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2015年04月21日

全国の新聞も盛り上がってきたね

辺野古の問題は難しくて何が正しいのかわからない・・という人は、とりあえず以下に列挙した社説を流し読みして、全国の新聞社が現在この件にどういう見解をもっているのか(何に肯定的で何に否定的なのか)、参考にしてみたらいいかもね。

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17日に翁長沖縄県知事と安倍首相の会談が初めて行われた。注目度は高く、全国で多くの新聞が社説にとりあげている。というか首相が会談を拒絶し続けてきたために逆に注目度が上がってしまったような。
政府寄りの論調は読売、産経、日経の全国紙のみで、温度差はあるもののそれ以外の新聞はすべて沖縄の主張に共感する論調。しかも単なる基地移設問題に留まらない視野を広げた記述が多く見られる。翁長知事が真っ当な主張を堂々と展開したことが、明らかに大きく影響を与えている。知事の首相に向けた発言は、同時に全国に向けた発言でもある。


翁長知事の発言骨子を18日の琉球新報から引用。概ね重要なポイントはここにまとめられている。

全国の新聞も盛り上がってきたね

(いちおう発言全文は沖縄タイムスのこちら http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=112136


政府寄りの読売、産経、日経は、見事なまでに知事発言から目を逸らした。これは知事発言にまともな回答ができなかった(しなかった)首相の姿勢と重なる。
それ以外の新聞は知事発言を受け止めながら見解を示している。辺野古の件は単なる基地移設の問題ではなく様々な背景があるということが、ようやく県外の新聞からも意識されるようになってきた。よい兆候。


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【全国紙】

朝日新聞
安倍・翁長会談―まだ「対話」とは言えぬ


 「私は絶対に辺野古新基地は造らせない」
 安倍首相との会談をようやく実現させた沖縄県の翁長知事は、一段と強い言葉で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する意思を示した。
 「沖縄の方々の理解を得る努力」を何度も口にしながら、翁長氏の要請を4カ月も拒んできた安倍首相は、先に会談した菅官房長官と同様、「辺野古への移転が唯一の解決策と考えている」と繰り返した。対話はまた平行線をたどった。
 安倍首相は26日から訪米を予定している。戦後70年の節目に日米同盟の深化を世界に示す狙いがある。沖縄県知事と会談することで、政権が普天間問題に積極的に取り組んでいる姿勢を米側に伝えられる、という目算も働いたのだろう。
 だが今回の会談を、政権の「対話姿勢」を米国に印象づけるための演出に終わらせてはいけない。
 安倍政権と沖縄県との対立は険しさを増すばかりだ。首相は打開の糸口を見いだせない現状を直視し、翁長知事が求めた通り、オバマ米大統領に「沖縄県知事と県民は、辺野古移設計画に明確に反対している」と伝えるべきだ。
 「粛々」と移設作業を続けている政権が「対話」姿勢をみせる背景には、国内で沖縄問題への関心が広がっている面もあるだろう。米国でも「移設は順調に進むのか」という懸念が一部でささやかれているという。
 沖縄県は4月からワシントン駐在員を置いた。5月にも翁長知事自身が訪米して直接、移設反対を訴える。
 翁長知事は今回も「沖縄は自ら基地を提供したことはない」と、米軍による土地の強制接収や戦争の歴史に言及した。この言葉が含む史実の重さを、首相はどう感じただろうか。
 菅官房長官との会談で出た翁長知事の言葉は、小手先の経済振興策による解決を拒絶した歴史的メッセージだと、県民の評価は高い。
 そのメッセージはまた、昨年の名護市長選、県知事選、総選挙で移設反対の民意が繰り返し示されながら、無視し続けてきた政権への怒りを、米軍統治下の自治権獲得闘争と重ねてみせた。それは地域のことは自ら決めよう、という自己決定権の主張でもある。
 政権が本気で「粛々」路線から「対話」路線へとかじを切るというのなら、ボーリング調査をまず中断すべきだ。そうでなければ対話にならない。


毎日新聞
首相と沖縄知事 形だけに終わらせるな


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が初めて会談した。今回の会談を形だけのものに終わらせず、政権と沖縄の政治対話を継続すべきだ。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設反対を掲げる翁長氏が知事に就任して4カ月余り。この間、安倍首相は翁長氏との会談に応じず、沖縄の態度の変化を促そうとするように冷遇し続けた。長い空白期間だった。
 今月に入り、菅義偉官房長官が5日に那覇市で翁長氏と初会談したのに続き、首相官邸で安倍首相と翁長氏の会談が実現した。ここへ来て政府が急に動き出したのは、安倍首相が訪米し28日にオバマ大統領と会談するのを前に、沖縄に理解を求める政府の努力を米国の政府や議会向けに示す狙いがあるのだろう。
 たとえ政治的な演出であったとしても、会わないよりはずっといい。対話なしに物事は進まない。
 会談の内容そのものは平行線だった。安倍首相は、普天間の危険性除去のため「辺野古移設が唯一の解決策」だと改めて強調した。翁長氏は「県外移設公約をかなぐり捨てた前知事が埋め立てを承認したことを『錦の御旗(みはた)』として、政府が辺野古移設を進めている」と批判した。
 首相は「これからも丁寧に説明しながら理解を得る努力を続けていきたい」とも語った。政府が辺野古移設をどうしても進めるというなら、口で言うだけでなく、最低限、沖縄への丁寧な説明を実行すべきだ。
 沖縄からは安全保障上の必要性に対する疑問も出ている。「安全保障環境が変化する中で、辺野古に新基地を作って、将来も長期にわたって米海兵隊が駐留する必要があるのか」という問題提起だ。
 政府は、沖縄県の尖閣諸島をめぐる対立など中国の海洋進出をにらみ、抑止力を維持するために辺野古移設が必要というが、沖縄の人たちは必ずしも納得していない。議論を深める必要がある。
 防衛省沖縄防衛局が辺野古沖に沈めたコンクリート製ブロックがサンゴ礁を破壊しているとみられる問題についても、県が求める現地調査や資料提供に応じ疑問に答えるべきだ。
 仲井真弘多(ひろかず)前知事が埋め立て承認の際に安倍首相と約束したとしている「普天間の5年以内の運用停止」などの負担軽減策が実現可能かどうかも、明確にしなければならない。
 政府と沖縄の間には、全閣僚と知事が米軍基地問題や振興策について話し合う沖縄政策協議会があるが、翁長知事になって開かれていない。協議会の再開を含め、政権と沖縄が定期的に話し合う仕組みを早急に動かすべきだ。


読売新聞
首相VS沖縄知事 建設的対話重ねて接点を探れ


 政府と沖縄県の立場の隔たりは大きいが、建設的な対話を重ねる中で、接点を探るべきだ。
 安倍首相が沖縄県の翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場の辺野古移設について「唯一の解決策だ」と述べ、理解を求めた。
 首相は、「一日も早い危険性の除去では、我々も沖縄も思いは同じだと思う」とも強調した。
 翁長知事は、「唯一の解決策という頑かたくなな固定観念」に縛られるべきではないと反論し、移設作業の中止を求めた。今月下旬の首相の訪米にも言及し、「知事と県民が明確に反対している」ことを米側に伝えるよう要請した。
 対立点を確認しただけだが、2人が初めて率直に意見交換した意味は小さくない。政府と県は、対話を継続し、まずは一定の信頼関係を築くことが大切である。
 翁長知事は今月5日の菅官房長官との会談で、辺野古移設を巡る政府の対応を「上から目線」「政治の堕落」などと非難した。
 だが、相手を批判するだけでは、沖縄の米軍基地負担の軽減という共通の目標は進展しない。
 翁長知事が3月下旬、県漁業調整規則に基づき、移設作業の停止を防衛省に指示したのに対し、関連法を所管する林農相が指示の執行停止を決定した。
 防衛省は、移設作業に伴い辺野古沖に投入したコンクリート製ブロックについて「サンゴ礁などの生態系に大きな影響は与えていない」との見解を公表している。
 翁長知事は法廷闘争も辞さない構えだが、移設作業を停止させる見通しは立っていない。政府との対立を一方的に深めるだけでは、県民全体の利益になるまい。
 沖縄周辺では、中国が軍事活動を活発化させている。2014年度の自衛隊の中国機に対する緊急発進(スクランブル)は、過去最多の464回に上った。中国公船の領海侵入も常態化している。
 在沖縄米軍の重要性は一段と増した。抑止力の維持と住民の負担軽減を両立する辺野古移設は、現実的かつ最良の選択肢だ。
 安倍首相は会談で、米軍基地の返還に加え、那覇空港第2滑走路建設などの地域振興策を着実に推進する考えを改めて示した。
 沖縄では28年度までに、計1048ヘクタールにも上る県南部の米軍施設が順次返還される予定だ。仮に辺野古移設が停滞すれば、この計画も大幅に遅れかねない。
 政府は、辺野古移設の意義と重要性を地元関係者に粘り強く説明し、理解を広げねばならない。


産経新聞
安倍・翁長会談 危険性除去へ責任果たせ


 米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と移設に反対する翁長(おなが)雄志(たけし)沖縄県知事との初会談が行われた。
 主張は平行線をたどったものの、国と沖縄県のトップ2人が直接、意見を交わした意義は小さくない。話し合いを継続する意向を双方が示したのもよかった。
 日本と沖縄の安全保障がかかる移設実現への道のりは、なお険しいが、双方の意思疎通を保ちながら、粘り強く協議を重ねていく必要がある。
 首相は会談で、辺野古移設を「唯一の解決策だ」と伝え、「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と語った。これに対し、翁長氏は「絶対に辺野古に新基地は造らせない」とし、「固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と要求した。
 世界一危険とされる普天間の危険性を除去し、沖縄の基地負担軽減を進める。さらに日米同盟の抑止力を保ちながら安全保障を確かなものにする。この3点が課題であることは変わりようもない。
 首相と翁長氏の間でも、この問題意識が共有されなければ、協議の進展は難しい。3点を実現できる案として、政府が苦慮した末に見いだしたのが、辺野古移設なのである。
 翁長氏は辺野古移設反対をオバマ米大統領にも伝えてほしいと主張し、代替案を示すべきではないかとの疑問が生じることについては「こんな理不尽なことはない」と語った。
 それでは普天間の住民の安全を確保できない。抑止力を維持する観点からも大いに疑問である。
 沖縄の基地負担は、日本やアジア太平洋地域をはじめとする世界の平和に役立っている。政府や国民が、そのことを十分認識し、負担軽減に努めるのは当然だ。
 同時に、移設後に辺野古に残る米海兵隊は、台頭する中国の軍事的横暴は許さないという日米両国の意志を示す存在であることも考えておく必要がある。
 会談は30分強で、安全保障を論じるには時間が足りなかった。首相をはじめ政府与党は、今後もさまざまな機会を通じ、翁長氏や沖縄関係者に、辺野古移設がなぜ唯一の解決策かを説くべきだ。
 中国が奪取をねらう尖閣諸島のある県の首長として、翁長氏には基地負担を通じ、平和に貢献している意識も持ってほしい。


日本経済新聞
首相と沖縄知事は粘り強く対話を重ねよ


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事が昨年の知事選後、初めて会談した。双方が主張をぶつけ合うだけの平行線に終わったが、顔を合わせないよりはるかによい。粘り強く対話を重ねて信頼関係を築けば、必ず道は開けるはずだ。
 約35分間の会談のほとんどは、沖縄県宜野湾市にある米軍普天間基地の同県名護市辺野古への移設の是非に費やされた。
 普天間基地は住宅密集地の真ん中にあり、不測の事態がいつ起きても不思議ではない。2004年には米軍のヘリコプターが基地に隣接する沖縄国際大のキャンパスに墜落する事故があった。
 会談で首相は名護市への移設を「唯一の解決策」と説明した。現実を踏まえれば、人口が比較的少ない辺野古への移設によって危険性を低減させる日米合意は妥当といえるだろう。
 知事は「沖縄がみずから基地を提供したことはない」と反論し、普天間基地の無条件での返還を求めた。さらに月末の日米首脳会談で沖縄が移設に反対していることをオバマ大統領に伝えるよう要求した。知事自らも近く訪米して米政府にじかに働きかける意向だ。
 双方の溝を埋めるのは容易ではないが、協議を続ける姿勢が互いにみられたことは評価できる。首相は会談で「理解を得るべく努力を続けていきたい」と述べた。菅義偉官房長官は記者会見で「この会談を機会に対話を重ねたい」と力説した。
 そもそも会談は4月上旬に沖縄を訪れた菅官房長官に、知事が首相と直接対話したいと語ったことで実現した。
 1996年に普天間返還で米政府と合意した橋本龍太郎首相は、当時の沖縄県知事だった大田昌秀氏と短期間に20回近くも会った。大田氏は結局、普天間代替施設を県内につくることに同意しなかったが、橋本氏の真摯な姿勢は県民にも評価する声があった。
 安倍政権もこうした共感を沖縄県民の間に生み出すことができるか。知事を説得するにはこうした地道な努力が欠かせない。
 政府と沖縄が話し合うべきは基地問題だけではない。自衛隊と民間が共用する那覇空港は分刻みで飛行機などが離着陸している。滑走路の増設は南西諸島の防衛にも、沖縄の経済振興にも役立つ。
 普天間移設問題でこうした協議にまで支障が生じたら、政府にも沖縄県にもマイナスだ。



【ブロック紙】

北海道新聞 
安倍・翁長会談 沖縄の声は聞こえたか


 安倍晋三首相がきのう沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事と初めて会談した。
 沖縄県の米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する計画をめぐり意見交換した。翁長氏が計画への反対を表明したのに対し、首相は現行計画を「唯一の解決策」とし、主張は平行線のままだった。
 首相はあまりに一方的ではないか。過剰な基地負担に苦しむ沖縄の声を率直に受け止め、柔軟な姿勢で解決を図るべきだ。
 翁長氏は「選挙で辺野古新基地反対という圧倒的な民意が示された」と述べた。前知事の承認を理由に工事を進める政府への抗議を、首相は重く受け止めるべきだ。
 首相の「一日も早く普天間の危険除去が必要」「普天間の固定化はあってはならない」という主張は沖縄県民の心に響かない。
 沖縄に寄り添うふりをしながら、実際は政府の方針を押しつける口実にしているからである。理解を得たいなら、納得できる負担軽減の道を明示することだ。
 首相が注意を払うべきは「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか、嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」という翁長氏の訴えである。
 太平洋戦争で沖縄は犠牲者20万人を超す地上戦の場となった。日本の主権回復と同時に沖縄は米軍施政下に残された。復帰から40年以上を経た現在も在日米軍基地の74%が集中する。
 沖縄が日本のために払った犠牲をどう考えるのか。この問いに対する答えなくして、和解は考えられない。「国家の意思に従え」という単純な論理ばかりを振りかざす首相は認識を改めるべきだ。
 今月下旬には日米首脳会談が予定されている。翁長氏は辺野古移設反対の沖縄の民意を米国に伝えるよう要請した。
 米国の意向を沖縄に押しつけるが、沖縄の意を受けて米国を説得しようとはしない。これが日本政府の一貫した態度だった。
 米国内でも沖縄への過度な米軍基地の集中に懸念が出ている。辺野古移設とは別の方策を米国とともに模索するのが首相の責務である。県外、国外への移設を目指すのがあるべき道だ。
 首相と知事の対話は頻繁に続けるべきだ。だが、首相がかたくなな態度で臨むのでは、理解を得る努力をしているという「アリバイづくり」と見られても仕方ない。
 「上から目線」で基地建設を一方的に進めるのではなく、謙虚な態度で話し合うことが肝心だ。


河北新報
首相・沖縄知事会談/長い対話の始まりと心得よ


 会おうと思えば会える首相と知事の会談が大々的に報じられること自体、異常なことと言わざるを得ない。いかに政府と地元の間に解決の難しい懸案を抱えていようとも、いやそうであればこそ、積極的に対話を重ねる必要があるわけだから。
 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう、官邸で会談した。昨年12月に翁長氏が知事に就任して以来、初めてだ。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設計画をめぐり、安倍政権と沖縄県が鋭く対立、翁長氏が上京の折、再三会談を求めながらすれ違いに終わっていた。
 そういう経緯を踏まえれば、会談にこぎ着けたことを前向きに捉えるべきだろう。難題解決への糸口を見いだす確かな一歩としたい。
 そうした期待の一方で、冷静に受け止める必要もある。会談が形式の域を出ない恐れがあるし、むしろ解決をより難しくしてしまう要素をもはらんでいるからだ。
 初会談でその表情が物語るごとく、双方の姿勢はかたくなで、政府側にはややもすると会談実現を推進のてこにしたい思惑が見え隠れする。
 一方的に会談を拒否しているイメージを払拭(ふっしょく)、とりあえず一度会談の機会を持ち、対話の姿勢を世論にアピールする狙い、そして、26日からの訪米を前に会談実現の実績を示し、気をもんでいるはずのオバマ米大統領にも移設に向けた環境整備に積極的に取り組んでいる努力の跡を示す狙いである。
 そうした指摘は的外れとばかりは言えまい。菅義偉官房長官は16日の記者会見で「先方(沖縄県側)の要望を踏まえ、会談を行うことにした」と発表。打開に向け舞台を回す熱意を感じ取れなかった。
 翁長氏は会談で「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された」と、計画の撤回を求めた。
 安倍首相は普天間の危険性除去、沖縄振興策や負担軽減策に触れながら、「辺野古移設が唯一の解決策」と強調、移設の方針が揺るがないことをあらためて示した。
 初のトップ会談は平行線に終わった。計画に固執し、会談をステップにする形で作業を進め既成事実を積み上げるようでは、沖縄県民の感情を逆なでし、調整を遠ざけて根本的な解決をより難しくすることになるだろう。日米の同盟関係にも傷がつこう。
 政府と沖縄県の溝は深く、一度や二度の会談で、双方が歩み寄り、妥協が図られる課題ではない。ましてや調整を経ない30分ほどの話し合いで大きく進展するはずもない。
 一筋縄にはいかないことを覚悟し、政府は当面、建設に向けた海底ボーリング調査の作業を中断し、精力的に話し合いを重ねるべきである。
 会談を都合よく解釈し、地元に「礼は尽くした」と言わんばかりに事を急ぐような対応は避けねばならない。関係修復を閉ざし、解決不能の決定打になりかねないからだ。
 まずは会談を「終えた」と捉えるのではなく、米政府の理解も得つつ、落としどころを探る長い協議が「始まった」と受け止めたい。


中日新聞 東京新聞
翁長・首相会談 沖縄の声、米に伝えよ


 沖縄県名護市辺野古での米軍基地新設を阻止する翁長雄志知事の決意を、安倍晋三首相は誠実に受け止めたのか。単に聞き置くのではなく、訪米の際、オバマ大統領に直接伝えるべきではないか。
 翁長氏が昨年十一月の県知事選で初当選を果たして以来、初の首相との会談である。首相は、これまで会談実現に至らなかった非礼を、まずは猛省すべきだろう。
 翁長氏は首相に「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的民意が示された」「私は絶対に辺野古に新基地は造らせない」と、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古への県内「移設」を阻止する決意を伝えた。
 昨年の知事選や、辺野古容認に転じた自民党元職候補が県内四小選挙区のすべてで敗北した十二月の衆院選の結果を見れば、県内ではこれ以上の米軍基地新設を認めない県民の民意は明らかだ。
 県民を代表する翁長氏が、県民の意思を伝えるのは当然である。
 首相は翁長氏に辺野古への県内「移設」が「唯一の解決策だ」と述べた。方針を変えるつもりはないのだろう。翁長氏の訴えに耳を傾ける姿勢を示しただけで、本格着工に向けた作業をこのまま強行するのなら、あまりに不誠実だ。
 沖縄県民が米軍基地新設に反対する背景には、米軍統治時代に米軍用地を「銃剣とブルドーザー」で住民から強制的に収用した歴史や、在日米軍基地の約74%が今も沖縄に集中し、県民が重い基地負担を強いられている現実がある。
 首相に必要なことは、県民の理解を得て辺野古「移設」を強行することではなく、辺野古「移設」の困難さを認め、政府の責任で代替策を検討することだ。
 世界一危険とされる普天間飛行場を一日も早く閉鎖して、日本側に返還することは当然である。
 しかし、政府側が、辺野古「移設」を認めなければ普天間の危険性は残ると脅したり、辺野古を拒むのなら沖縄県側が代替案を出すべきだと迫るのは、翁長氏の指摘通り、あまりにも「理不尽」だ。
 首相は二十六日から訪米し、オバマ大統領と会談する予定だ。その際、翁長氏が言及した県民の率直な思いや苦難の歴史、沖縄の政治状況を伝えることも、首相の重要な職責ではないのか。
 首相が寄り添うべきは日本国民たる沖縄県民である。県民や知事の声に耳を傾け、まずは辺野古での作業を中止すべきだ。それが沖縄県民の信頼を回復するための第一歩である。


中国新聞
首相・沖縄知事会談 「対米ポーズ」では困る


 平行線は変わらなかった。安倍晋三首相と、沖縄県の翁長雄志知事との初会談である。知事が就任して4カ月、遅まきながらも顔合わせが実現した。
 首相からすれば月末のオバマ米大統領との首脳会談を前に、対話姿勢をアピールしておきたい思惑もあろう。話し合いができた点はよしとしたいが、単なる対米ポーズに終わらせるなら許されない。政府として沖縄の声をきちんと聞いていく新たな出発点にすべきであろう。
 会談の内容を見る限り、双方の立ち位置や考え方に相当の隔たりがあることを、あらためて感じざるを得ない。

 首相は米軍普天間飛行場を名護市辺野古沖に移設する計画について、あらためて理解を求めた。市街地にある普天間の危険を除くためには辺野古移設が唯一の解決策だと、従来の見解を繰り返した。つまり沖縄にとっては「ゼロ回答」だろう。 これに対し、翁長氏は「私は絶対に辺野古に基地を造らせない」と撤回を求めた。「自ら土地を奪っておきながら、嫌なら代替案を出せというのは理不尽だ」と強調した。
 対話の継続こそ合意したものの、依然として事態打開には程遠い状況である。
 その原因は、やはり政府側にある。首相は「これからも丁寧に説明し、理解を得るべく努力する」と述べたが、まっとうな話し合いをするつもりなら、まず相手が嫌がることをやめてからが筋ではないか。
 海上作業によってサンゴ礁が損傷した問題をめぐり、国と県の対立が深まっている。まず必要なのは辺野古沖の埋め立てに向けた作業を当面、見合わせて交渉の土台をつくることだ。
 それに限らず安倍政権はこれまで沖縄の神経を逆なでするような姿勢を取ってきた。前知事による埋め立て承認の是非を争点にした知事選で翁長氏が圧勝してもどこ吹く風だった。沖縄から見れば「上から目線」にほかならない高圧的なスタンスをはっきりと改めるべきだ。
 一方、きのうの会談で米国を巻き込む問題が再びクローズアップされたのは確かだろう。前知事が承認の前提として国と約束した普天間飛行場の2019年2月までの運用停止である。日米協議の場で米国から「空想のような見通し」と批判が出たという。少なくとも日本側が強く働きかけた節はない。なのに首相は「引き続き全力で取り組む」と述べた。この問題においても従来のような不誠実な姿勢を続けるなら、沖縄の不信感がさらに強まることを政府側は十分に認識すべきだ。
 沖縄戦終結から70年。原点から向き合うべきは日本の安全保障政策が沖縄の犠牲の上に成り立ってきた現実ではないか。戦後は日本の国土の0・6%という狭い島に米軍専用施設の74%が集中するほどの過剰な基地を押し付けたままだ。こうまで住民に負担を強いながら、安全保障政策は国の専管事項だからと基地の地元自治体が口を挟めないどころか、民意が封殺されることがこれ以上許されるのか。
 政府側は首相と知事が頻繁に会うのは困難というが、厳しい状況だからこそ直接対話が意味を持つ。例年首相が出席する6月23日の沖縄慰霊の日も近い。こうした機会もとらえ、膝詰めの議論を重ねてほしい。


西日本新聞
首相と沖縄知事 痛みへの共感が第一歩だ


 次につながる有意義な会談だったのか。それとも、単なるセレモニーに終わったのだろうか。
 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう、首相官邸で会談した。2人が会談するのは、昨年12月に翁長氏が知事に就任して以来、初めてのことである。
 懸案の米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設問題で、安倍首相が「(名護市)辺野古への移転が唯一の解決策と考えている」と辺野古移設に理解を求めたのに対し、翁長知事は「私は絶対に辺野古に基地は造らせない」と応じ、あらためて拒否の姿勢を鮮明にした。
 会談が平行線に終わるのは予想されていたことだ。最も気になるのは、この会談が安倍首相と翁長知事との信頼関係構築の第一歩となったか、という点である。
 安倍首相がここへ来て翁長知事との会談に応じたのは、26日からの訪米日程が迫っていることが理由の一つとされる。オバマ大統領との首脳会談を前に、普天間移設に積極的に取り組んでいる姿勢をアピールしたい-。政権側にはそんな思惑があったのではないか。
 もし首相の知事説得が米国向けのポーズで、本音は沖縄の反対を意に介さず、強引に移設を進めるつもりなら、その底意は沖縄側に簡単に見透かされるだろう。
 翁長知事は、普天間飛行場が米軍占領下で強制的に用地を接収され、日本政府が追認した経緯を念頭に「土地を奪っておきながら、世界一危険だからとか言って(移設先を)沖縄が負担せよ、嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と訴えた。
 安倍首相が最初にすべきなのは、極端な基地の集中と日米地位協定がもたらす数々の理不尽によって、沖縄の人々が日々感じている痛みと怒りに、心からの共感を示すことではないだろうか。
 安倍首相には日頃、自分と違う意見を切り捨てるような言動が目立つ。それでは相手との間に信頼が生まれず、困難な課題をともに解決していく道筋もつかない。
 首相の沖縄への共感こそが、普天間問題解決の大前提だ。



【地方紙】

秋田魁新報
安倍・翁長会談 解決へ何度でも対話を


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が初めて会談した。安倍政権と沖縄県の対話は、5日の菅義偉(よしひで)官房長官と翁長氏の会談に続き2度目だ。
 辺野古移設を進めたい政権と、断固拒否する沖縄県の主張は再び平行線をたどった。可能な限り何度でも対話を重ね、解決への糸口を見いだすべきだ。
 首相は会談で、菅氏と同じく辺野古移設を「唯一の解決策」とし「丁寧に説明し、理解を得るべく努力したい」と述べた。翁長氏は「絶対に辺野古に基地は造らせない」と反論。「(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは理不尽」と応じた。
 翁長氏は昨年11月の知事選で辺野古移設反対を訴え、移設を容認した前知事を退けて初当選した。政権は翁長氏との対話を避け続け、移設に向け沖縄防衛局が進める辺野古沿岸部の海底作業をめぐって沖縄県との対立を深めた。そうした中で行われたのが、5日の菅氏と翁長氏の会談だった。
 この会談でも主張は全くかみ合わなかった。対話継続では一致し、翁長氏が首相との会談を求め、菅氏が検討するとしたのが数少ない成果だった。
 菅氏に続き首相も翁長氏との会談に応じたことで、沖縄県側に一定の配慮を示したように映る。
 ただ首相が翁長氏との会談を決めた背景には、政権が沖縄県の理解を得るため意を尽くしていると米国にアピールする狙いがある。
 首相は26日に訪米する。首脳会談などを通じ、日米同盟関係の強化を発信したい意向だ。沖縄県民の政権不信が反米感情の高まりに発展するのではないかという米国の懸念を、訪米前に少しでも払拭(ふっしょく)したい考えだ。
 翁長氏もそうした意図は見抜いている。首相との会談で「県民は移設に明確に反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」と要望した。政権の言い分のみを伝えることがないよう、くぎを刺した。
 首相には日米合意に基づく辺野古移設という崩せない枠組みがある。翁長氏は知事選に加え、沖縄県の4小選挙区全てを移設反対派が制した昨年の衆院選の民意を背負っている。
 普天間の「危険性除去」について首相は「われわれも沖縄も思いは同じ」と述べた。しかし問われているのは、普天間の代替施設を沖縄県内に新たに造ることの是非である。日米合意の再考にまで踏み込まなければ、政権と沖縄県の歩み寄りはあり得ない状況だ。
 翁長氏は「辺野古移設が唯一の解決策という固定観念に縛られず、作業を中止してほしい」と訴えた。政権にとって辺野古移設以外の選択肢は、本当に考えられないのか。沖縄県の願う「基地負担軽減」が何を指すのか、政権はいま一度、見詰め直す必要がある。


岩手日報
安倍・翁長会談 「なぜ」に明解な説明を


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設阻止を目指す翁長雄志知事が昨年12月の就任以来、再三にわたり要望してきた安倍晋三首相との会談が実現した。
 結果は予想通りというべきか、双方の主張は平行線。菅義偉官房長官が語る通り、会談そのものに意義は認められるにせよ、首相訪米を目前に米側への顔向けを意図したセレモニー的な意味合い以上の成果は見いだせない。
 今月初めの翁長氏と菅氏の初会談では、菅氏の方が沖縄を訪れた。「(移設計画を)粛々と進める」との菅氏の物言いに、翁長氏が「上から目線」と反発するなど、政府側には分が悪かった。
 今回、知事が官邸に国権の最高権者を訪ねたのは、国策に物言う立場の礼儀には違いない。しかし事態をこじれさせた原因は民主党政権下、鳩山由紀夫首相の「最低でも県外」発言の撤回を典型として国政の側にもある。
 知事選はもとより、同県内の各種選挙で示された直近の民意は「反・辺野古」一色。「県外移設」の従来の主張を辺野古容認に変えた前知事の判断に反発が強いのに、それをよりどころに「既定路線」で押し切っては一層こじれるのも道理だ。
 政府が本気で「辺野古移設しかない」と確信するなら、かつて辺野古移設を初めて打ち出した橋本龍太郎政権がそうだったように、今後は首相自身も足しげく沖縄を訪れ、地元住民に直接的に真意を語る努力を強く求めたい。
 鳩山発言の変節で、現地では「県民の被差別意識は、かつてないほど高まっている」と聞いたものだ。県民の意思とは無関係に方針転換した前知事への反発も、それを根拠に移設作業を強行する国への反発も、底流には沖縄の民意が軽んじられることへのやり切れなさがあるだろう。
 翁長氏が「嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」と言う時、対面する首相の向こうに本土住民の意思を見ているのは想像に難くない。政府との亀裂は本土との亀裂に等しい。
 民主党政権の2012年6月から12月まで防衛相を務めた森本敏氏は、退任前の会見で普天間移設について、辺野古案は軍事的、地政学的な理由ではなく政治的都合-との見解を述べた。「他に移設先があれば、沖縄でなくてもよい」との考え方だ。
 「なぜ沖縄なのか」という疑問は一人政府のみならず、戦後70年の節目に立つ本土住民に等しく跳ね返る。ここを説明できないままに計画を推し進めるのは、国と国民の信頼関係に関わって重大な禍根を残すだろう。政府は移設作業より説明責任を優先させるべきではないか。


新潟日報
首相・翁長会談 沖縄の痛み踏まえてこそ


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が17日、首相官邸で初めて会談した。
 宜野湾市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設と、沖縄県内に集中する米軍基地の負担軽減を話し合った。
 互いの主張の隔たりは大きく、議論はかみあわなかった。
 それは半ば予想されていた。大事なのはここを入り口として政府が沖縄の声に真剣に耳を傾け、問題の打開に向けて汗を流す気持ちを固めることだ。
 翁長氏は移設阻止を掲げて知事選に勝利し、昨年12月に知事に就任していた。
 県内の衆院選小選挙区や名護市長選の結果と合わせて考えれば、沖縄県の移設反対の民意は明確になったといえる。
 政府は、辺野古現地での反対運動を突いて移設に向けた海底作業を続けてきた。翁長氏と面会しようとせず、その硬直した姿勢が問題視された。
 4月5日にようやく菅義偉官房長官が那覇市で翁長氏に会った。
 話は平行線に終わったが、対話の継続は確認した。その場で翁長氏が要請した安倍首相との面会が今回実現したのだ。
 ただ会談の中身そのものは、政府と沖縄県の信頼関係を構築する道がはるかに遠い現実を実感させるものだった。
 首相は辺野古移設を「唯一の解決策」と言って譲らず、「普天間飛行場の一日も早い危険性の除去は、われわれも沖縄も思いは同じだ」と強調した。
 県外への移設を訴えている翁長氏は「選挙で圧倒的な民意が示された」と明確な反対姿勢をあらためて伝えた。
 沖縄の民意に向き合おうとしてこなかった政府への不信感をあらわにした。
 加えて、土地を奪われて基地にされ、移設が嫌なら代替案を出せなどと言われることの理不尽さを強く訴えた。
 問われているのは、一つの基地の移転の是非ではない。
 戦後の沖縄が有無を言わさず背負わせられてきたこの「理不尽」に目を向けて初めて、話し合いの糸口が得られよう。
 政府に求められるのは誠実に沖縄の痛みに思いを致す態度だ。選挙の敗北や辺野古移転の日米合意に固執し、大局を見失うようなことがあってはならない。
 安倍首相は訪米で日米同盟の強化を発信するのだという。辺野古移設問題の前進が、そのためには欠かせないはずだ。
 民主的な手続きと努力を米側に強調したい狙いもあろう。そうした政治的計算だけが際立てば、さらに反感を買う。
 翁長氏は首相訪米に向けて「県民は辺野古移設に明確に反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」と要請した。
 政府の思惑を承知の上で、この時期の官房長官、首相との面談に乗った知事と沖縄県民の思いをくむべきだろう。
 辺野古移設、スケジュールありきの議論から脱し、一度立ち止まって考える時だ。


信濃毎日新聞
首相と沖縄 痛みを理解しているか


 日米両政府が進める米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事が初めて会談した。
 首相は辺野古移設が「唯一の解決策」とし、知事は「知事選、衆院選で移設反対の圧倒的な民意が示された」と訴えた。菅義偉官房長官との会談同様、平行線となった。
 市街地にある普天間の危険除去を急ぐのは当然としても、辺野古移設が唯一の解決策なのか。日米両政府から納得いく説明は聞かれない。双方の政府に欠けるのは、戦後長きにわたって過重な基地負担を強いられてきた沖縄の歴史に対する理解である。
 移設ありきでなく、他の選択肢がないかも含め、柔軟な姿勢で議論をし直すべきだ。
 翁長氏が求めた直談判を首相側が突然受け入れたのは、丁寧に移設に取り組んでいることをアピールする狙いがありそうだ。今月下旬に首相の訪米が控えていることとも関係する。
 首相は会談で移設に関し、「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と述べた。
 対話姿勢を演出したものの、実態は違う。政府は反対する住民を力で排除し、環境への配慮は二の次で移設に向けた作業を進めている。国家権力をかざす政権の体質が表れている。
 沖縄の日米両政府への不信感は根深い。菅官房長官と会談した際、翁長氏は政府の姿勢を、米占領下の強権的な統治責任者になぞらえ「問答無用という姿勢が感じられる」と批判した。
 先の戦争では本土防衛の「捨て石」とされた。戦後は、「銃剣とブルドーザー」と例えられる米軍の強制的な土地収用によって基地が建設されていった。こうした歴史や体験は、平和教育などで今に引き継がれている。
 沖縄の人々にとって辺野古移設は、つらい過去と重なる部分があるのではないか。
 翁長氏は首相に、「自ら土地を奪っておきながら、(普天間が)老朽化したとか、世界一危険だからとか、(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは理不尽」と語った。日米両政府の無神経な姿勢を痛烈に批判している。
 安倍政権の対話姿勢がポーズだとしたら、不信感はさらに募るだろう。翁長氏は訪米して民意を伝える準備も進めている。
 基地問題に関しては、沖縄の痛みにどれだけ寄り添えるかが問われている。日米の首脳は肝に銘じてもらいたい。


福井新聞
首相、沖縄知事会談 「負担軽減」は基地撤去だ


 安倍晋三首相がようやく沖縄県の翁長雄志知事と会談した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、国と地元対立が深刻化。閣僚らからは信頼関係の構築に期待する声もあるが、会談で溝が深まった。今後、基地撤去を願う「オール沖縄」の叫びは一段と強まるだろう。
 会談で首相は辺野古移設が「唯一の解決策だ」と、政府の基本方針を強調。翁長氏は「受け入れたという認識は間違いだ。知事選、衆院選で移設反対の圧倒的な民意が示された」と反論し、沖縄防衛局が進める移設に向けた海底作業の中止を求めた。
 翁長氏が昨年12月に知事就任して以来、首相との会談を希望してきたが官邸は無視。この5日にようやく会談した菅義偉官房長官は移設を「粛々と進める」と従来通りの言葉を繰り返し、「上から目線だ」と知事の怒りを買った。
 そもそも、この時期に急きょ会談が決まったのは、26日からの訪米を前にした首相の「実績づくり」なのは明らかだ。「沖縄軽視」の批判をかわし、問題解決に努力している姿勢を米側にアピール。その上で移設遂行に変更はなく、日米同盟強化に揺るぎがないことを示すのが狙いだろう。
 翁長氏は官邸戦略に利用されたように見えるが、むしろ確固たる反対の意思を示す好機ととらえたのではないか。「県民の反対をオバマ大統領に伝えてほしい」と不退転の決意で強調したのは印象的だ。
 各種選挙結果が示すように、沖縄の民意は「基地反対」である。首相がいくら基地負担軽減と沖縄振興を強調しても理解されないのは当然だ。辺野古移設は「軽減」にならず、基地そのものが「ノー」である。
 先の大戦で日米決戦の場となり、一般住民だけでも10万人近く犠牲になった悲劇の島だ。戦後70年たった今でも国益の「捨て石」と住民は言う。翁長氏が菅会談で述べたように「沖縄県が自ら基地を提供したことはない。強制接収された」のが歴史の事実だ。
 国全体の0・6%にすぎない県土に米軍専用施設の約74%が集中。米兵による女性暴行や傷害事件が相次ぎ、普天間隣接地でヘリ墜落事故も起きた。土地は無条件で返還すべき―これが沖縄の「清算」であろう。
 翁長氏は「自ら土地を奪っておきながら老朽化したとか、世界一危険だからとか、(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」「私は絶対に辺野古に基地は造らせない」と言い切った。
 辺野古へ移設すれば基地が要塞化する懸念も強い。日米軍事専門家の間でも沖縄の地理的優位性に疑問を投げかけ、ミサイル攻撃の標的になる危険性を指摘する声さえある。果たして「この道しかない」という安倍政権のワンフレーズ・ポリティクスがどれだけ説得力を持つのか疑問だ。


京都新聞
安倍・翁長会談  「唯一の解決策」超えて


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう官邸で会談した。昨年12月に翁長氏が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設計画阻止を掲げて就任してから初めてだ。
 翁長氏は、これまで再三に渡って面会を求めてきたが実現しなかった。首相が一転して応じたのは、26日からの訪米を前に、沖縄と対話する姿勢をアピールし、摩擦の激化を緩和したい思惑からだ。
 結果は、今月5日の菅義偉官房長官と翁長氏の会談に続き平行線に終わったが、対話の継続では一致した。直接対話を事態打開につなげられるかどうかは、政府側が沖縄の声をどうくみとるかにかかっている。首相には、形だけの対話に終わらせない真摯(しんし)な努力を求めたい。
 会談では、辺野古移設について首相が「唯一の解決策だ」と述べたのに対し、翁長氏は「(過去の沖縄が辺野古移設を)受け入れたという認識は間違いだ。知事選、衆院選で反対の圧倒的な民意が示された」とあくまで反対する考えを主張した。
 首相はまた「普天間飛行場の一日も早い除去は、われわれも、沖縄も思いは同じだ」と強調。その上で理解を得るべく努力を続けたいとしたが、翁長氏は「普天間飛行場も、それ以外の基地も、銃剣とブルドーザーで強制接収された。土地を奪っておきながら、(移設が)嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と強く反発した。さらに米国に直接、移設断念を働きかける意向も示した。
 戦争末期、地上戦で県民の4人の1人が犠牲になった沖縄は、終戦から1972年の本土復帰まで27年間、米軍に占領された。この間、多くの土地が強制収用され、今も国内の米軍専用施設の約74%を背負い続ける。その苦難の歴史と県民感情に正面から向き合わない限り、答えを出すのは難しい。
 首相がなすべきことは、辺野古移設の日米合意を優先するばかりではなく、沖縄の思いを米側にきちんと伝えた上で解決の道を探ることだ。その意味で今度の訪米はいい機会だ。
 政府は沖縄との溝を埋める努力がいる。そのためには、沖縄防衛局が進める移設への作業をいったん止め、冷静に対話ができる環境をつくる必要がある。地元の理解と信頼関係なくして、安定した安全保障は望めない。民意に耳を傾け、「唯一の解決策」を超える道を探らねばならない。


神戸新聞
沖縄と基地問題/米国との関係が最優先か


 安倍晋三首相はきのう、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事と会談した。
 昨年12月に翁長氏が知事に就任して以来、国と県のトップによる初の直接対話となったが、約35分の話し合いはすれ違いに終わった。
 無理もない。翁長氏は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に真っ向から反対する。それが衆院選や知事選などで何度も示された沖縄の民意だからだ。
 これに対して首相は、辺野古移設を普天間飛行場の危険性を除去する「唯一の解決策」とする。会談でもそうした政府の考えを伝え、計画通り進める方針を強調した。
 首相は「危険性除去への思いは同じ」とも述べたが、翁長氏は「絶対に基地は造らせない」と譲らない。これでは完全な平行線である。
 沖縄には米軍専用施設の74%が集中する。県内での「たらい回し」は理不尽だと沖縄の人たちは憤る。その思いを政府が受け止めない限り、打開の道は開けない。
 翁長氏の言うように、まず工事を止めて対話を重ねるべきだ。
 翁長氏は先日、菅義偉官房長官と会談し、「移設反対」を明言した。その際に首相との会談の早期実現を併せて申し入れていた。
 首相は26日から米国を訪問する。その前に会談に応じたのは、問題解決に努力する姿勢を米国に示す狙いがあったとされる。
 一方で、首相は辺野古移設について、先日来日したカーター米国防長官に「確固たる決意の下で進める」と語っている。沖縄との対話が形だけのものなら、「アリバイづくり」と批判されても仕方がない。
 国民の声にじっくり耳を傾ける。何より地元の民意を大切にする。それが政府の取るべき対応だ。米国との関係を最優先するような姿勢には誰もが首をかしげるだろう。
 安全保障法制の与党協議についても同じことが言える。集団的自衛権の行使を可能とする「存立危機事態」など、耳慣れない言葉ばかりが次々に飛び交い、とても議論が熟しているようには思えない。
 27日に日米防衛協力指針(ガイドライン)の改定で米国と合意するため検討を急いでいるというが、国民への説明や国会審議は後回しだ。
 国民を守るための議論で、肝心の国民が置き去りにされる。一体、誰のための「安保」なのか。


山陰中央新報
首相・沖縄知事会談/事態打開のきっかけに


 安倍晋三首相が沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事と官邸で会談、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古移設について意見を交わした。両氏の会談は、昨年12月に翁長氏が移設阻止を掲げて就任して以来、初めて。翁長氏の求めに首相が応じていなかったためだ。話し合いは平行線だったようだが、会談が実現したのは一定の評価ができる。
 翁長氏と政府側は、辺野古移設に向けた海底作業をめぐり対立が激化していた。会談を26日からの首相の米国訪問に合わせた「沖縄県と話し合いをしている」というアリバイづくりに終わらせず、事態打開のきっかけにすべきだ。
 会談の中核的な部分は、首相が普天間飛行場の辺野古移設を「唯一の解決策だ」という認識をあらためて示したのに対して、翁長氏が「辺野古移設が唯一の解決策という固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と要請したやりとりだろう。
 宜野湾市の市街地にある普天間飛行場の危険性を除去するには「辺野古移設が唯一の解決策」というのは、日米両政府の原則的な考えだ。首相に先立って沖縄県を訪問して翁長氏と会談した菅義偉官房長官も、同じ表現で翁長氏に伝えている。
 この考えを日米両政府の「固定観念」と位置付け、「県外移設」など他の方策の検討と移設作業の中止を求める翁長氏に対して首相が伝えた結論は「ゼロ回答」だったようだ。
 「普天間飛行場の一日も早い危険性の除去はわれわれも、沖縄も思いは同じだ」「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」などと述べているが、要は「辺野古移設を容認してほしい」ということだからだ。
 日米両政府が普天間飛行場返還で合意したのは今から約20年も前の1996年4月だった。前年起きた米兵による少女暴行事件をきっかけに高まった県民の反発が、日米両政府の背中を後押しした。
 その後、日本政府は99年12月に名護市辺野古への移設を閣議決定、曲折を経て、安倍政権による名護市辺野古沿岸部の埋め立て申請を2013年末に仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が承認。昨年8月に海底ボーリング調査を開始したが、11月、県知事選で翁長氏が当選。直後の衆院選では、県内4小選挙区で辺野古反対派候補が全勝した。
 また昨年1月には、移転先の名護市の市長選で辺野古移設反対の稲嶺進氏が再選してもいる。会談で翁長氏が、「過去の沖縄が辺野古移設を受け入れた」とする政府側の一部主張を「間違いだ。知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された」と指摘したのは、こうした経緯を踏まえたものだ。
 しかし、首相がこの時期に翁長氏との会談に応じたのは「辺野古移設反対の圧倒的な民意」を受け止めたからではなさそうだ。訪米を控え、翁長氏側との対立激化を避けたい意向があったとみられる。
 「県民は明確に反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」という翁長氏の要請は、首相に単なるメッセンジャー役を期待してのものではないはずだ。まず首相が沖縄側に立って「固定観念」を捨て、米国と向き合ってほしいという願いが込められている。


愛媛新聞
首相と翁長知事会談 民意くみ真摯な対話を続けよ


 安倍晋三首相と、沖縄県の翁長雄志知事との初の会談が急きょ実現した。
 平行線に終わったが、ようやくの初めの一歩である。形式的に「会って終わり」では意味がない。今後も民意を丁寧にくみ、一方的でない真摯(しんし)な対話を続けていくことを、政府に強く望む。
 米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐっては、何が何でも進めたい国と、昨年の全ての選挙で反対派が当選し、移設に明確な「ノー」を突きつけた沖縄県の民意との隔たりがあまりに大きい。溝は簡単には埋まるはずもないが、それでもまずは直接膝を交えて「沖縄の声」に耳を傾け、基地負担軽減の道を探る努力を重ねることが国の責務であり民主主義の要諦であろう。
 にもかかわらず首相は、昨年12月の知事就任以降、真っ先に対話すべき翁長氏との面会をかたくなに拒否。今月の菅義偉官房長官との会談を受け、やっと対面した。異様な態度というほかはなく、隠そうともしない強硬姿勢に強い失望と憤りを覚える。
 その会談も、単に「首相の都合」であろうことは想像に難くない。急な実現は、今月26日からの米国訪問を控え、地元説得に努力する姿勢をアピールしたい思惑によることは明らか。しかし米側も、辺野古移設については「沖縄に日本政府が説明を尽くすなど民主的な手順を望んでいる」(日米外交筋)とされる。まず自国民に誠実に向き合おうとせず、対米追従を強めるだけでは、日本だけでなく米国の信頼さえも失いかねない。
 首相は会談で「丁寧に説明し、理解を得る努力を続けたい」としながらも、辺野古移設が「唯一の解決策だ」との従来の主張を繰り返した。菅氏が早くも「頻繁な会談は困難」との認識を示しており、会談の継続自体も危うい上、「辺野古ありき」で民意を一顧だにしないのでは、到底対話の名には値しない。
 普天間飛行場の危険性除去はむろん、急がねばならないが、辺野古では沖縄の負担は全く減らない。県内移設が唯一の代替策で、拒否すれば普天間は「固定される」と脅すような政治手法に「ノー」が叫ばれている現実を、もっと重く受け止めるべきだろう。
 「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか(移設が)嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」―。翁長氏の訴えは、痛切にして正鵠(せいこく)を射る。
 終戦後27年も米軍に占領され、強制的な土地収用で国内の米軍専用施設の約74%が集中する沖縄の苦難の歴史を、いま一度省みたい。将来も、過大な基地負担を沖縄だけに背負わせ続けることのないよう、熟慮の政治を求めたい。


高知新聞
【安倍・翁長会談】 硬直思考では平行線だ


 安倍晋三首相と沖縄県の翁長雄志知事がきのう、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設問題をめぐって初めて会談した。
 昨年12月に翁長知事が就任して以来、5日に菅官房長官と初会談したのに続き、やっとのことで首相との対話が実現した。この間、政府の翁長氏に対する態度は冷淡だった。
 辺野古移設を進める政府と、それを阻止しようとする沖縄県のトップの対話は大切なことだ。ただ会談は予想通り平行線に終わった。
 会談で翁長氏は「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか(移設が)嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と語った。
 「銃剣とブルドーザー」と例えられる沖縄の過酷な歴史を踏まえた、重い発言である。翁長氏はさらに今月下旬の首相の訪米をにらみ、「県民は明確に(移設に)反対している。オバマ大統領に伝えてほしい」と迫った。
 しかし首相は、辺野古移設が普天間飛行場の危険を除去する「唯一の解決策」だと、判で押したようないつもの言葉を返した。これでは「丁寧に説明し、理解を得たい」と言っても、結論ありきで二の句が継げまい。
 昨年の沖縄県知事選、名護市長選、衆院選小選挙区では、いずれも反対派が勝利した。翁長氏は圧倒的な沖縄の民意に支えられている。「唯一の解決策」という硬直した思考で、切り捨てられるものではあるまい。
 最近の本紙に、かつて米国防次官補代理として沖縄返還交渉に携わったモートン・ハルペリン氏の評論が掲載された。氏は辺野古移設に関し「日本政府が民意を黙殺している」とし、民意を無視して造った基地に「安定的な将来はない」と警告する。
 氏はまた「唯一の解決策」にも疑問を投げ掛ける。海兵隊基地を置く場所として沖縄以外の東アジア地域や米国内の基地など、他の選択肢も考慮し、日米が真剣に検証すべきだという。
 ハルペリン氏ばかりでない。有力な現役上院議員らから辺野古移設は「非現実的」と異論が出たり、沖縄への基地集中を危機管理の面から問題視したりする意見もある。
 米国は民主主義のプロセスを誇りとする国だ。首相は日米首脳会談でありのままの沖縄の現実を、オバマ大統領に伝えることが必要だろう。


熊本日日新聞
首相・翁長氏会談 旧来の発想抜け出す時だ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設をめぐり、安倍晋三首相は17日、沖縄県の翁長雄志知事と官邸で初めて会談した。
 首相は翁長氏に、普天間の危険性除去の観点などから辺野古移設が「唯一の解決策」と強調。普天間の5年以内の運用停止という仲井真弘多[なかいまひろかず]前知事との合意も「生きている」とした。これに対して翁長氏は「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された。絶対に辺野古に基地は造らせない」と述べ、移設作業の中止を求めた。26日からの首相訪米の際、オバマ大統領に沖縄の民意を伝えてほしい、とも要請した。
 首相は会談で「丁寧に説明し、理解を得るべく努力を続けたい」と述べた。菅義偉官房長官も「沖縄県との話し合いを進めていく」としている。話し合いを継続することは重要だ。ただ、そのためには政府が再開した海底ボーリング調査の中止が前提となろう。
 沖縄防衛局は立ち入り禁止区域を示すブイなどの重りとして最大45トンの大型コンクリート製ブロックを設置。翁長氏は、ブロック投入で岩礁破砕の許可区域外のサンゴ礁を損傷した可能性が高いとして、作業停止を指示した。一方、防衛局の不服申し立てを受けた林芳正農相は、知事が出した指示の効力の一時停止を決定。防衛局は6月末まで調査を続け、夏にも埋め立てに着手する方針だ。
 だが、有識者でつくる防衛局の「環境監視等委員会」では、ブロック設置に対して「社会的影響が大きかった」などの批判や疑問が続出した。ブロックによる損傷が確認されたサンゴ94群体のうち9割超が、県の許可区域外にあったことも分かった。県が米側に潜水調査の許可要請を強める可能性もある。県が設置した有識者委員会による前知事の埋め立て承認の検証も続いている。あくまで政府が調査を続行するというなら、冷静な話し合いは期待できまい。
 なにより、辺野古移設に反対する民意の根底に、沖縄の苦難の歴史があることを忘れてはならない。日米安全保障条約の下、日本が平和を享受し、高度経済成長を遂げた陰で、沖縄は過重な基地負担に苦しみ続けてきた。
 安倍首相は、日米の同盟関係強化を名目に集団的自衛権の行使を容認した。米国の日本防衛義務のみを規定した安保条約は片務的であるとして、「対等なパートナーシップ」を目指す。だが、それを言うなら、沖縄との関係こそ「片務的」ではないか。沖縄に基地を押し付けることで、日本の安全を図ろうという考えがあるとするなら、そんな旧来の発想から抜け出す時ではないか。
 第2次大戦の戦勝国が占領時と同じように大規模な駐留を続けているのは日本だけだ。抑止力の必要性を否定はしない。だが、そのためにはどの程度の規模の駐留が適当なのか、他の道はないのかを米側とあらためて協議してこそ、首相が言う「戦後以来の大改革」にふさわしいのではないか。


南日本新聞
[辺野古会談] 国は誠実に対話続けよ


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、安倍晋三首相と翁長雄志知事がきのう、初めて会談した。
 建設阻止をあらためて訴えた知事と、移設に理解を求めた首相の意見交換は平行線のままで終わった。予想された通りの展開といえる。
 移設建設を強引に進める政府に対して、沖縄県民は反発を強めている。政府は沖縄との対立の溝を埋める努力を惜しんではならない。今後も誠実に対話を重ねるべきだ。
 翁長氏は会談で、「知事選、衆院選で辺野古移設反対の圧倒的な民意が示された」と強調し、県外移設を求めた。首相は普天間飛行場の危険性を取り除く「唯一の解決策」というこれまでの政府方針を伝えた。在日米軍基地の負担軽減にも言及した。
 今回の会談は5日に行われた菅義偉官房長官と翁長氏の対話を受け、翁長氏の要請に応える形で実現した。首相と知事の主張に隔たりがあったとはいえ、直接対話した意味は大きい。
 ただ、首相らが沖縄県民の民意に真摯(しんし)に向き合おうしたかといえば、疑問符が付く。移設に向けた対話の実績づくりの意図が透けるからだ。
 翁長氏が知事就任以来4カ月間にわたり求めてきた協議を、政府は拒んできた。会談には「沖縄軽視」という批判をかわす思惑があったのは間違いなかろう。
 さらに問題なのは、地元より対米関係を優先させる姿勢がうかがえることだ。
 首相は今月来日したカーター米国防長官に「(辺野古移設を)確固たる決意の下に進めていく」と表明した。官房長官が沖縄との対話を継続すると表明してからわずか3日後である。
 沖縄県民に対して著しく配慮を欠いた発言である。沖縄の民意を軽んじているとしか思えない。
 首相は26日から訪米する。オバマ大統領と会談し、日米同盟の強化を世界に発信する方針である。今回の会談を辺野古問題解決へ努力する姿勢のアピールに利用しようとしているのなら、沖縄の怒りはますます増幅するに違いない。
 「上から目線」と翁長氏が政府を批判して以降、長年基地負担に苦しんできた県民にさらに共感が広がっているという。安倍首相が今向き合うべき相手は米政府ではない。
 辺野古埋め立てに向けた作業を続けたままで、沖縄側と冷静な対話はできない。政府は直ちに工事を止め、信頼醸成に努めるべきだ。


琉球新報
知事首相会談 「圧倒的な民意」は明白 辺野古断念こそ現実的だ


 知事の言葉一つ一つに県民の思いが込もっていた。歴史的な会談と評価していい。
 翁長雄志知事が安倍晋三首相と会談した。何より最後の一言が大きい。知事は、米軍普天間飛行場の辺野古移設について「知事をはじめ沖縄県民が明確に反対していることをオバマ大統領に伝えてほしい」とくぎを刺したのだ。
 この会談を首相は「移設へ向けた進展」と米国へ説明する材料に使うと目されていた。知事はそれを警戒したのだろう。この発言でそんな偽装は不可能になった。
 首相は会談を新基地建設の免罪符に使ってはならない。知事の言う通り移設作業を中止すべきだ。
「固定観念」
 首相はこの日も「辺野古(移設)が唯一の解決策」と繰り返した。知事選、市長選、衆院選で反対派が全勝した昨年の選挙は、まさに知事が述べた通り「圧倒的な民意」である。その県民の度重なる意思表示を経てもなお、「辺野古が唯一」と繰り返すのは、知事の評した通り「かたくな」だ。民主国家にあるまじき姿勢である。
 知事は「(辺野古が唯一という)固定観念に縛られず、移設作業を中止してほしい」と求めた。民意に照らし当然の要求だろう。
 現防衛相の中谷元氏は昨年、「沖縄の基地を分散しようと思えば九州へも分散できるが、反対が大きくてできない」と述べていた。他県は反対があるから移設しないが、沖縄はいくら反対しても移設を強行するというわけである。これがダブルスタンダードでなくて何であろうか。
 元防衛相の森本敏氏も同じ趣旨のことを在任中に述べている。最近も「海兵隊が沖縄にいなければ抑止にならないというのは軍事的には間違いだ」と明言した。県外移設でも何ら支障がないことを担当大臣の発言は証明している。首相らの言う「辺野古が唯一」論はとうに破綻しているのである。
 菅義偉官房長官が繰り返す「16年前に沖縄も同意した」という主張のウソを知事が指摘したのも痛快だった。
 1999年に閣議決定した計画は、政府が2006年に破棄し現計画に変更した。政府自ら破棄しておいて「16年前に同意」とは詐称に等しい。
 しかも16年前は、軍民共用でかつ15年後には基地として使用してはならないというのが絶対条件だった。使用期限が受け入れられなければ容認は撤回すると当時の市長も明言していた。
 だが現計画になり、軍民共用も使用期限も雲散霧消した。これで「地元も受け入れていた」と称するのは虚言以外の何物でもない。
倒錯の論理
 16年前の計画も、使用期限は米側が同意する見込みがなかったから、いずれ計画が破綻するのは明らかだった。政府が閣議決定を破棄したのはそんな行き詰まりも背景にある。沖縄側が容認を撤回するのは時間の問題だったのだ。
 会談で首相は現計画が普天間の危険性除去になると強調した。
 だが辺野古移設では、県民の頭上を危険な物体が飛び、爆音をまき散らし、軍による犯罪が日常的に発生する事態は何ら変わらない。これが「危険性の除去」にならないのは、子どもでも分かる。
 普天間移設は沖縄の基地負担軽減がそもそもの出発点だったはずだ。基地を沖縄から沖縄へ移すのが解決策と主張するのは、どう見ても倒錯した論理である。
 政府は沖縄の反対が極論であるかのように言うが、普天間飛行場をなくしたところで、国内の米軍専用基地の沖縄への集中度は73・8%から73・4%へ、わずか0・4ポイント下がるにすぎない。これが過大な要求だろうか。
 世論調査では県民の6割から8割は常に県外・国外移転を求める。辺野古でいいとするのはせいぜい十数%だ。20年間もそうなのだから、今後も賛成が上回るなどあり得ない。辺野古新基地を断念することこそ現実的である。政府はその現実を直視すべきだ。


沖縄タイムス
[翁長・安倍会談]「辺野古」新たな段階へ


 翁長雄志知事と安倍晋三首相は17日、首相官邸で会談した。日米首脳会談を今月末に控え初めて実現した両者の会談である。翁長氏は、名護市辺野古の新基地建設に反対する沖縄の声をオバマ大統領に伝えるよう首相に要請した。首相はこれに応え、沖縄の民意をオバマ氏に正確に伝えなければならない。
 知事就任以来4カ月余り。ようやく訪れた安倍首相との直接対話の機会だった。翁長氏は、「絶対に辺野古に新基地は造らせない」と明言。1国の首相に対し、これほど毅然(きぜん)と「基地ノー」の意思を主張した知事はいただろうか。沖縄にとってきわめて意義深い、画期的な会談となった。
 翁長氏は、政府が前知事の埋め立て承認を唯一のよりどころとして移設作業を強行していることに「県外移設の公約をかなぐり捨てた承認」だと正当性に疑問を呈した。
 また「辺野古基地ができない場合本当に普天間は固定化されるのか」。5年以内の運用停止は「埋め立て承認というハードルを越えるための空手形ではないか」と政府を追及した。
 沖縄の米軍基地について「戦後、銃剣とブルドーザーで強制接収された」と、歴史的経緯や不平等性を訴え、「土地を奪っておきながら、老朽化したとか、世界一危険だからとか、嫌なら代替案を出せというのは、こんな理不尽なことはない」と強く反発した。戦後一貫して日米安保の過重な負担を押し付けられたウチナーンチュの思いを、明快な言葉で表現した。
 安倍首相が「辺野古への移転が唯一の解決策である」と従来の考えを繰り返したことについても翁長氏は異論を展開。「安倍首相は、固定観念に縛られず、まずは辺野古への移設作業を中止することを決断してほしい」と求めた。
 強力な政治のリーダーシップがあれば政策の変更は可能である。選択肢のない政策などあり得ない。これこそ翁長氏が5日の菅義偉官房長官との会談でも指摘した「政治の堕落」である。
 政府が、1999年に当時の稲嶺恵一知事と岸本建男名護市長の受け入れ表明を受け、閣議決定がなされたと移設の正当性を主張していることについても翁長氏は反論した。
 稲嶺知事は代替施設の軍民共用や15年使用期限、岸本市長も基地使用協定締結などを前提条件としていたが、その後、政府は県との協議もないまま閣議決定をほごにした。翁長氏は「前提条件がないことになり、受け入れたというのは間違いだ」と、政府の都合のいい解釈を断じた。
 政府は、日米首脳会談で確実に沖縄の声を米側に伝えるべきだ。もし伝えずに両政府が首脳会談で辺野古推進を確認するようなことがあれば、「沖縄切り捨て」と見ざるを得ない。沖縄の声を無視して移設を強行することがあれば逆に日米関係にさまざまなマイナスが生じるだろう。
 翁長氏は菅氏や首相との会談で沖縄の声を代弁し、求心力をこれまで以上に高めている。辺野古移設問題は新たな段階に入ったといえる。




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蛇足ながら個人的に印象に残った記述を。

河北新報
『会おうと思えば会える首相と知事の会談が大々的に報じられること自体、異常なことと言わざるを得ない。』


ああー、そうだよね。。ついうっかりしてしまう。知事と首相が会って話すのなんて何も特別なことではないのに、というか大きな問題を抱えているのだからすぐにでも会うべきなのに、4ヶ月も拒絶した末に、民意を気にして渋々会ったら「第一歩」だとか賞賛されたりすんのはおかしいでしょう。ジャイアンが今日はのび太をいじめなかったんだよスゲーみたいな。


岩手日報
『翁長氏が「嫌なら代替案を出せと言うのは、こんな理不尽なことはない」と言う時、対面する首相の向こうに本土住民の意思を見ているのは想像に難くない。政府との亀裂は本土との亀裂に等しい。』


「沖縄」と「政府」の2者間の問題のように捉える向きはまだまだ多い中で、「本土住民」である「我々」もこの問題の主人公ですよと、当事者として向き合う姿勢を示していて、真っ当だと思う。多くの社説は知ってか知らずかここら辺をぼかしててやや残念。でも少しずつ意識は変わってきてるしまだまだこれから。
逆に読売の『首相VS沖縄知事』のような扇情的な見出しからは、なんとか「沖縄の問題」として矮小化したい意図を感じて脱力。器が小さいね。


福井新聞
『国全体の0・6%にすぎない県土に米軍専用施設の約74%が集中。米兵による女性暴行や傷害事件が相次ぎ、普天間隣接地でヘリ墜落事故も起きた。土地は無条件で返還すべき―これが沖縄の「清算」であろう。』


おお、なんか回りくどい言い回しだけど、普天間は無条件撤去ときたもんだ。すごいぞ。
「いったん作業停止すべき」くらいまではどの新聞も言ってることで、「移設計画自体の見直し」も少し踏み込んだ新聞は言ってるものの、じゃあ普天間飛行場どうするのという具体策まではなかなか提示しないもの。
あと最近見たのでは、翁長、菅会談のときに愛媛新聞が「グアム」を主張してたくらいかな。この辺ももっとオープンにあーだこーだ言い合ったらいいね。
追記:よく読んだら北海道新聞も『辺野古移設とは別の方策を米国とともに模索するのが首相の責務である。県外、国外への移設を目指すのがあるべき道だ。』と県外、国外移設という見解。きたきた。


産経新聞
『首相をはじめ政府与党は、今後もさまざまな機会を通じ、翁長氏や沖縄関係者に、辺野古移設がなぜ唯一の解決策かを説くべきだ。』


これはちょっと意外。
辺野古への移設計画自体に合理的な理由がないことは既にあらゆる方面から看破されていて、政府がいう「丁寧な説明」など実際は不可能。「唯一の解決策」「前知事が埋め立て承認した」をオウムのごとく繰り返し工事作業をゴリ押し、沖縄なんか踏み潰せというのが政府の方針なわけで。
政府寄りの産経が政府方針から逸れて「丁寧な説明」をプッシュするのは相当業を煮やしているんだろうけど、こちらとしては大歓迎。どんどん言ってやってください。
それと、逃げずに堂々と自らの正当性を主張しようという姿勢はすばらしい。産経にも逃げ腰の政府は情けなく映るんだろう。




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Posted by おちゃをのむ会 at 13:21│Comments(0)辺野古
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