべきだ。
 沖縄の島である尖閣諸島(同県石垣市)をはじめ南西諸島の安全は、中国の軍事的台頭により脅かされている。沖縄はいや応なくその最前線になっている。
 辺野古移設は、日米同盟の抑止力維持の観点から、沖縄県民を含む国民全体の利益となることを理解してほしい。
 混乱を回避する責任は、知事や県側だけでなく、政府にもあることも指摘しておきたい。
 国にこそ、安全保障を確かなものとする責任がある。辺野古移設に対する沖縄の理解を広げていく不断の努力が必要である。
 安倍晋三政権が移設工事に着手したことは評価できるが、首相や菅官房長官らと知事との会談が実現しないなど意思疎通を欠いている。沖縄への説得を強められるよう状況を改めることも急務だ。


日本経済新聞 3月31日
普天間移設を法廷で争うのは筋違いだ

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO85074600R30C15A3EA1000/

 米軍普天間基地の移設を巡る国と沖縄県の対立が法廷に持ち込まれそうだ。同じ行政の側にありながら、司法の場で主張をぶつけ合うことに違和感を禁じ得ない。歩み寄りの余地はないのか。早期に話し合いの場を持ってほしい。
 同県宜野湾市の普天間基地は住宅密集地にあり、米軍機の墜落事故などがあれば大惨事を招きかねない。そこで人口が比較的少ない同県名護市に移設するというのが日米両政府の合意だ。
 沖縄県は2013年、移設予定地である名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事を許可した。この手続きは合法的に進められたし、行政には一定の継続性が必要である。知事が交代しても移設は見直さないという国の方針は理解できる。
 沖縄県の翁長雄志知事が出した基地工事の停止命令は、水産資源保護法という工事とは直接関係ない法律に基づくものだ。知事は昨年の当選時から「あらゆる手段を用いて移設を阻止する」と語ってきたが、こうしたやり方は筋違いである。
 農水省が知事の停止命令の是非を審理する間、命令の効力をいったん無効にすると林芳正農相が判断したのはもっともだ。
 ただ、法的に正しいからとかたくなな対応でよいのかはよく考える必要がある。安倍晋三首相も菅義偉官房長官も昨年の知事選後、翁長知事と一度も会っていない。こうした対応が基地移設に賛成の県民の心証まで害していないだろうか。
 農相の発表を受け、翁長知事は「腹を据えて対応する」と表明した。県が埋め立ての前提となる岩礁破砕許可を取り消し、対抗して国がその取り消しを求めて裁判所に提訴する形で法廷闘争に突入する可能性が高まっている。
 これと似た事例が1995年にあった。米軍用地の収用に必要な代理署名を当時の大田昌秀沖縄県知事が拒んだことだ。最高裁まで争って国が勝訴したが、このときに生じた国と県民の溝がいまに至る普天間問題の遠因になっている面もある。
 基地はただつくればよいのではない。周辺住民の理解がなければ円滑な運用は難しくなる。菅長官は「辺野古移設の原点が何であるかということが、沖縄県民や国民に説明が行き届いていない」と述べたが、それを説明するのは政府の責任である。裁判で争わなくてよい努力をまずすべきだ。



【ブロック紙】

・北海道新聞 3月25日
辺野古基地移設 作業停止の政治決断を

http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0025002.html

 沖縄県の米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画をめぐり、国と県の対立が抜き差しならない状況に向かっている。
 翁長雄志(おながたけし)知事は沖縄防衛局に対し海底ボーリング調査の停止を指示した。従わなければ県漁業調整規則に基づく岩礁破砕の許可を取り消す可能性を示した。
 防衛局は指示に背いて作業を続け、林芳正農水相に指示の取り消しを求める審査請求書と効力停止を求める申立書を提出した。
 対立の原因は地元の民意に背いて強引に作業を続けてきた国側にある。裁判に持ち込まれる可能性もあるが根本的解決にならない。
 沖縄の理解を得る努力を約束してきた安倍晋三首相は、まず作業を停止する政治決断をすべきだ。
 沖縄県は先月、辺野古沖の作業状況を制限区域の外から潜水調査し、サンゴ礁の損傷を確認した。ボーリング調査のために投入した大型コンクリート製ブロックによる可能性が大きいとみている。
 7日以内に作業が停止されなければ、知事は昨年8月に仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が出した岩礁破砕許可を取り消す構えだ。この許可は「公益上の理由により、別途指示する場合は従うこと」が条件だった。
 理解に苦しむのは国側の頑迷な態度である。
 菅義偉官房長官は「粛々と対応する」の一点張りだ。県側が昨年8月「ブロック投入は許可の対象外」と説明したことを根拠に、国側は法的な正当性を主張する。
 県側は作業中止を求める仮処分を沖縄地裁に申し立てることも検討している。政府側は許可取り消しとなれば無効を確認する訴訟を辞さない構えだ。
 移設問題を司法の場に持ち込むのは避けるべきだ。県側は岩礁破砕許可だけでなく、埋め立て工事そのものの許可取り消しも視野に入れている。対立が長引いて泥沼に陥りかねない。
 辺野古移設案をめぐってはかつて県側も理解を示していた時期もある。それは国側が粘り強い話し合いを続けた結果だった。
 問答無用とばかりに移設工事を進める安倍政権の姿勢は歴代政権と比べても突出して強権的だ。
 反対の声を力でねじ伏せて工事を続け、後戻りできない既成事実を重ねる手法は禍根を残す。
 選挙公約を覆した前知事の許可に頼って正当性を主張する安倍政権の側に無理がある。昨年の知事選と衆院選で反対の明確な民意は示された。選挙結果には従うのが民主主義の基本だ。


・河北新報 3月4日
米軍普天間移設/対話を通じて打開の道探れ

http://www.kahoku.co.jp/editorial/20150304_01.html

 重大な懸案を抱え、危うい状況が強まっているにもかかわらず、首相や担当大臣と地元のトップが会えない。そんな異常な状態が続いている。
 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への移設計画をめぐって、政府と沖縄県の対立が一段と深まり、官邸が事実上、会談を拒んでいるためだ。
 「難しい問題はあるが、前提条件を付けずに率直に話し合うべきだ。対話のドアは常にオープンだ」
 安倍晋三首相は日韓関係の改善に向けて、再三、首脳会談の早期実現を呼び掛ける。問題の性質が異なり、同列に論じるわけにはいくまいが、その安倍首相が、沖縄県の翁長雄志知事と面会にすら応じないのはどうしたことか。
 昨年12月の知事就任後、翁長氏の上京は6回に上るが、安倍首相や沖縄基地負担軽減担当相である菅義偉官房長官とはすれ違ったままだ。
 日韓における安倍首相の発言を受けて言えば、対立があるからこそ対話が必要だ。抜き差しならない局面を迎える前に、早急に会談の機会を設けるべきだ。
 辺野古での抗議活動が熱を帯びている。2月23日には参加者2人が拘束され、県警に逮捕される事態が発生。その後、釈放されたが、今後、懸念される不測の事態を避けるためにも、対話による環境整備が欠かせない。
 対立の根は深い。翁長氏は知事選で辺野古への基地建設反対を訴え、容認派の現職を大差で破った。公約順守を踏まえ「あらゆる手法を用いて移設を阻止する」立場だ。
 政府は前知事の埋め立て申請許可を盾に「粛々と工事を進める」(菅官房長官)姿勢を崩さない。4月末からの大型連休中に安倍首相が訪米を検討しており、日米同盟の強化に向けて、合意した移転計画の中断を許容し難い事情も抱える。
 コンクリート製ブロックの海中投下によるサンゴ礁破壊を受け、翁長氏は沖縄防衛局に海上作業の一部停止を指示。中谷元・防衛相は続行を表明し、一歩も引かない構えだ。県は許可内容に合致するか潜水調査に乗りだした。抗議活動で負傷者も出ており、エスカレートが心配される。
 対米公約をゆるがせにはできない。それでも多くの県民の「意思」を無視する格好で押し切るわけにはいくまい。
 政府は「アメとムチ」を巧みに使い、沖縄県の抵抗を和らげたい意向のようだが、翁長氏を翻意させるのは容易ではない。強権に頼った手法によって、工事が順調に進む保証もない。
 国と沖縄県の関係が一層険悪化、というより、国に対する県民の信頼感が決定的に損なわれる事態を強く恐れる。くすぶり始めているとされる独立を求める機運も高まりかねない。
 地元の支持を得られない形で基地だけができても、本来の機能を発揮できまい。
 問答無用の姿勢で、望ましい結末を迎えることができようか。中断の可能性を排除せず、まずはトップ同士が対話の機会を持つべきだ。打開の糸口を探る手間を惜しんではならない。


・中日新聞 3月24日
辺野古基地調査 県に従い作業停止を

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2015032402000109.html

 それでも安倍内閣は、米軍基地の新設に向けて作業を強行するのか。沖縄県の許可区域外で岩礁を破壊した可能性が高いという。翁長雄志知事の指示に従い、海上作業をいったん停止すべきだ。
 安倍内閣が名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部で進めている米軍基地新設に向けた作業は、あまりにも乱暴ではないのか。
 翁長氏はきのう、沖縄防衛局が海底掘削調査のために投入したコンクリート製ブロックがサンゴ礁を損傷した可能性が高いとして、県が海底調査を実施してあらためて指示するまでの間、すべての作業を一時停止するよう指示したことを明らかにした。
 指示に従わなければ、海底の岩石採掘と土砂採取など、岩礁破砕に関する許可を取り消すことも検討する、という。
 政府側は「現時点で作業を中止すべき理由は認められない」(菅義偉官房長官)として、指示に従わない方針のようだ。
 菅氏は常々「法令に基づいて粛々と対応する」と述べているが、県の指示も法律や県の規則にのっとった法的手続きだ。安倍内閣が日本は法治国家だと自負するのなら、まず県の指示に従い、作業を停止させるべきではないか。
 安倍内閣が辺野古での作業を進める根拠としているのは、公約に反して米軍普天間飛行場の県内移設容認に転じた仲井真弘多前知事による埋め立て許可である。
 しかし、仲井真氏は昨年十一月の県知事選で、県内移設反対を掲げた翁長氏に敗れた。前回当選時の公約を破った仲井真氏に、県民は厳しい審判を突き付けたのだ。
 続く十二月の衆院選でも、沖縄県内の全四小選挙区で県内移設を掲げる自民党候補は敗北した。
 にもかかわらず、安倍内閣は県内移設を拒む沖縄県民の民意に向き合おうとせず、翁長氏と政権首脳との面会も拒み続けている。抗議活動中の市民を逮捕、排除してまで作業を進めようとする。そんな法治国家がどこにあるのか。
 翁長氏が会見で指摘したように県民の理解を得ようとする政府の姿勢は「大変不十分」である。まずは安倍晋三首相の方から沖縄県民に歩み寄るべきだ。
 在日米軍基地の約74%が沖縄県に集中する現状は異常だ。普天間飛行場返還のためとはいえ、その負担を同じ県民に押し付けていいわけがない。基地負担を極力減らし、日本国民が可能な限り等しく分かち合うために力を尽くす。それが政治の仕事のはずである。


・東京新聞 3月24日 (中日新聞と同じ)
辺野古基地調査 県に従い作業停止を

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015032402000130.html


・中国新聞 3月2日
辺野古サンゴ礁損傷 「粛々と」進められまい

http://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=134760&comment_sub_id=0&category_id=142

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沖で、沖縄防衛局の海上作業によってサンゴ礁が損傷した問題が、国と県の対立をさらに深めている。重ねて主張したいが、政権の判断で工事を一時中断することはできないのか。
 辺野古沖の埋め立てを承認した仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事の手続きに法的瑕疵(かし=欠陥)がなかったかどうか、有識者委員会による検証は先月始まったばかりだ。現段階では、計画が手続きの上で全く問題がなかったとは断言できまい。
 仲井真氏にノーを突きつけた選挙結果を軽んじないのであれば、少なくとも検証結果を待つべきだろう。
 サンゴ礁の損傷は、防衛局が海底ボーリング調査再開に向け大型コンクリート製ブロックを海中に投入したことによって起きた。ブロックは臨時制限水域を示す海面のブイを固定するアンカー(いかり)だという。損傷は市民グループの潜水調査で明らかになり、県も先週、現場を調べて確認している。
 仲井真氏が知事時代の昨年8月、県は防衛局が提出した辺野古沖の岩礁破砕申請を許可した。今回はブロックの投入が許可の範囲を逸脱していないかどうか、調査結果を精査して判断する。翁長雄志知事は岩礁破砕許可取り消しの可能性にも言及し、一歩踏み込んだようだ。
 政権はこれを一顧だにしていない。菅義偉官房長官は県の潜水調査は一方的だと不快感を示した上で、岩礁破砕許可の取り消しは「ありえない」としている。海底ボーリング調査については「環境(保全)に万全を期しながら粛々と進めたい」と繰り返すばかりだ。
 しかしサンゴ礁損傷をよそに、環境に万全を期す、と言われても説得力はあるまい。「粛々と」進めるべきは沖縄県と県民への誠意ある対応だろう。
 そもそも翁長氏は昨年12月の就任以来、安倍晋三首相や菅官房長官との会談を求めながら一度も実現していない。新知事の就任から3カ月近くたち、沖縄の基地負担軽減が国政上の重要課題であることを考えると、異常事態としか言いようがない。
 先月下旬、名護市の米軍キャンプ・シュワブゲート前で、反対派の活動家2人が、日米地位協定に基づく刑事特別法(刑特法)違反の疑いで県警に逮捕され、送検された。これも異常事態の一つの表れといえよう。
 刑特法は1957年に東京都砂川町(当時)の旧米軍立川基地で起きた「砂川事件」の一審で違憲判決の例がある。その後も基地反対運動に適用されており、このような法律を持ち出せば、火に油を注ぐだけだ。
 シュワブゲート前で活動家2人を最初に拘束したのは米軍で、うち1人が日本人警備員に暴行し基地内に侵入した、としている。だが、活動家は真っ向から反論しており、那覇地検が2人の勾留を請求しないで釈放したことからも明らかなように、米軍の行き過ぎだろう。
 県内では「新基地建設を強行することは民主主義に反する」と意見書を可決した市議会もある。基地従業員の労働組合も、警備員をこうした業務に当たらせたことを問題視している。
 いたずらに県民同士の亀裂を深めないためにも、工事を一時手控えるべきではないか。


・西日本新聞 3月26日
辺野古移設 政府はまず沖縄と対話を

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/syasetu/article/158523

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を名護市辺野古沿岸部に移設する作業をめぐり、政府と沖縄県との対立が深まっている。
 きっかけは、沖縄県の翁長雄志知事が23日、防衛省沖縄防衛局に辺野古での移設関連作業の停止を指示したことである。防衛局が進める海底ボーリング調査がサンゴ礁を損傷した可能性が高いと判断したためだ。停止しない場合、知事は作業の前提となる岩礁破砕許可を取り消すと警告している。
 これに対し、政府は翌日、知事の作業停止指示を不服として、関係法令の所管官庁に審査請求するとともに、指示の効力停止を申し立てた。停止指示に従わず、あくまで作業を続行する構えだ。
 沖縄県も政府も、言い分が認められなければ、司法の判断を求める姿勢を示しており、法廷闘争に発展する可能性も出てきた。
 翁長知事は昨年11月の知事選で「辺野古移設反対」を掲げて当選した。かねて「あらゆる手法を駆使し、辺野古に基地を造らせない」と発言している。今回の作業停止指示や、今後予想される法的措置も、その「あらゆる手法」の一つなのだろう。
 知事選だけでなく、昨年12月の衆院選でも沖縄は4小選挙区の全てで辺野古移設反対派の候補が勝利した。「辺野古ノー」という沖縄の民意は明確だ。
 にもかかわらず、安倍晋三政権は、移設容認派の前知事時代になされた手続きを盾に「法令にのっとり粛々と対応する」としてボーリング調査を再開した。反対派の不信感は強まる一方だ。
 地域で反対が強い政策を実行するのなら、政府はまずその地域の住民と信頼関係を結び、情理を尽くして説得する必要がある。しかし、安倍政権が翁長知事を説得しようとした形跡はない。
 問答無用で推し進めるのではなく、まず安倍首相や菅義偉官房長官が知事と会い、日本の安全保障と沖縄の負担問題について、根本から語り合ったらどうか。自分の意見と違う人と対話する。これが政治の第一歩であるはずだ。



【地方紙(県紙)】

岩手日報 4月3日
普天間移設問題 打開の責務は国にある

http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2015/m04/r0403.htm
 沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設をめぐる政府と翁長雄志知事の対立は、民意の在りかをめぐる見解の相違が背景だろう。双方に理屈があり、一概にどちらが正しいとも誤りとも判じ難い。
 事態はこじれ、司法対決の可能性が取り沙汰されるに及び、沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅義偉官房長官は今週末、同県を訪問し知事と会談する意向を固めた。
 訴訟になれば国と県の対立は決定的となり、それ自体が国益を大きく損ねる。市街地のど真ん中にあって四方を宅地に囲まれ、米高官も「世界一危険な飛行場」と認めた普天間の現状は、結果的に固定化される懸念がある。
 今回の会談で一気に雪解けが進む見込みは薄いだろう。しかし少なくとも継続的な対話の門戸は閉ざさないよう、本来の議論に徹する努力を双方に強く求めたい。
 普天間返還の日米合意は1996年。合意は名護市辺野古沿岸部への移設とセットだが、知事選などで示された民意は県内移設反対が大勢を占めてきた。この間、民主党の鳩山由紀夫政権下で「県外移設」から「やはり県内」に転じるなど、沖縄を翻弄させる政治の迷走もあった。
 今回の問題の発端は2013年暮れに、2期目当選時の公約を翻して辺野古移設容認に傾いた仲井真弘多前知事の判断だ。翌年には、予定地に漁業権を持つ名護漁協が補償交渉に同意。政府は仲井真氏の任期満了間際に移設に向けた海底作業に着手した。
 各種行政手続きは踏んでいる-というのが政府の立場。これに対し、かねて仲井真氏を支持してきた翁長氏は同氏の変節に異を唱え、那覇市長を辞して昨年11月の知事選に立候補。仲井真氏に10万票の差を付け当選した。
 さらに知事選に先立つ同年1月の地元名護市長選、12月の衆院選でも全4小選挙区で自民候補が敗退。9月の名護市議選も、移設反対派が過半数を維持した。沖縄の民意は反・辺野古-というのが翁長知事の立場だ。
 しかし同知事も、普天間の危険性除去という大目的については見解が不明確。法廷闘争になれば不利とみられる中で、反対を言い続けることには限界もあるに違いない。
 他方、政府は仲井真県政からの行政の継続性を主張するが、沖縄振興策の拡充などをアメに同氏の翻意を強力に促したのは政府。地方選挙の意義を顧みない姿勢には、強権的との印象を禁じ得ない。
 安全保障は国の専権。だからこそ、国が率先して打開策を見いだすべきだろう。国策は、地方の自治権にどれほど優先するものか。そうした観点からも、全国の「地方」が推移を注視する理由がある。


・秋田魁新報 3月26日
辺野古で全面対決 冷静になり関係修復を

http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20150326az

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画をめぐって、政府と沖縄県の対立が決定的になった。
 翁長雄志(おながたけし)知事は、移設先の名護市辺野古沿岸部で沖縄防衛局が進めているボーリング調査などの海底作業を、全て停止するよう指示した。水産資源保護法に基づく県漁業調整規則を根拠にした指示だ。
 これに対し防衛局は、指示取り消しを求める審査請求書を、法律を所管する農水省に提出。ボーリング調査も継続させ、一歩も引かない構えを見せる。事態打開は遠のくばかりだ。
 翁長知事は、防衛局が調査のため海底に沈めた大型コンクリート製ブロックが、県が出した岩礁破砕の許可区域外でサンゴ礁を傷つけた可能性が高いとみている。防衛局が海底作業を停止しなければ、岩礁破砕許可を取り消す方針も示している。
 昨年11月の知事選で移設阻止を訴えて当選した翁長知事が強硬策に打って出た背景には、政府が昨年9月から中止していたボーリング調査を今年3月に再開し、沖縄との対話も実質的に拒否していることがある。
 知事は当選後、前知事が決めた埋め立ての承認を検証する委員会を設置。その結論が出るまではボーリング調査を再開しないように要請していたが、政府はこれを無視した。
 昨年12月の衆院選で沖縄県内4小選挙区全てで移設反対派が制した。それにもかかわらず、こうした「県民の意思」に政府が正面から向き合おうとしない姿勢にも反発した。
 一方の政府は、翁長知事が何度上京しようと、安倍晋三首相はもちろん、沖縄基地の負担軽減を担当する菅義偉官房長官も会おうとしない。海底作業の停止指示に関しても「違法性が重大かつ明白で、無効だと判断した」(菅官房長官)と、手続きの妥当性を盾にして対決色を強めるばかりだ。
 しかし、ここで最優先すべきなのは、政府も県も冷静になり、関係修復に動くことである。まずは政府が海底作業を中断し、翁長知事と話し合う度量を見せる必要がある。移設計画がどんな方向に動くにしても、敵対したままでは沖縄の協力は得られるはずもなく、安全保障上もプラスにはならない。
 政府とすれば、安倍首相が4月に訪米する前に辺野古移設を前進させ、首脳会談の場で移設推進を確認したいとの思惑もあるようだ。だが、その前に沖縄との信頼関係をつくることが不可欠だ。
 県側もいたずらに問題を複雑化させることは避けるべきだろう。基地問題への不満が渦巻いているからこそ、翁長知事には抑制の利いた対応が必要だ。
 政府と県の対立が続けば、法廷闘争に突入することは避けられず、問題の長期化は必至だ。傷口をさらに大きくするような対応はお互いに慎まなければならない。


・茨城新聞 3月27日
普天間移設問題 政府は対話の扉を開け

http://ibarakinews.jp/hp/hpdetail.php?elem=ronsetu

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、政府と沖縄県の対立が深まっている。翁長雄志知事はサンゴ礁の損傷などを理由に、辺野古沿岸部での海底ボーリング調査などを停止するよう指示したが、沖縄防衛局はそれを無視して作業を継続。さらに対抗措置として、農林水産省に指示の執行停止と取り消しを求める手続きを取った。
 政府は「指示は違法性が重大かつ明白で無効」と決めつけ、一歩も譲らない構えだ。ただ防衛局に指示を出した際、翁長氏は作業停止の期限を今月末に設定。「それまでに停止を報告しなければ、岩礁破砕許可を取り消すことがある」と警告しており、このままでは、いずれ許可取り消しにつながるとの見方が強い。
 そうなったら、海底の岩石を砕いたり、土砂を採取したりする作業はできなくなり、国は県による許可取り消しの無効確認訴訟を提起するとみられる。逆に県が国を相手取り作業中止の仮処分を申し立てることも予想されるが、政府関係者は「訴訟になっても、100パーセント負けることはない」と話している。
 だが法廷闘争で両者の相互不信は拭い難いものになるだろう。それは何としても避けたい。安倍晋三首相や菅義偉官房長官が翁長氏に会い、対話の扉を開くことが必要だ。沖縄の民意を顧みずに強気一辺倒で突き進むなら、その先にはさらなる対立と混乱しかない。
 焦点になっている岩礁破砕許可は、辺野古移設に向け沖縄防衛局が仲井真弘多前知事に申請、昨年8月に認められた。県の指示に従うことや、申請外の行為をした場合には許可を取り消すことがある-などが条件になっている。県の埋め立て承認と並んで、移設作業には不可欠だ。政府は翁長氏による許可取り消しの警告に不快感をあらわにし「行政には継続性がある」と強調している。
 だが翁長氏は昨年11月の知事選で「辺野古移設阻止」を公約に掲げ、移設推進派の仲井真氏を破って当選した。防衛局がボーリング調査のために沈めた大型コンクリート製ブロックがサンゴ礁を押しつぶしている状況を確認。しかも、それが許可区域外の岩礁破砕に当たる蓋然(がいぜん)性が高いとなれば、知事権限を行使して沖縄の立場を訴えるのは当然のことといえる。
 これに対し、政府は「ブロック設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらない」と主張。自民党の谷垣禎一幹事長は「前知事と違うことを言うのは、どういう根拠があるのか」とし、首相との会談が実現していないことに触れ「自分の主張だけをぶつけるなら、会う意味がない」と述べた。
 ただ翁長氏が就任以来7回も上京しながら、首相や官房長官にいまだに会えないのは異常というほかない。知事選ばかりか名護市長選や衆院選の沖縄4小選挙区全てでも、はっきりと示された「辺野古移設反対」の民意から逃れようとしているようにしか見えない。
 首相は4月の訪米時にオバマ大統領との会談で辺野古移設を確認し、強固な同盟関係をアピールしたいという。だが、このまま沖縄の民意を無視して辺野古移設にこぎつけたとしても、基地を取り巻く住民らの不信や怒りはくすぶり続ける。それが「島ぐるみ闘争」のような形で爆発したときは同盟が根底から揺らぐことになるだろう。


・山梨日日新聞 3月31日
政府と沖縄 辺野古対立 この期に及び、対話で打開を

(有料のため見出しのみ)


・信濃毎日新聞 3月26日
辺野古移設 工事を止めて対話せよ

http://www.shinmai.co.jp/news/20150326/KT150325ETI090006000.php

 沖縄の理解を求める努力をする―。安倍晋三首相のそんな言葉とは正反対の対応だ。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、政府は県の主張を一顧だにしない。
 翁長雄志知事が海底作業の停止を指示した後も、沖縄防衛局は埋め立てに向けた海底ボーリング調査を続けている。「十分な調整を行った上で工事をしている。全く問題ない」(菅義偉官房長官)などとして指示を無視した。
 県が問題視したのは、防衛局が調査のために投入した大型コンクリート製ブロックによるサンゴ礁の損傷だ。許可区域外での岩礁破砕に当たる可能性が高いと判断した。許可は「県の指示に従う」ことなどを条件としていた。知事は許可取り消しも警告する。
 知事の指示について菅氏は「違法性が重大かつ明白で無効」とする。もともと政府が指示に従うとは考えにくかった。それにしても強引さが目に余る。
 防衛局は対抗措置として、指示の取り消しを求める審査請求書などを林芳正農相に提出した。農林水産省は県に意見を出すよう求めている。意見を受けた上で指示の妥当性を裁決する。農相が政府に不都合な判断を下すことは、まず考えられない。
 辺野古反対という沖縄の民意は昨年の知事選や衆院選などで繰り返し示されている。辺野古の海や移設先に隣接する米軍キャンプ・シュワブのゲート前では反対派の抗議活動が続く。
 首相が4月に訪米する。政府にすれば普天間移設の日米合意を進める姿勢を示したいのだろう。日米関係を優先して地元の反対を無視することは許されない。沖縄との溝を深めるだけだ。
 このまま全面対決が続くようだと、県が工事差し止めを求めるといった訴訟も想定される。政府には裁判になっても「負けることはない」との判断があるようだ。対話によって解決するのが本来の姿である。県と法廷闘争を繰り広げる展開は避けるべきだ。
 政府は夏にも埋め立て工事に着手しようとしている。菅氏は普天間の危険除去を強調しつつ、「粛々と進める」と繰り返す。移設を既成事実にしようと作業を進めることがあってはならない。
 政府に求められるのは、埋め立てに向けた作業を止め、県と話し合うことだ。知事は就任後、何度も上京しているのに、首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏は会おうとしない。一日も早く会談すべきである。


・新潟日報 3月26日
辺野古海底調査 沖縄の声に向き合わねば

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/

 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、移設先の名護市辺野古沿岸で進められている海底調査の停止を沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が沖縄防衛局に指示した。
 調査のために投入したブロックがサンゴ礁を壊した可能性があるため、県が調査する必要があるとの判断である。
 防衛局は調査を続け、対抗して行政不服審査法などに基づく不服申し立ての手続きをした。
 国と県の全面対立の様相だ。法廷闘争となる可能性がある。そうなれば、問題のさらなる複雑化、長期化は必至だ。
 市街地に隣接する普天間飛行場の危険除去、沖縄の基地負担軽減という優先すべき目的の実現を危うくする事態といえる。
 普天間飛行場返還と沖縄県内移設は、日米両政府が1996年に合意した。日本政府は99年に移設先を辺野古に決めた。
 民主党政権下、鳩山由紀夫首相による「国外、最低でも県外」発言で沖縄は振り回された。
 安倍政権が2013年に辺野古の埋め立てを申請し、前の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事がこれを承認したことで計画が動いた。
 政府が昨年夏に海底調査に着手してからは、「移設は負担軽減でではない」という県民の反発が一段と強まっている。
 これに先立つ名護市長選で移設反対の市長が再選され、11月には移設反対の現知事が初当選した。衆院選では4小選挙区で反対派候補が勝った。
 埋め立てへの動きが目にも明らかになるのと並行する形で行われた各選挙で、沖縄の民意は明確になったといえる。
 にもかかわらず、政府は沖縄の声に耳を傾けない。安倍晋三首相、沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅義偉官房長官は、いまだに翁長氏と面会もしていない。異常な事態というほかない。
 政府は海底作業中止の指示にも「違法性は重大で明白」と強気だ。訴訟になっても負けないという判断があるのだろう。
 だが、過度に米軍基地の負担を背負った沖縄の苦しみ、移設をめぐる混乱を顧みる時、その態度は誠実といえるかどうか。
 一連の選挙の経緯や勝ち負けを超えて、今こそしっかりと地元の声に向き合い、対話を深めていく姿勢が求められる。
 安倍首相は4月に訪米し日米同盟の強化を発信する考えのようだ。辺野古移設の推進をその象徴として掲げるというのは、いかがなものかと思う。
 地元の反発を無視したままでの移設強行は、地元受け入れを重視してきた米政府も歓迎することではないはずだ。政権の強引さや異論を受け付けない狭量さを印象付けることにもなろう。
 また、国が一方的に計画を進めて、仮に移設が完了したとしよう。その時、県民の日米両政府への視線がどれほど厳しいものになるかを想像すべきだ。
 政治は異なる意見を広く聞き、説得し、決断するのが役目だ。その前提になる信頼関係を取り戻す努力を始めねばならない。


・北日本新聞 3月25日
辺野古調査の停止指示/強行突破は泥沼を招く

(有料なので見出しのみ)


・北國新聞 3月27日
普天間移設問題 争っても対話途切らせまい

http://www.hokkoku.co.jp/_syasetu/syasetu.htm

 米軍普天間飛行場の移設工事をめぐり、推進する政府と反対する翁長雄志知事の沖縄県が互いに法律に基づく対抗措置を取り、全面対決の様相を見せている。国の専権事項である外交・安全保障の重要政策が、地元自治体の反対で進まないというのは不幸な事態である。話し合い決着が困難な以上、国側が法的措置で事態の打開に動いてもやむを得ないということであろうか。
 それでも政府、沖縄県の首脳同士がまったく協議することなく、感情的にも対立がエスカレートする状況は尋常ではない。沖縄の基地問題は普天間飛行場の移設だけではない。基地負担の軽減策や地域振興策について政府、沖縄県は手を携えていかなければならないのであり、争いの中にあっても対話を途切らせてはならない。
 そのための配慮を特に首相官邸に求めておきたい。対話もなく沖縄県執行部との対立が泥沼化すると、普天間飛行場を名護市辺野古に移設する日米両政府合意の計画を支持、容認する県民の心情まで害することになりかねない。
 翁長知事は、沖縄防衛局が進める海底ボーリング調査など作業の一時停止を指示した。防衛局はこれに応じず、逆に指示の取り消しと執行停止を求める法的措置に踏み切った。沖縄県側は、防衛局が調査のため投入したコンクリート製ブロックで許可区域外の珊瑚礁が損傷しており、作業は前知事が許可した岩礁破砕の範囲を逸脱している可能性があると主張している。ブロックによる珊瑚礁の損傷は県側調査で事実としても、海底作業全体の停止や、岩礁破砕許可の取り消し理由になるほどの重大な瑕疵(かし)といえるだろうか。
 沖縄県の担当者は当初、ブロック投入は岩礁破砕許可の対象外と防衛局に説明していた。行政官として妥当な判断であったろうが、翁長知事執行部は従来の判断を覆した形である。知事は行政官であると同時に政治家でもあり、政治目的実現のために行政権限を行使しても不思議ではないが、権限をいわば政治の道具として使うことは、行政の継続性の面からも慎重でなければなるまい。


福井新聞 3月31日
沖縄県指示の効力停止 民意無視して米国追従か

http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/editorial/67720.html

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、翁長雄志沖縄県知事が出した沿岸部での作業停止指示について、沖縄防衛局が求めた指示取り消しの審査請求。林芳正農相は防衛局の主張を認め、作業停止指示の効力を一時的に停止する決定を下した。
 作業が遅延すれば「日米両国間の信頼関係、外交・防衛上に回復困難で重大な損害が生じる」との防衛局側の主張を丸のみした。
 知事の主張は、防衛局が許可なく岩礁破砕をしている可能性が高く、作業を停止しなければ調査できないとの立場だ。菅義偉官房長官は知事の指示を「違法性が重大かつ明白で、無効なものだ」と非難したが、政府のやり方はあまりに一方的で、公正性に欠ける。
 この岩礁破砕許可は、沖縄防衛局が当時の仲井真弘多知事に申請、昨年8月に認められた。ただ県の指示に従うことや、申請外の行為をした場合には許可を取り消すことがある―などが条件が付いている。
 翁長氏は昨年11月の知事選で「辺野古移設阻止」を公約に掲げ、移設推進の仲井真氏を破って当選した。政府が言うように「行政の継続性」は重要な観点。だが県は防衛局がボーリング調査のために投入した大型コンクリート製ブロックがサンゴ礁を押しつぶしている状況を確認した。しかも許可区域外の岩礁破砕に当たる蓋然(がいぜん)性が高いとなれば、知事権限を行使するのは当然のことといえる。
 審査請求に対し、農相は防衛局と県から意見を聞いた上で採決する。数カ月かかりそうだが、請求を容認すれば県は採決無効を求め提訴する構えだ。法廷闘争になれば沖縄と国の相互不信は一段と深刻化する。
 谷垣禎一自民党幹事長は「前知事と違うことを言うのは、どういう根拠があるのか」と言い、いまだ実現していない首相との会談にも言及、「自分の主張だけをぶつけるなら、会う意味がない」と述べた。
 これはおかしな話だ。知事が就任以来7回も上京しながら、首相や官房長官にも会えないのは、辺野古移設に反対する知事への拒絶であろう。沖縄振興予算さえ減額するほどだ。
 今回の行政不服審査法に基づく防衛局の対抗措置は異例である。本来、申し立ては国民の権利保護が目的であり、国が利用するのは趣旨に沿わないとの専門家の厳しい指摘もある。
 4月に訪米する首相は首脳会談で辺野古移設を確認し、強固な同盟関係をアピールする方針だ。県の主張を一蹴して米国追従に走る政府は夏ごろの着工目指し調査作業を着々進める。
 しかし「移設反対」の民意は名護市長選、昨年12月の衆院選でも明確に示された。これを無視する政府の政策に県民の憤りは強い。戦後70年。基地に苦しみ続ける沖縄に、安倍首相の「寄り添う」という言葉が空々しく聞こえる。


・京都新聞 3月24日
辺野古停止指示  政府は亀裂を深めるな

http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20150324_4.html

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、政府と沖縄の亀裂が決定的になろうとしている。
 辺野古沿岸部でボーリング調査の再開を強行した沖縄防衛局に対し、沖縄県の翁長雄志知事は投入したコンクーリート製ブロックがサンゴ礁を損壊しているとして全作業の停止を指示した。1週間以内に従わなければ岩礁破砕に関する許可を取り消す可能性も示唆した。
 翁長知事が公約の辺野古移設阻止へ本格的に動きだした格好だ。法廷闘争も視野に停止指示を決断した背景には、昨年の知事選や衆院選などで示された「移設反対」の民意と向き合おうとしない政府への不信がある。事前説明なしに調査を再開し、再三上京しても安倍晋三首相や菅義偉官房長官が会おうともしないことへの憤りも決断を後押ししたのだろう。
 県は、移設推進派の仲井真弘多前知事時代に県漁業調整規則に基づいて岩礁破砕を許可したが、県はブロック投入は「許可の対象外」と説明していた。県側は、許可が取り消されれば、ボーリング調査ができなくなるとしている。
 この動きに対し、官房長官は「この期に及んで甚だ遺憾」と反発し、夏ごろの埋め立て着手を見据えて「粛々と工事を進める」と突き放した。このまま強硬姿勢を貫くつもりなのだろうか。
 安倍首相は4月末の訪米に向けて辺野古移設計画の進展を鮮明にしたいようだ。だが、米海兵隊の司令官は米議会上院軍事委員会の公聴会で辺野古移設に懸念を表明した。これ以上こじれれば、県民の怒りの矛先が沖縄の米軍基地全体に及ぶことを憂慮しての発言だろう。移設に揺れる沖縄の姿が、当の米軍関係者の目にも危ういと映っているとみていい。
 政府が優先すべきは強引な移設計画推進ではなく、沖縄との関係修復だ。ボーリング調査の現場では、反対派住民との間で衝突が頻発している。強引に進めれば反対派もエスカレートし、取り返しのつかない事態に発展しかねない。
 菅官房長官は県側に説明責任を果たす考えを示した。遅きに失した感は否めないが、まずは自ら沖縄に出向いて知事との対話を始めることだ。「辺野古移設しかない」という根拠は何か、県民が納得のいく説明をしなければならない。
 地元の理解が得られないまま移設を進めても、安全保障にプラスになるとは思えない。政府は、沖縄だけでなく、日本の将来のためにいったん調査を止め、誠実に民意と向き合うべきだ。


・神戸新聞 3月25日
辺野古停止指示/沖縄の民意を無視するな

http://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201503/0007850807.shtml

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐる沖縄県と政府の対立が、抜き差しならない局面を迎えている。
 沖縄県の反対を押し切って辺野古沿岸部で埋め立てに向けた海底ボーリング調査を再開した沖縄防衛局に対し、翁長(おなが)雄志知事が作業の全面停止を指示した。今月中に作業停止の報告がない場合、埋め立て本体工事に関わる岩礁破砕許可の取り消しも辞さない構えだ。
 防衛局は、きのうも作業を続けた。さらに、停止指示は無効として行政不服審査法などに基づく審査請求書と、指示の効力停止を求める申立書を農林水産相に提出した。国と県が全面対決する形になった。
 翁長氏も、政府との対決を望んでいるわけではないはずだ。事態がこじれれば、基地負担軽減の道筋が描けないというジレンマもあろう。県の停止指示は「時間稼ぎにすぎない」との受け止めもある。
 ここまで沖縄を追い込んだ責任は対話の扉を閉ざし、問答無用で工事を進めようとする政府の対応にある。政府は速やかに作業を中断し、県との話し合いに応じて事態を打開すべきだ。
 政府は「手続きに法的な問題はない」と主張する。だが、その根拠となる前知事による埋め立て承認は、昨秋の知事選で県民の信任を得られなかった。続く衆院選でも、沖縄4小選挙区全てで辺野古推進・容認派が敗れた。沖縄県民は「辺野古反対」の意思を鮮明に示している。
 ところが、辺野古移設に反対する翁長氏が県知事に就任して以来、安倍晋三首相は面会を拒み、沖縄振興予算を減額するなど露骨に冷遇してきた。政権にとって都合の悪い「民意」には向き合わず、ねじ伏せようとする。あまりに傲慢(ごうまん)ではないか。
 防衛局が辺野古に投入したコンクリート製ブロックがサンゴ礁を傷つけているのを、県が潜水調査で確認してから1カ月。周辺では、県民による座り込みや海上での監視などの抗議行動が続いている。
 そんな中で工事を強行すれば県民が反発を強めるのは当然だ。すでに抗議行動の参加者と警察官らとの衝突が相次いでいる。地元の理解を得られないまま移設を進めたとしても混乱は続くだろう。
 政府はいったん立ち止まり、沖縄の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。


・山陰中央新報 3月29日
普天間移設問題/対話の扉を開くべきだ

http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=551493033

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、政府と沖縄県の対立が深まっている。翁長雄志知事はサンゴ礁の損傷などを理由に、辺野古沿岸部での海底ボーリング調査などを停止するよう指示したが、沖縄防衛局は作業を継続。対抗措置として農林水産省に指示の執行停止と取り消しを求める手続きを取った。
 政府は「指示は違法性が重大かつ明白で無効」として譲らず、法廷闘争も辞さない構えだ。そうなれば両者の相互不信は拭い難いものになる。安倍晋三首相や菅義偉官房長官が翁長氏に会い、対話の扉を開くことが必要だ。沖縄の民意を顧みずに強気一辺倒で突き進むなら、その先には、さらなる対立と混乱しかない。
 防衛局に指示を出した際、翁長氏は作業停止の期限を今月末に設定。「それまでに停止を報告しなければ、岩礁破砕許可を取り消すことがある」と警告した。そうなると海底の岩石を砕いたり、土砂を採取したりする作業はできなくなるため、国は農相による翁長氏の指示の執行停止を決定するとみられる。
 このため作業停止措置の正当性を主張する意見書を農相に提出した県が、さらなる対抗策として作業中止の仮処分申し立てなどを模索することも予想される。ただ、政府関係者は「訴訟になっても、100パーセント負けることはない」と話している。
 焦点になっている岩礁破砕許可は、辺野古移設に向け沖縄防衛局が仲井真弘多前知事に申請、昨年8月に認められた。県の指示に従うことや、申請外の行為をした場合には許可を取り消すことがある―などが条件。県の埋め立て承認と並んで、移設作業には不可欠だ。政府は翁長氏による許可取り消しの警告に不快感をあらわにし「行政には継続性がある」と強調している。
 しかし翁長氏は昨年11月の知事選で「辺野古移設阻止」を公約に掲げ、移設推進派の仲井真氏を破って当選した。防衛局がボーリング調査のために沈めた大型コンクリート製ブロックがサンゴ礁を押しつぶしている状況を確認。それが許可区域外の岩礁破砕に当たる蓋然(がいぜん)性が高いとして、知事権限を行使し、沖縄の立場を訴えたと言える。
 これに対し、政府は「ブロック設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらない」と主張。自民党の谷垣禎一幹事長は「前知事と違うことを言うのは、どういう根拠があるのか」とし、首相との会談が実現していないことも「自分の主張だけをぶつけるなら、会う意味がない」と述べた。
 ただ翁長氏が就任以来7回も上京しながら、首相や官房長官にいまだに会えないのは異常と言えるだろう。知事選ばかりか名護市長選や衆院選の沖縄4小選挙区全てでも、はっきりと示された「辺野古移設反対」の民意に耳を傾けたくないように見られても仕方ない。
 首相は4月の訪米時にオバマ大統領との会談で辺野古移設を確認し、強固な同盟関係をアピールしたいという。だが、このまま沖縄の民意を無視して辺野古移設にこぎつけたとしても、基地を取り巻く住民らの不信や怒りはくすぶり続ける。それが「島ぐるみ闘争」のような形で爆発するようなことになれば、同盟が根底から揺らぎかねない。


・徳島新聞 3月28日
辺野古移設で対立 政府は沖縄の声を聞け

http://www.topics.or.jp/editorial.html

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、政府と沖縄県の争いが全面対決の様相になってきた。
 翁長雄志知事が、辺野古沿岸部での海底ボーリング調査を停止するよう指示したのに対し、政府は無視して作業を続けている。
 双方は法廷闘争も辞さない構えだ。このままでは対立が決定的になり、修復できなくなる恐れがある。
 ここまで事態が悪化した原因は、沖縄の声を聞かず、強引な手法をとってきた政府の側にあろう。政府は作業を中止し、県との話し合いを始めるべきだ。
 翁長知事は、指示から7日以内に作業を停止しなければ、海底の岩石採掘などの岩礁破砕に関する許可を取り消すと警告している。作業停止の期限は今月30日である。
 知事が停止を指示したのは、防衛省がボーリング調査のため投入した大型コンクリート製ブロックが、岩礁破砕の許可区域外でサンゴ礁を傷つけている可能性が高く、作業を止めて県が調査する必要があると判断したためだ。
 県は、岩礁破砕許可が取り消されれば、防衛省はボーリング調査を続行できなくなると主張している。
 これに対して防衛省は、県の破砕許可は不要と反論。対抗措置として、行政不服審査法に基づき、指示の執行停止を求める申立書などを林芳正農相に提出した。
 菅義偉官房長官は「翁長氏の指示は違法性が重大かつ明白で無効だ」と批判する。
 だが、県の潜水調査では、1カ所でサンゴ礁の損傷が確認されている。他の地点も確かめ、問題があれば是正させたいというのは県として当然ではないか。
 防衛省は昨年8月にボーリング調査を始め、翌9月に中断した後、今月再開した。
 翁長知事は、前知事による埋め立て承認の是非を検証する有識者委員会を1月に設置し、検証が終わるまで調査を再開しないよう求めていた。
 それを一顧だにせず、抗議する人たちを力で排除しての強行だった。乱暴なやり方に「これが民主主義なのか」と県民から怒りの声が上がったのはもっともだろう。
 菅官房長官は「わが国は法治国家だ」「法令に基づき、粛々と工事を進める」としている。
 しかし、前知事が公約に背いて踏み切った辺野古の埋め立て承認は、昨年11月の知事選で大敗を喫したことで県民からノーを突き付けられた。
 昨年の名護市長選と衆院選でも、移設賛成派は完敗した。沖縄の民意は明確に示されている。それを無視して進めることが正当な方法といえるだろうか。
 翁長知事は就任後、安倍晋三首相と菅官房長官に一度も会えていない。
 安倍首相はきのうの参院予算委員会で「国と地元がさまざまな取り組みについて連携を深めていく中で、翁長氏との対話の機会も設けられると考えている」と述べた。
 首相は中韓両国首脳との会談開催をめぐり、前提条件を付けるべきではないとし、対話のドアは常にオープンだと強調している。
 その姿勢を沖縄に対しても貫いてもらいたい。地元の理解と協力を得ようとするなら、まずは県民の声に耳を傾けるべきである。


・愛媛新聞 3月26日
辺野古調査継続 沖縄の民意黙殺は許されない

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201503264270.html

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志知事の訴えは、沖縄の民意だ。政府は肝に銘じ、真摯(しんし)に耳を傾けねばならない。
 移設に向け、辺野古沿岸部で海底ボーリング調査が続けられている。翁長氏は今週初め、許可区域外へのコンクリートブロック投下でサンゴ礁が破壊された可能性が高いとして、1週間以内に作業を全面停止するよう指示したが、政府は「問題ない」の一点張りで作業を急ぐ。
 一刻も早く移設を本格化させ、既成事実を積み上げて反対の世論を抑え込みたい、との思惑がうかがえる。翁長氏は海底掘削など岩礁破砕の許可取り消しを警告しており、対抗措置を講じる政府は法廷闘争も辞さない構えだ。対立の先鋭化を強く危惧する。
 名護市長選、知事選、衆院選小選挙区など、昨年沖縄であった一連の選挙では辺野古移設反対の民意が示された。作業をやめて翁長氏と話し合い、基地負担軽減の道を共に模索することこそ政府の務めだ。安倍晋三首相は速やかに対話に応じてもらいたい。
 同時に、沖縄県側を追い詰めたことを政府は猛省しなければなるまい。安倍首相や基地負担軽減を担う菅義偉官房長官は、翁長氏が就任後何度上京しても会談に応じない。また、仲井真弘多前知事による埋め立て承認を検証する間は調査を見合わせるよう求めても、無視を決め込む。施政方針演説などで首相が「沖縄の理解を得る努力を続ける」と繰り返す姿勢に反しよう。
 菅氏は「行政の継続性」を理由に工事の正当性を強調する。しかし、埋め立てを承認し辺野古移設容認に転じた仲井真氏に、多くの県民は「ノー」を突きつけたのだ。移設は白紙に戻ったと言うべきであり、民意を黙殺して強行するようでは、もはや民主主義とは呼べまい。
 看過できぬ発言があった。中谷元・防衛相が「国の安全保障を踏まえて考えていただきたい」と翁長氏を批判したのだ。安保政策を盾に、沖縄に負担を強いるのはやむを得ないと宣言したに等しい。
 在日米軍専用施設の大半が沖縄に集中する現実を、全ての国民があらためて直視する必要がある。基地負担軽減、中でも世界一危険といわれる普天間飛行場の移設は最優先すべき課題だが、県内移設では負担軽減にならない。政府は今こそ、「辺野古ありき」で対米追従を強めてきた姿勢を改めるべきだ。
 安倍首相は辺野古移設の目的について「抑止力の維持」を挙げる。米軍は現在、国防戦略見直しによる再編の過程にある。在日米軍や日米同盟の在り方などの根本的な課題を含め、沖縄の負担軽減に向き合う好機と捉えたい。


・高知新聞 3月25日
【辺野古移設問題】沖縄を突き放さず対話を

http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=335317&nwIW=1&nwVt=knd

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沿岸部への移設をめぐり、政府と沖縄県の亀裂が深まるばかりだ。
 翁長知事は、沿岸部の海底ボーリング調査を含めた関連作業の停止を沖縄防衛局に指示した。従わなければ来週にも岩礁破砕の許可を取り消すことがあると警告している。
 翁長氏が作業停止を求めたのは、防衛局が投入した大型コンクリート製ブロックが岩礁破砕の許可区域外でサンゴ礁を損傷した可能性が高いからだ。
 それに対して政府は、ブロック設置は県の許可の「対象外」として、取り消しを受け入れない方針だ。作業の停止指示も不服とし、行政不服審査法に基づき審査請求していくという。
 菅官房長官は「法律に基づき、粛々と工事を進める」と述べ、防衛局はボーリング調査を継続している。
 しかし、貴重なサンゴ礁の保護に責任がある県が損傷具合を確認するのは当たり前だ。翁長氏の警告に全く耳を貸さず調査を続ける姿勢はどう考えてもおかしい。
 政府は、翁長氏らを無視したり突き放したりせずに、移設について真剣に対話できる場を設けるべきだ。
 移設反対の翁長氏が昨年の知事選で勝利した後、政府と沖縄の溝は深まる一方だ。安倍首相も菅官房長官もいまだに翁長氏と会っていない。
 知事選だけでなく衆院選の全小選挙区、名護市長選、名護市議選のいずれも県内移設の反対派が勝っており、民意ははっきりしている。
 翁長氏の警告にもかかわらず調査を継続するのは、こうした沖縄の民意に向き合っていないことになる。
 安倍首相らはこれまで「沖縄の方々の理解を得る努力を続ける」と繰り返してきた。政府として十分努力していると県民に説明できるだろうか。
 県が許可を取り消した際、今のように国が無視すれば、作業中止を求める仮処分を裁判所に申し立てる案が出ている。逆に防衛局側も許可取り消しの無効を求める行政訴訟を起こすとの見方がある。まともな対話もせず、法廷闘争になれば沖縄と政府の関係はさらにこじれるだけだろう。
 政府の対応次第では移設反対派の抗議活動が激しくなる恐れがある。今でも海上保安庁や県警との衝突で危うい状況があり、非常に心配だ。流血の事態となれば取り返しがつかない。


・佐賀新聞 3月14日
辺野古調査再開

http://www.saga-s.co.jp/column/ronsetsu/166098

 沖縄防衛局が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に向けた海底ボーリング調査を再開した。沖縄県で多数を占める移設反対の声を無視した強行策で、政府と沖縄県の対立は先鋭化するばかりだ。
 防衛局は埋め立てに必要なボーリング調査を昨年8月に開始し、翌9月から中断していた。その後は台風による悪天候、さらに11月の県知事選への影響を意識して再開を先延ばししていた。
 この間に示された沖縄の民意は明確だ。知事選で「新基地阻止」を訴えた翁長雄志(おながたけし)氏が、移設推進の仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事を大差で破って初当選した。翌12月の突然の衆院選でも自民圧勝の中、県内4小選挙区全てで辺野古反対派が自民候補に勝った。県外移設を求める沖縄県民の思いは強い。
 選挙で出た民意を尊重するのが民主主義の基本だが、政府は一顧だにしない。安倍晋三首相は3日の衆院予算委員会で「基地問題のような大事な政策は、その時々の政局、選挙に利用してはならない」とけん制している。
 政府の頼みの綱は前知事による埋め立て承認だ。翁長氏は取り消しを視野に入れるが、政府は「取り消せない」と強調する。前知事も10年の再選時に県外移設を訴えながら変節した。承認の手続きに瑕疵(かし)がないとしても、県民の総意はそこにない。沖縄ではいくら選挙で意思表示しても、方向性を変えられないことへの不満が鬱積(うっせき)していることだろう。
 この問題は、普天間飛行場の危険除去を考え、日米両政府が飛行場返還で合意してから20年近くの歩みがある。強引な政府対応の背景には、合意を履行しなければ、同盟関係にひびが入りかねないとの危機感もあるとみられる。
 強硬姿勢は「知事に安全保障にかかわる基地問題の行方を決める権限はない」と言っているようなものだ。佐賀県には米軍も絡んだ佐賀空港への自衛隊のオスプレイ配備計画があり、新知事に「佐賀のことは佐賀で決める」と主張した山口祥義氏が就任した。事情の違いはあれ、沖縄で起きていることを前にすると、こちらに決定権があるのか、不安に思えてくる。
 翁長氏は公約実現に向け、「あらゆる手法を駆使」すると息巻くが、打つ手は限られているようだ。防衛局がボーリング調査再開のため、海中に沈めた大型のコンクリート製ブロックがサンゴ礁を傷つけていることを端緒に、海底作業の許可の取り消しを目指しているが、限界もあるようだ。
 知事就任以降、翁長氏は計7度上京したが、首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅義偉官房長官との会談が実現していない。政府の意に沿わない知事への意趣返しにしか見えず、大人げない。
 埋め立て工事の着手時期を中谷元・防衛相は「夏ごろ」としている。既成事実を積み重ねれば、反対運動の勢いを削ぐことになろうが、このまま突き進んでは政府と沖縄、本土と沖縄に修復しがたい溝ができる。在日米軍基地面積の74%が集中する沖縄の不満が失望に変わり、爆発しかねない。
 基地の負担軽減を目指した普天間移設の原点は、「沖縄県民のため」だったはず。政府はここに立ち戻り、まずは翁長氏らと会い、互いの言い分に耳を傾けるべきだ。(宮崎勝)


・熊本日日新聞 3月25日
辺野古「停止指示」 安倍首相は知事と対話を

http://kumanichi.com/syasetsu/kiji/20150325001.xhtml

 沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、沖縄県と安倍晋三政権の対立が先鋭化している。
 23日は移設阻止を公約に掲げる翁長雄志[おながたけし]知事が、とうとう自らの権限行使に踏み切った。辺野古沿岸部で進められている全作業の停止を、沖縄防衛局に文書で指示した。異常な事態だ。
 翁長知事は「7日以内」と期限を区切り、それまでに防衛局から作業停止の報告がない場合、海底の岩石採掘や土砂採取など岩礁破砕に関する許可の取り消しに踏み込む決意も示唆した。「腹は決まっている」という知事の言葉に、覚悟のほどがうかがえる。
 だが、現場では24日も作業が続いた。知事の指示は無視された形だ。菅義偉官房長官は「現時点で作業を中止する理由は見当たらない。粛々と進める」と継続する方針を明確にしており、このまま指示に従わない公算が大きい。
 翁長知事が許可取り消しの判断を迫られるのは、時間の問題と言えようか。その場合、国は対抗措置として法廷闘争も辞さない構えだが、そうなれば沖縄県と国の対立は泥沼化するばかりだろう。少なくとも政府は、いったん作業を停止すべきではないか。
 そもそも、辺野古沿岸部での作業は昨年8月、仲井真弘多[なかいまひろかず]前知事が埋め立てに必要な岩礁破砕を許可したことに伴う。だが、その後の知事選で翁長氏が当選。県の調査で、許可区域外のサンゴを大型コンクリート製ブロックが傷つけていることが判明したとして、作業停止を指示するに至った。
 一連の経緯は表面上、法的で技術的な問題に見える。防衛局は24日、大型ブロックの設置は県の許可の「対象外」とする政府の説明文書を県側に提出。中谷元・防衛相は「沖縄県との合意に従って工事を進めており、本当に遺憾だ」と述べ、手続きの法的な正当性を強調した。しかし、問題はそれだけではない。もっと根深い。
 政府は、辺野古移設を容認した仲井真前知事の埋め立て承認を根拠に作業を進めているが、現在の沖縄が示す民意は辺野古移設阻止に大きく振れている。その先頭に立つのが翁長知事だが、安倍首相や菅官房長官は翁長氏との会談を見合わせたままだ。自分たちの意向に沿わない人とは話もしないという、政権の大人げない「圧力路線」が沖縄県民の心を逆なでし、対立を助長させている。
 翁長知事は作業中止指示の会見で「県民の理解を得ようとする政府の姿勢は大変不十分だ」と述べた。この言葉にこそ今回の問題の核心がある。ところが、政府からしきりに聞こえてくるのは「わが国は法治国家であり、法令にのっとり粛々と対応する」という型通りの言い方だ。これでは沖縄を突き放すことにしかなるまい。
 いま、政府がなすべきことは沖縄県との全面対決ではない。まずは安倍首相、菅官房長官が翁長知事と早期に対話することだ。これ以上、対立を激化させてはならない。政権の対応が鍵を握る。


・大分合同新聞 3月28日
辺野古移設で対立 政府は対話の扉を開け

(有料のため見出しのみ)


宮崎日日新聞 4月4日
菅・翁長氏会談 民意受け止め言葉を尽くせ

http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_11666.html

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐって、菅義偉官房長官が4、5日に同県を訪れ、翁長雄志知事と会談することになった。会談は初めてで5日に開かれる見通し。理解を求める構えの菅氏に対し、翁長氏は昨年の知事選や衆院選沖縄4小選挙区で辺野古反対派が全勝したことを挙げ、「民意ははっきり出ている」と反対姿勢を貫く。対立を深める国と地方。法廷闘争寸前にまでエスカレートする中、今回の「直接対話」は両者が歩み寄る糸口となるのか。注目し、国民全体で考えなければならない。
■激化する両者の対立■
 両者の対立が激化したのは、沖縄防衛局が海中に投入した大型のコンクリート製ブロックが、サンゴ礁を傷つけているという調査結果を市民グループが2月に明らかにし、その後、沖縄県が確認したことがきっかけだ。
 翁長氏は、埋め立てに向けて作業する沖縄防衛局に作業停止を指示。対する防衛局は、「作業停止指示」の取り消しを求め、行政不服審査法に基づき林芳正農相に審査請求するとともに、審査結果(裁決)までの間、指示の効力を止める執行停止も申し立てた。
 これに対し農相は「作業停止指示」の効力を一時的に停止すると決定。移設事業が大幅に遅れれば「日米両国間の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害といった回復困難で重大な損害が生じる」との防衛局の主張を認めた。
 審査請求に関しては、農相は4月23日を期限に県の意見を聞き、その後裁決するという流れだ。請求が認められれば「作業停止指示」は正式に取り消される。県は裁決の無効を求め司法手続きに入る可能性があるものの、政府内には「法廷闘争でも県の主張が認められることはない」との声がある。
■接点見いだし議論を■
 国と地方が対立する構図の中で注視しておきたいのは、選挙結果という民意が議論にどう反映されるかだろう。翁長氏は、辺野古移設反対を掲げて立候補した昨年11月の知事選で、埋め立てを認めた仲井真弘多前知事を下して当選した。会談を前に「多くの県民の負託を受けた知事として、辺野古に新基地を造らせないという公約の実現に全力で取り組む私の考えを政府に説明する」と強調。12月の衆院選でも、沖縄県4小選挙区で辺野古反対派が全勝している。
 一方の菅氏は、市街地にある普天間飛行場の危険性除去と抑止力維持の観点から、従来通り辺野古移設が「唯一の解決策」だと説明するとみられ、経済振興への考えもアピールする意向だ。
 だが、翁長氏は「民意を理解していただく」と真正面から臨むだろう。せっかくの「直接対話」が接点もなく進行しては意味がない。菅氏は、沖縄の人々の民意をどのように受け止めているのか率直に語ってほしい。民意を受け止めた上でどのような説明を尽くすのか、その言葉に耳を澄ませたい。


・南日本新聞 3月25日
[辺野古移設] 政府は話し合いの席に

http://373news.com/_column/syasetu.php?ym=201503

 沖縄県の翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部で進められているボーリング調査など一連の海底作業を1週間以内に停止するよう沖縄防衛局に指示した。
 指示に従わなければ、海底の岩石の採掘と土砂採取などの岩礁破砕に関する許可を取り消すことがあると警告した。
 だが、防衛局はボーリング調査に許可は不要と反論しており、政府が指示に従う可能性は低い。このままでは双方の対立の激化は避けられない。
 基地の負担軽減を目指した普天間飛行場の移設は本来、沖縄県民のためというのが原点だった。この原点に立ち返り、政府はいったん作業を中止して翁長氏らとの話し合いの席に着くべきだ。
 沖縄県は2月末、米軍や工事専用船舶以外の航行を禁じる臨時制限区域の外から潜水調査し、防衛局がボーリング調査再開のために投入した大型のコンクリート製ブロックが、岩礁破砕の許可区域外でサンゴ礁を傷つけているのを確認した。
 指示は、作業を停止させて調査する必要があると判断したためだが、翁長氏が公約とする辺野古移設阻止を本格化させた動きといえるだろう。
 これに対し政府は、大型ブロックの海中投下は「沖縄県から(漁業調整規則に基づく)手続きの対象とならない旨が示されている」との立場で、菅義偉官房長官は「現時点で作業を中止する理由は認められない」と述べた。
 強硬姿勢の背景には、工事を進め既成事実を積み上げることで県民世論を変化させようとの狙いが透けて見える。4月下旬に予定する安倍晋三首相の訪米をにらみ、移設計画を進める姿勢を鮮明にしなくてはとの判断もあろう。
 しかし、普天間飛行場の移設をめぐっては昨年1月、受け入れ側の名護市長選で辺野古移設反対の稲嶺進市長が再選。11月の知事選も反対派の翁長氏が初当選し、翌12月の衆院選では沖縄の4小選挙区で反対派が全勝している。沖縄県の民意は反対でまとまっているといって過言ではない。
 翁長氏は知事就任以降、移設問題を政府と直接協議するため6度も上京したが、安倍首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏との会談は実現していない。
 こうした政府の不誠実な対応が翁長氏を作業停止指示に駆り立てたのは間違いあるまい。
 普天間飛行場の返還で日米が合意して20年近くになる。依然として移設が進まない現実を直視して政府は対応を考え直すべきだ。


・The Japan Times 3月28日
Battle looms over Futenma

http://www.japantimes.co.jp/opinion/2015/03/27/editorials/battle-looms-futenma/#.VRYngvmsV8E

The standoff over construction of a replacement facility for the U.S. Marine Corps Air Station Futenma threatens to develop into an all-out legal battle between the Abe administration and Okinawa Prefecture as the national government ignores the local governor’s order to halt seabed drilling off Nago to reclaim land for the planned new U.S. military airfield. The administration should stop and think if such a confrontation — which would further complicate its relations with the prefecture that hosts the bulk of the U.S. military presence in Japan — would be a wise choice for the nation and its security alliance with the United States.

Gov. Takeshi Onaga, who was elected in November on a promise of halting Futenma’s relocation to the Henoko district off Nago in the northern part of Okinawa Island, ordered the Okinawa Defense Bureau — a part of the Defense Ministry — on March 23 to stop the work that changes the shape of the seabed, including the drilling, within a week on the grounds that concrete blocks sunk by the bureau outside the designated area — where permission had been given for breaking underwater rocks and coral reefs needed for the drilling and reclamation — had damaged coral reefs.

The governor warned that the prefecture would withdraw the permission for breaking underwater rocks — issued by his predecessor, Hirokazu Nakaima, in August — if the bureau refuses to comply. But the national government continued its work off Henoko and filed a complaint seeking to invalidate the prefecture’s order, calling it “gravely and obviously illegal.”

The Abe administration, apparently confident that it stands on solid legal grounds based on the prefecture’s approval given under Nakaima, seems ready to take the case to court if Onaga in fact cancels the go-ahead given by his predecessor.

The relocation of Futenma — agreed on between Japan and the United States in 1996 — was supposedly meant as a step to alleviate Okinawa’s burden of hosting roughly 75 percent of the bases solely used by the U.S. military in Japan, in the wake of a flare-up in anti-bases sentiments triggered by the rape of a local schoolgirl by three American servicemen the previous year. The promise to return the Futenma site to Japan, however, was given on condition that a replacement facility would be build also on Okinawa.

The Abe administration insists that building the new facility in Nago is the sole solution to removing the dangers posed by the Futenma base, which is located in a densely populated area of Ginowan in central Okinawa. Opponents of the plan say building a new U.S. military facility on the island would not reduce the burden on the prefecture.

The administration says it is proceeding with the reclamation work on entirely legitimate legal grounds. But the problem is that the approval for the reclamation work given by Nakaima in 2013 stands on shaky political grounds. His go-ahead for the plan contradicted a campaign promise in his re-election as governor in 2010 that he would seek to have the Futenma base relocated to outside of Okinawa.

The flip-flop, which came right on the heels of Abe’s promise of hefty government spending to promote Okinawa’s economy, angered local voters and cost him the governor’s job in November. Opponents of the relocation to Henoko also won the Nago mayoral race in January last year and swept the Lower House seats in Okinawa’s four constituencies in the December general election.

While the Abe administration has said it seeks Okinawa people’s understanding for the Futenma relocation, it does not seem deterred by the local voters’ will against the plan expressed in the elections. It began the seabed drilling last August — just as the prospect of Nakaima’s defeat in the November election loomed — and officials of the administration kept repeating that the work would proceed irrespective of the election outcome.

The drilling work resumed earlier this month despite the call by Onaga that the work be suspended while the prefecture reviews the legitimacy of the approval given by Nakaima. The administration, meanwhile, continues to give a cold shoulder to the new governor, denying him meetings with Abe or Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga when he visited Tokyo several times since taking office.

The Abe administration may think that the Okinawa governor will eventually back off, and local opposition will ease off, once it surges forward with the Henoko construction. It apparently hopes that proceeding steadfastly with on the Futenma relocation — which has been a thorn in the neck of Japan’s relations with the U.S. for nearly two decades — will contribute to solidifying the bilateral security alliance. There may be no time for the administration to slow down especially as Abe prepares a visit to the U.S. in late April.

But the government should consider whether the chilly relations with Okinawa — much less an all-out confrontation — and forcing the relocation over the opposition from the local administration and voters will in fact contribute to the stability of the security alliance. It should also question whether a plan rejected by so many local people truly serves the interests of Okinawa — which is supposed to be the very purpose of the Futenma relocation.




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おまけ

(少し前のだけど内容がよかったので消しがたく)


・徳島新聞 3月15日
辺野古調査再開 対立より対話が大切だ

http://www.topics.or.jp/editorial/news/2015/03/news_14263800260155.html

 防衛省が、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先としている名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向け、海底ボーリング調査を再開した。
 地元が反対する中での強行である。翁長雄志(おながたけし)知事をはじめ、県民が反発を強めるのは当然だろう。
 強引なやり方は、沖縄との溝を深めるだけだ。政府は対決姿勢を際立たせるのではなく、翁長知事らとの対話を始めるべきである。
 調査は地盤の強度や地質を調べ、飛行場の設計に反映させるためのものだ。
 昨年8月に始め、12カ所で完了したが、9月中旬から、悪天候や知事選への影響を考慮して中断していた。
 今回の再開に、翁長知事は「大変遺憾だ。あらゆる手法を駆使し、辺野古に基地をつくらせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と憤った。
 今年1月には、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認の是非を検証する有識者委員会を設け、検証中はボーリング調査を見合わせるよう防衛省に求めたばかりである。
 これに対し、菅義偉官房長官は「知事が代わったことで(埋め立て承認を)取り消すことはできない。粛々と進めていきたい」と語り、配慮するそぶりすら見せていない。
 政府の中には「手続きや工事が進めば、できたものはしょうがないという声も出てくる。県民世論も変わり得る」との見方があるという。
 既成事実を積み重ね、力で押さえつければ、反対運動はやがて下火になると見込んでいるのだろう。
 中谷元・防衛相は、夏ごろにも埋め立て工事に着手したいとの意向を示している。
 しかし、楽観的に過ぎるのではないか。
 沖縄では、移設計画が最大の争点となった昨年1月の名護市長選に続き、11月の知事選、12月の衆院選の沖縄4小選挙区全てで、辺野古反対派が勝っている。
 民意は明確であり、それを無視して推し進めるのは、怒りの火に油を注ぐようなものだ。反対の県民世論は一層高まろう。
 安倍晋三首相は、今年2月に行った施政方針演説で「引き続き沖縄の方々の理解を得る努力を続けながら、辺野古沖への移設を進めていく」と述べている。
 だが、翁長知事がこれまで7度上京したにもかかわらず、一度も会おうとしないのはどうしたことか。沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅長官も同様だ。
 さらに、「普天間飛行場負担軽減推進会議」も翁長知事の就任以来、開かれないままになっている。
 沖縄の米軍基地負担問題について、首相や関係閣僚が地元首長と協議する会合であり、前知事時代は、事務レベルの作業部会を含めると毎月開かれていた。
 知事選の意趣返し、沖縄いじめとも取れるやり方に、県民からは「露骨な嫌がらせだ」との批判が出ている。
 異論に耳を傾けず、意に沿わない人は排除する。そんな対応で理解が得られるわけがない。
 世界一危険とされる普天間飛行場を、固定化させてはならない。政府は、辺野古移設が「唯一の解決策」だというのなら、沖縄と話し合いの場を持ち、その理由をきちんと説明すべきである。


・山陰中央新報 3月13日
米軍普天間飛行場移設/対話の努力を払うべきだ

http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=551212033

 沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向け、沖縄防衛局が、昨年9月から中断していた海底ボーリング調査を再開した。これに対して翁長雄志知事は反対の姿勢を明らかにしている。政府はこのまま沖縄との対立構図を深めるのではなく、沖縄県民との対話の努力を払うべきだ。
 基地の負担軽減を目指した普天間飛行場移設は、そもそも「沖縄県民のため」が原点だった。この原点に立ち戻ると、強行策を取るのではなく、可能な限り翁長氏らとの話し合いに臨むべきだ。
 海底ボーリング調査が再開されたことについて、翁長氏は「大変遺憾だ。あらゆる手法を駆使し、辺野古に基地をつくらせないという公約の実現に向け全力で取り組む」と態度を硬化させている。
 翁長氏は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認の取り消しも視野に入れており、今年1月には、埋め立て承認の是非を検証する有識者委員会を設置し、検証中は海上作業を見合わせるよう防衛局に求めていた。
 一方、菅義偉官房長官は、海底ボーリング調査について「環境保全に万全を期しながら粛々と進める」と述べた。沖縄防衛局は地盤の強度や地質を調べ、設計に反映させる方針だ。
 沖縄防衛局は昨年8月に海底ボーリング調査を開始し、12カ所で調査を終え、翌9月中旬から、悪天候や11月の知事選への配慮などで調査を中断していた。埋め立て工事の着手時期について、中谷元・防衛相は「夏ごろ」としている。
 沖縄県は今年2月末、防衛局がボーリング調査再開のため海中に投入した大型のコンクリート製ブロックが、岩礁破砕の許可区域外でサンゴ礁を傷つけているのを潜水調査で確認したとして、許可の取り消しを検討している。今後、沖縄県と政府の対立が先鋭化する可能性が高い。
 政府側は「米軍の抑止力と普天間の危険除去を考えたときに唯一の解決策だ」として、移設を進める姿勢を崩さない。辺野古移設を「唯一の解決策」としたのは、日米両政府の合意だからだ。強行策の背景には、この合意を履行しなければ同盟関係にひびが入りかねないとの危機感もあるとみられる。
 一方で地元の状況は変化した。普天間飛行場の辺野古移設をめぐっては、昨年1月、受け入れ側の名護市長選で辺野古移設反対の稲嶺進市長が再選。11月の知事選では翁長氏が初当選し、翌12月の衆院選では沖縄4小選挙区で辺野古反対派が全勝している。沖縄県の民意は「反対」で明確になっていると言ってもいいだろう。
 知事就任以降、翁長氏は移設問題を政府と直接協議するために上京したが、安倍晋三首相や沖縄基地負担軽減担当相を兼ねる菅氏との会談は実現していない。安倍首相や関係閣僚が基地負担問題を地元首長と協議する「普天間飛行場負担軽減推進会議」も、翁長氏が知事に就任後一度も開かれず、凍結状態だ。
 1996年4月に日米両政府が普天間飛行場返還で合意してから20年近くになる。この間、移設が進まなかった現実を直視し、政府には対応を見直す必要がある。  

Posted by おちゃをのむ会 at 13:06Comments(0)辺野古

2015年01月30日

埋め立て承認の「取り消し」「撤回」おさらい

翁長知事はいますぐ辺野古埋め立て承認を撤回せよという意見をみかけた。
とくだん知事擁護をするつもりはないし、むしろ建設的な提言ならどんどんすべきと思う。説得力のある意見なら聞かれるだろう。もし知事側に意図的に無視するような態度が見えたら厳しく批判すべし。

と、その前に埋立て承認の「取り消し」「撤回」ってなんだっけ? できるの?できないの? メリットは?デメリットは?・・・という基礎知識をおさらいしたい、と図書館にダッシュ。

知事選直後の琉球新報2014年11月25日の紙面から2枚。よくまとまってる良テキスト。ほんと新聞ってエライよね。









取り消し、撤回をするとその後には国から代執行訴訟を起こされたり、損害賠償を請求される恐れがあることがわかる。代執行訴訟に負けた場合、それ以降の法的な手段はあるのか。損害賠償は回避できるのか、支払いが生じた場合払えるのか。。
記事を読んだだけでも、様々なパターンが想定され、それぞれの検証に時間がかかることは容易に推測できる。
ことはリアルに法律の問題であり、また法律と一般人の感覚はシビアに別モノだったりもする。
ピーポーはここにどのように関わる事ができるのか。

いろいろ書こうかと思ったけど、とりあえず資料提供にとどめておく事にする。
とりあえず知識を身につけることもできることのひとつと思う。最終的な勝利はどうしたら得られるのか。思考と行動の繰り返し。



印刷用に大きいサイズで必要な方はこちらからダウンロード。保存期間は今日から3日間。
1枚目 8.12 MB
http://firestorage.jp/download/853c353f20d10faa1b0c04b75a765025acb4fcdb   
2枚目 7.83 MB
http://firestorage.jp/download/6844aeac643ad952252a54d76e497ad33b3cfd03

もし期間切れちゃったけど欲しいって人いましたら適当に連絡を。

  

Posted by おちゃをのむ会 at 17:55Comments(0)辺野古

2014年12月20日

オナガ知事の高江に関する県議会初答弁をきいて

オナガさん、知事選挙のときは「高江のヘリパッド反対」って言ってたのに、県議会では「反対」って答弁しないなんておかしいんじゃない?
・・・というような声をツイッタで見かけました(いっこだけど)。今後も同じような反応はありそうだし、個人的に思うところを書いておきたいと思います。

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◆翁長知事の高江に関する答弁

「高江ヘリパッド反対」を明言して当選した翁長雄志氏の知事就任後、初の県議会が開かれている。16日には翁長知事の答弁で高江に関して初めての言及がなされた。
議会の録画で確認して文字起こしした実際の答弁は以下の通り。

「沖縄県としてはSACO合意事案の着実な実施が、本県における基地の整理縮小および地元振興につながることから、北部訓練場の過半の返還の実現を求めているものであります。その条件とされている6カ所のヘリ着陸帯の移設については、当該地域の自然環境や地域住民の生活への影響をめぐってさまざまな意見があるものと承知しております。オスプレイについては県民の不安は一向に払しょくされておりません。今後地元の意見もうかがいつつ、検討してまいりたいと考えております。」

(ちなみに沖縄タイムス16日ウェブ版の記事にある要約も実際の答弁とほぼ同じ内容。 http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=94972 )


初めはタイムスの記事をささっと一読して、正直「仲井真のときと全然変わってないじゃないか!」と早合点してしまった。が、落ち着いて読みかえしてみると微妙にニュアンスが変わっていることに気づいた。最後の「検討」という表現はこれまでにはなかったもの。それから地元に「さまざまな意見」の存在を認めている点。そしてそれを聞こうとしている。少なくとも仲井真県政時の推進姿勢ではないように思う。


◆前県政の姿勢はどうだったか

これまでの仲井真県政の高江ヘリパッド建設に対するスタンスは、大雑把にいえば「SACOに基づき進めていく」という推進・容認であった。

例えとして、今年7月の沖縄県議会(第3回定例会)での答弁を確認してみる。
嘉陽宗儀議員の「日米両政府に(高江ヘリパッド)工事の中止を強力に申し入れるべきではないか」という質問に対する又吉知事公室長の答弁は以下のようなもの。

「県としましては、SACO合意事案の着実な実施が本県における基地の整理縮小及び地元の振興につながることから、北部訓練場の過半の返還の実現を求めているものであります。その条件とされている6カ所のヘリ着陸帯の移設については、地元東村とも連携を図りながら、当該地域の自然環境や地域住民の生活に十分に配慮するよう求めてきたところであり、直ちに工事の中止を求める考えはありません。」
http://www2.pref.okinawa.jp/oki/Gikairep1.nsf/f2d4b51dfefc430f492567220015ee7a/bee25475794b935c49257d5000278c92?OpenDocument

高江に関しては概ねこのような答弁が繰り返されてきた。


◆「推進」からの転換 「検討」という表現

日米政府による「SACO」においては「北部訓練場の過半の返還」と「ヘリパッド移設」がセットで合意されているので、「SACOの着実な実施」と言うと訓練場の返還だけでなくヘリパッド建設(移設)を進めることを意味している。従来の県は「SACOの着実な実施」という言い方でヘリパッド建設推進を表明してきた。翁長知事の答弁が仲井真時代と変わらない印象を与えるのは、前段でこの「SACOの着実な実施」という言葉を使っているからで、自分もそこで早合点してしまった。
後段で「検討」を入れることで、答弁全体が「ヘリパッド移設を着実に実施し、(ヘリパッド移設を?)検討したい」というようなヘンテコな文章になってしまっているが、これはおそらく、とりあえず従来の答弁の内容を大きく変えはしないが、「検討」を滑り込ませることで、少なくとも「推進」ではないという姿勢を見せたかったからではないか。そのような文意に思える。知事本人は多忙であろうし、細かい点まではご愛嬌でよいと思う。
また、「地元」に「さまざまな意見」の存在を認めている点でも、従来の形式的な「地元東村とも連携」とは変化しているように感じる。

ここで、当該答弁を扱った沖縄タイムス、琉球新報の紙面から2紙の論調を確認してみよう。高江のブログで見ることができる。 http://takae.ti-da.net/e7073094.html

タイムスは、【着陸帯移設 地元聴取へ 知事「環境・生活に不安」】という見出しをつけて、答弁中の「地元の多様な意見」を聞く姿勢を強調している。知事がそこまで強く言ったのかはさておき、この辺りにこれまでとの違いを感じているように読む事ができる。
新報は、『東村高江の米軍ヘリパッド建設問題については「環境、住民生活への影響をめぐってさまざまな意見がある。地元の意見を聞き、検討したい」と述べた。』と後段の「検討」の方を特に強調はなく情報として載せている。こちらに着眼しつつまだ様子見の感もうかがえる。
ずっと高江の問題に取り組んでいる2紙が答弁のどこに比重を置いて報道したのかはある程度評価の目安にしてよいと思う。
個人的にこの件に関する2紙の報道の微妙なニュアンスには共感できる。


◆なんでハッキリ「反対」しないのか

そんなチマチマした言い方でなくバシッと反対してくれたらいいのに!と、「ヘリパッド反対」の翁長知事の答弁としては物足りなさを感じる人もいるかもしれない。というかそっちの方が多いかも。さらには「反対って選挙のときだけのリップサービスで、実はみんなを騙してるんじゃないの」などと不審はつのっていくかもしれない。

そもそも翁長氏の高江に対する態度はどのようなものであったか。確認してみる。
端的にいえば、翁長氏の知事選公約に「高江のヘリパッド建設反対」は入っていない。 http://onagatakeshi.jp/policies/this_time_policies/newpolicy006
ただ政策発表記者会見の記者との質疑応答の際に「ヘリパッドはオスプレイの配備撤回を求めている中で連動し反対する」旨の発言があった。これをもって翁長はヘリパッド反対と認識されている。
http://takae.ti-da.net/e6877624.html
http://takae.ti-da.net/e6889605.html

「公約には入ってないが反対」というか、「反対だが公約には入ってない」というか。。
この微妙なポジションはなんなのか、どういう理由でそうなのか。選挙続きであわただしかったのでその辺を知っていそうな人に落ち着いて聞くことができてなく、詳細は現時点で不明。本当はこれがわかれば話は早いのだけど。

わからないなりにその理由はいくつか推測できる。例えばそのうちのひとつは、実は今議会での答弁を引き出した質問の方にバッチリ書かれている。

今回の答弁を引き出した自民党(野党 反翁長派!)の座喜味一幸県議による代表質問は以下の通り。
「翁長知事は、東村高江のヘリパッド建設に反対するとしているが、反対の具体的な行動を起こすのか。また、辺野古移設では地元名護市が反対していることを理由としながら、東村が容認している高江のヘリパッドに反対するのは、政治姿勢として矛盾しないか。
http://www.pref.okinawa.jp/site/gikai/documents/1216situmonn.pdf

この質問の指摘する「地元首長の反対」の件は、たいへんイジワルながら、(狭義の「地元の反対」としては)当を得ている。辺野古新基地建設には地元名護市の稲嶺市長が反対を表明している一方で、高江のある東村の伊集村長はヘリパッド建設を容認している。翁長知事が辺野古に反対する際に「地元首長の反対」を理由のひとつにするなら、同じ理由で高江には反対しづらい。
推測ではあるが、高江を公約に入れられなかった理由のひとつにこの矛盾への対応があるかもしれない。

それなら本当は「ヘリパッド反対」も明言しない方が一貫しているとは思うけど、その辺の詳細はよくわからない。政策発表の場での発言というのは公約に匹敵するくらい重いものであると思うので、「ブレない」知事候補が集票のリップサービスにするにはリスクが高すぎる。革新系政党の議員さん方の踏ん張りでねじ込んだのかもしれないけど、それだって本人の納得なしにはありえない。言ったからには言うだけの何かしら理由や思うところがあるのだろうし、そこは好意的に受け取っていいと思う。


◆とりあえずは「検討」でOK 批判的視点は保ちつつ今後も様子見する 拙速な批判は避ける

今回の慎重な議会答弁では、明快な反対までは示すことができていないが、仲井真県政の推進姿勢からの転換は感じ取ることができるし、はるかにマシ。高江に対する基本的な態度としてとりあえずは良いと思う。
もちろん「検討」表現でただ誤魔化しているだけの可能性も捨て去れないので、妄信するのではなく批判的視点は持ち続けるべき。
今後、県の関わる案件として、集落道路の工事車両の通行の件、テントのある路肩を日米共同使用に変更する件、赤土やアセス関連、ほか具体的に出てきたときに、各部署がどのような対応になるのか。何か変化はあるのか。様子を見たい。

参考までに18日の新報によると、『自民幹部からは「早くも『反対』から『検討』へと変更している。与党も指摘するべきではないか」と批判が上がる。』だそうで、高江は野党(自民)側にとって知事攻撃のネタに位置づけされている。しかも「オール沖縄」体制に亀裂を入れる意図で。これに乗るように一緒になって翁長不審を助長することは自分たちの目的の達成に近づくのかそうでないのか、慎重に考えたい。
またこの記事からは逆に、与党(親翁長派)からは知事の高江に関する答弁には批判が出ていないことがわかる。あの答弁がとりあえず今の段階では納得すべきラインであるとの了解があるのではないか。


ちなみに今議会では、与党の渡久地修議員(共産党)からも、「高江のヘリパッド建設に反対し、工事の中止を求めるべきではないか。」というシンプルな質問がされており、翁長知事は全く同じ答弁をしている。


◆知事を支えることで目的を達成したい (というか他に方法があったら教えて)

上記の「地元首長の反対」の件だけをとってみても、翁長知事が議会で明快に「ヘリパッド反対」と言えないことを本人だけの責任にするのは、少し筋が違うように思う。例えば東村長のヘリパッド容認姿勢が変わるように県民が努力する事で知事を援護することができる。そのような環境は一足飛びに作れる訳ではなく、地道な積み重ねの延長上にしかない。
省略するが、東村議選、知事選、衆院選の結果などを見ても、堅固な保守地盤である東村でも風向きが少しずつ変わってきている兆候がうかがえる。地道な積み重ねの成果が現れ始めているのだと、長年高江を見続けてきた自分には感じられる。

高江は辺野古と同じく日米間の合意で進められている国策であるので、ひっくり返すことは容易くはない。座り込み8年目にして初めて誕生した「ヘリパッド反対」の知事であるので、最大限支えながら、日々のできることを模索したい。

ずっと辺野古や高江、また沖縄の諸問題に携わってきた先輩方から、「しなやかに したたかに ねばりづよく」という言葉を最近聞いた。
この3つの姿勢はどれもとてもうなづけるもの。先輩方は見事に実践し続けており、たいへん学ぶところが多い。一つひとつ、丁寧にねばりづよく行きたい。

翁長体制はその成り立ちからして、支える人たちの姿勢ひとつで簡単に亀裂が入ってしまう危険性が常に伴う。
何か不審が生じたときには、黙ったり黙らせたりするのではなく、そのつど冷静にコミュニケーションをとることで上手くやっていけたらいいなと思いつつ。

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政治素人の一般人の書き物ですので、間違いなどあるかもしれません。もしくはぜーんぶ検討違いだったりして。適当に参考にしたりしなかったりして下さい。

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Posted by おちゃをのむ会 at 23:26高江